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決着/雷鳴の中で

 生き残った参加者が辺りにひしめく。

 残されたか細い勝利の糸を掴み取るべく進む。


 そんな状態にあっても、彼らは独特の圧力を放ち人を寄せ付けずにいた。

 すなわち、マイトとウルザたちの間だ。

 一触即発、触れれば爆発しそうだった。


 マイトが剣を構え、ウルザが炎を迸らせる。

 それぞれが手に持った武器を構える。


 雷鳴が轟いた。

 その瞬間、マイトは跳んだ。

 ウルザが放った火炎放射を飛び越え、空中から襲い掛かる。

 迎撃の魔法矢をモリアが放とうとするが、それはミンクが防いだ。


「やることはこの前と変わらねえ。

 マイトは好きにさせろ、ウルザには近付くな!」


 俺は走り、レインズの足元目掛けて魔法矢を放った。

 彼はそれを飛び越えようとするが、直前で止まった。

 勘のいい奴、確かにそれはアースドライブだ。

 込めた魔法力的には、転倒誘発(スネア)って感じだけどな。

 小さく固い土のこぶが生み出された。


 続けて魔法矢を生成し放ち、盾防御を誘発。

 横合いから剣を薙ぐが、それはレインズの持つ剣で受け止められる。

 俺の後ろからフェリックが飛び出し、横合いからレインズを狙った。

 そこに魔法矢の弾幕を潜り抜けて踏み込んだシャナリアが襲い掛かる。


「お姉ちゃんとレイちゃんをやらせは――」


 そう言ったシャナリアが一回転し、宙を舞った。

 割り込んだロウが彼女を投げ飛ばしたのだ。

 クルクルと回転しながらもギリギリのところでシャナリアは着地する。


「そこから先には一歩も進ません。お前の相手は私だ」

「お姉ちゃん……! さっきはありがと、でも手加減しない!」


 シャナリアはネコめいて跳びかかり、爪を振るうように拳を繰り出す。

 ロウはそれを受け止め、捌く。

 シャナリアの打撃は一発として有効打にはならなかった。

 手加減しているのはロウの方だろう。あいつは任せておけばいい。


「レインズは俺が相手をする、お前らはあの金髪を――」

「クレインさん、避けてください!」


 熱量を感じ、俺は飛びずさった。

 直後、炎が大地を舐めた。加減しろ、バカが!

 攻撃の余波を受けて平原が燃える。

 雨がすぐ降らなければ、一帯が焼け野原になる。


 ゴロゴロと回転し、立ち上がろうとしたところに爪先が見えた。

 レインズの放った蹴りだと分かった時には、鼻先を蹴り上げられていた。


 鼻がへし折れた。

 えびぞりになって倒れながらも、俺は魔法矢を出鱈目に放った。

 追撃を行おうとしていたレインズだが、それに阻まれ踏み込めない。

 その隙に何とか立ち上がり、鼻を拭う。


「参ったな、俺の顔が台無しになっちまったじゃないか……!」

「どうということはない。お前はここで倒す……」


 レインズは盾を構え身を守りながら突進、突きを繰り出してくる。

 迎撃のために放った魔法矢もまったく役に立たない。

 ギリギリのところで受け止め、バックステップを打つ。


 あの腕力から考えて、魔力はそれほど多くない。

 だがそれを鍛錬で補っている。

 一々こっちの攻撃に対応して来ているのがその証拠だ。

 反射神経もいい。


 すぅ、吐息を吐き、両手で剣を握った。

 レインズは一瞬警戒するが、すぐに気を取り直す。


 踏み込み、剣撃を放つ。

 なぎ払いの一撃を剣で防がれ、反転して放った一撃も盾で受け止められる。

 レインズが放った切り上げを下段で払い、一歩後退。

 こちらも切り上げるが、しかし身を逸らすことであっさり避けられた。


 レインズの腕の筋肉が膨らんだのが見えた。

 あれは受け止めきれない。

 風を巻き取るほどの速度で放たれた袈裟切りを、大きく後退して避けた。

 勝機を見たレインズはそれで動きを止めず、突進を仕掛けて来る。


 タイミングは、ここだけだ!


