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短編小説

そのほほえみの意味を教えて

作者: Nagare〆

「何、聞いてるの?」

「洋楽。」

「へえ、珍しいね。英会話なんてできてた?」

「えっ?何で英会話?」

「意味もわからないで聞いてるの?

お前ってそんなに軽い女だったんだ。がっかりだよ。」

「……ごめんなさい。怒らないで、もう聞かないから。」


いつもの事。いつもの事。

ここで、私が我慢さえしていたら家庭は安泰なんだから。


でも、これでいくつ好きなものを諦めただろう。

あと、私が好きなものってなんだったかな?


……いや、夫の好きなものを好きになればいいだけの話。

私が、頑張れば家庭は上手くいく。


やっとできた私の家庭。

何が有っても守ってみせる。

早くに両親を亡くした私に、夫は、居場所をつくってくれた。

感謝しなきゃ、感謝、感謝。


夫の機嫌を損ねないように、

夫が笑ってくれるように、

気をつけて、気をつけて。


夫は、本当に優しい人。

服が欲しいと言えば買ってきてくれるし

(私の好みじゃないけど、

せっかくの好意なんだからそんな事、思っちゃダメだね。)

旅行へ行きたいって言えば、連れて行ってくれる。

(私が行きたい場所へは、一度も行った事ないけど。)



全て夫の望み通り、

夫の機嫌さえ損なわないように気をつけていれば

私は、居場所を与えてもらえる。



「何?この料理。俺がピーマンが嫌いなの知ってて作ったの?」

「あっ、違うの。今日、お隣さんから頂いて……」


言い訳する前に、夫の大きな手が私の頬を強く打つ。


「……ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」


失敗してしまった。

怒らせるつもりなんてなかったのに。


「お前を見てるとイライラするんだよ。

出ていけ!ムカつく!離婚だ!」


ねぇ、何を言ってるの?

いつもみたいに、気が済むまで殴ってよ。


もう、間違えないようにするから、

私を一人にしないで。




しばらくして、玄関のチャイムが鳴って、

何度か夫と腕を組んで歩いていたところを見たことのある女が、

笑いながら入ってきた。


「いやだぁ。まだ、いるの?」

「悪い。すぐに追い出すから。

ホント、お前、目障りだから早く消えろよ。」


夫は、怒鳴りながら私に出刃包丁を投げてきた。




ワタシは…………。




ごめんなさい。ごめんなさい。


ここは、ワタシの家だから……。


ここに、あの女が住むなんて……。


ごめんなさい。ごめんなさい。




気がついたら、

夫が投げつけた出刃包丁が、綺麗な赤に染まっていた。

何故か夫は、うずくまって動けなくなっている。

女は、悲鳴をあげて逃げたした。


ワタシは、完全に夫を手放さないで済むように、

何度も何度も夫を刺し続けていた。





「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」



でも、あなたは、何も答えてくれない

でも、何故か静かに笑ってる。





どうして?

私の何がだめだったの?

考えれば考えるほどに小さな子供のように

大声で泣き叫びたくなる。



どうして答えてくれないの?

どうして微笑むだけなの?



ねぇ、私をちゃんと見て

ねぇ、ごまかさないでちゃんと答えて



その微笑みは全てうそだったの?




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― 新着の感想 ―
[良い点] このぐらいの作品だったら描写が少なくても違和感はないですね。 [一言] 壊れた日常がテーマだったらもう少し壊れる前の感覚を大事にしてみたいかな。反対に壊れた愛情がテーマだったらこんな感じで…
[良い点]  傷を抱えながら生きていたからこそ、無理しようとしているように映りました。 [一言]  他人のやってほしいことをする、こういう人間に出会ったことはいまだかつてありません。最悪のシチュエーシ…
2016/07/19 11:05 退会済み
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