 剣を振りかぶり、跳びかかった。

 レインズはそれを真正面から打ち破ろうとする。

 俺は足下にシールドを発生させ、再跳躍。

 レインズの放った一撃は空を切り、逆に俺は最大の攻撃チャンスを得た。

 レインズの後頭部に向かって、鉄刀を振り下ろした。


 だが、レインズは前転を打ち俺の一撃を避けた。

 すぐさま俺も空中で一回転し着地、振り返り再度の攻撃を行おうとした。

 だが、レインズの切り返しが一瞬は早い。突き込まれた剣が胴を突いた。

 刃引きされているとはいえ、凄まじい威力。俺は吹き飛ばされた。


「アナンを倒した程度の技なら、私には通用しないよ」

「ああ、そうだよな。あんた、見るからに強そうだもんなぁ……!」


 剣と盾を自在に使いこなす、まさにお手本のような剣士。

 専門的な訓練を受けていない俺が、剣のぶつかり合いで勝てるわけがない。

 それでも、負けられない。


 ミンクとフェリックは二人掛かりでも、なおモリアに苦戦していた。

 ミンクは実戦経験が少ないし、フェリックもそうだ。

 人を苛めるのが大好きなモリアとは相性が悪いだろう。

 ロウもロウでシャナリアを倒す気はなさそうだった。俺が動かなければ。


 俺は全身全霊の力を込めて踏み出し、レインズに切りかかった。

 レインズは迎撃しようと踏み出した。

 いや、踏み出そうとしだ。だが出来なかった。


「これは……スネア……!」


 上空からあらかじめ撃っておいたものだ。

 足を止められたレインズの剣を弾き、全体重を掛けてタックルを仕掛けた。

 俺とレインズのウェイトは同じくらい、ならこっちが勝てる!

 レインズを地面に押し倒し、両腕を足で押さえ、そして!


「悪いな、手数の多さじゃ負ける気がしねえんだよ……!」


 全力のマジックアローを、レインズの顔面に叩き込んだ。

 シールドの展開も間に合わなかったようだ。

 一瞬にしてレインズの意識を刈り取り、ギリギリで勝利を掴む。


 喉の奥までせり上がって来たものを押し止め、立ち上がる。

 出来ることなら星を奪っておきたいところだが、そんな暇はないだろう。

 どこも一進一退の攻防を続けている、手を貸してやらなければ。

 そう思って立ち上がり、戦場を俯瞰した。


 マイトとウルザは、意外にも一進一退の攻防を繰り広げていた。

 マイトにはバカ力と凄まじいスピード、そして反応速度がある。

 ウルザはパワーでは劣っているだろうが、技量は圧倒的に勝る。

 更に、俺を上回る魔法の使い手だ。

 マイトの剣を武器とシールドで受け止め、距離を取り魔法攻撃を行う。

 規格外の強さだ。


 ミンクとフェリック、そしてモリアの戦いはモリア優勢に傾いていた。

 やはり実戦経験の多さと性格が強みになっているようだ。

 あのままでは、二人が負ける。


(さーて、いま何をすれば一番相手は嫌がるかな? 考えてみよう……)


 考えろ。相手は何をされたくない?

 それはつまり、俺たちが何をすればいいかということだ。

 幸い、相手を怒らせたり嫌がらせたりする術には覚えがある。

 色々な可能性を吟味したうえで、俺は両手に魔法矢を生成。

 ウルザとモリアに向けて放った。


 モリアに放った矢はシールドで受け止められた。

 だが、ウルザはこちらに意識を向ける暇すらなかった。

 側頭部に魔法矢が直撃し、頭を揺らした。

 そして、マイトが放った横薙ぎの剣の直撃を受けた。

 彼の体が、まるで小石か何かのように吹っ飛んで行った。


 そして、俺の援護射撃によってモリアとの戦いにも変化が生じた。

 ミンクが魔法矢を放つ。

 モリアは受け止めるが、フェリックが隙間を縫うようにして矢を放った。

 そして、それは彼女に命中した。


 咳き込み、背中を丸めるモリアに、俺は跳びかかった。


 左足を振り上げ、鎌のように彼女の背中に振り下ろした。

 二対一ならともかく、三対一は彼女の処理能力を上回っていた。

 何の抵抗もなくモリアは背中に蹴りを喰らい、地面に叩きつけられた。

 呻き、立ち上がろうとする彼女の顔の横に剣を突き立てた。


「ヒッ……」

「動くなよ。勝負は決した。痛い目みたくなけりゃ、大人しくして――」


 最後まで言い切る前に、殴られた。

 もちろん、マイトによってだ。

 腰の入った、そして魔力の通ったいいパンチ。

 一瞬にして意識を刈り取られそうになった。


「クレイン、手前! 余計なことしてんじゃねえよ!

 あいつを横から撃つなんて!」

「ああ、悪い。苦戦してるように見えたからよ。

 ついつい、手を出しちまった」

「ふざけんじゃねえよ!

 これは俺とあいつの勝負なんだ! それを……!」

「お前こそふざけんじゃねえ! お前だけの勝負じゃねえんだぞ!」


 俺はその場にいた全員を指した。

 いつの間にかロウは戦いを終わらせていた。


「お前が負けたら俺たちもあいつとやり合わなきゃならなくなる!

 みんななりてえんだよ! 夢を持ってここに来てんだよ!

 だったらそのために手段なんか選ばねえぞ、俺は!

 手段を選ばずに、全員を勝たせてえんだ!」


 俺じゃあいつには敵わない。

 いや、他の誰だってあいつには敵わないだろう。

 だったらマイトが戦うしかない。

 あいつに勝てる可能性を持っているのはマイトだけだ。


 だったら、それを助ける。

 そのためなら、俺はどんなことだってやってやる。


「それにな、マイト。

 お前があいつを気に入らないように、俺もあいつが気に入らない」

「……はぁ?」

「あいつの傲慢ちきな言い方が気に食わねえ、って言ってんだよ。

 なぁにが世界を変えるだ、世間知らずのお坊ちゃんめ。

 手前の都合で変えられてたまるかってんだ」


 実際に話した俺でしか、理解出来ないことだろう。

 事実、みんなポカンしている。

 分からなくてもいい、俺にだってあいつと戦う理由があるってことだ。


「ま、ともかくウルザは倒した。お前らに勝ち目はない。だから……」

「面白いな……して、己がいつ、どこで倒されたというのだ?」


 ビクリ、と俺たちは震えた。

 確かに倒したはずだ。

 岩盤にめり込んで気絶さえしていない人間がいれば、それは化け物だ。

 そして、ウルザは本当に化け物だった。


「冗談だろ……!? あの威力で打ち込まれて、無事でいるってのか!」

「無事ではないな……いまでも痛みで気絶しそうだ。だが、倒れん!」


 ウルザは叫び声を上げた。

 彼の体から、火柱が上がった。

 この距離でも熱を感じる。


「始めようか……お前たちの全力を持ってして、己を――!」


 雷鳴が轟き、閃光が辺りを包んだ。

 それが晴れた時、ウルズの腹から剣が生えていた。


「なっ……!?」


 誰もが、それを見て驚いた。

 当事者であるウルズでさえも、状況を理解し切れていなかった。

 彼に剣を突き込んだ男を除いては! 哄笑が辺りに響き渡る!


「……ッハッハッハ! ザマァ、ねえな! ウルズ様よぉっ!」


 アナン=クロフトスの哄笑が、雨音と雷鳴を切り裂いて辺りに轟いた。


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