表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/23

争奪戦/俺は最初に倒されそう

 ロウ=ツィルの飛び入り参加は認められた。

 これで5対5、数の上では互角だ。


「でもこれで条件が五分五分になっただけ……

 いやダルクがいるからまだなお悪い。どうする、どうやって勝つ。

 どうやらりゃいいんだよこれは……」


 つい最近まで、勝てなくてもいいと思っていた。

 別に騎士になりたい、なんて夢があったわけじゃない。

 現実に打ちのめされるのは、初めてじゃない。

 負けたってどうってことはない、そのはずだった。


 それでも、いまは勝ちたいと思っていた。


 どういう変化が起こったのか、自分でもよく分からない。

 少しばかり勝ち上がれたから、欲が出て来たのか?

 それとも貴族どもの横暴に、今更ながら我慢出来なくなったか?

 それともあいつらの夢を応援したくなったのか?


 すべてかもしれない。


 自分の力がどこまで通用するのかという欲望。

 偉そうにしている奴を上から押さえつける快感。

 夢を持つものたちを助けたいという希望。

 だから負けるわけにはいかない。


「そんなに思いつめることねえだろ、クレイン。

 気楽に行こうぜ、気楽にな」


 お気楽な相棒が俺の肩を叩いた。

 そこには、何の気負いも見られなかった。

 誰よりも夢を信じているはずなのに。


「勝てるか、負けるかは分かりません。

 でも、全力でやってみましょう。クレインさん」


 ミンクは少し不安を滲ませた笑顔を俺に向け、励ましてくれた。


「大丈夫、勝てますよ。僕も精一杯、お手伝いしますから」


 フェリックは貴族とは思えない、柔和な笑みを俺に向けてくれた。


 みんな、俺を励ましてくれている。

 だったら、負けるわけにはいかない。


「状況分かってねえな、お前ら。

 勝てるようにしなきゃいけねえんだ。やるぞ」


 俺は自分を鼓舞するために、拳を打ち付け合った。

 そうとも、負けて当たり前。だが一矢報いたい。

 あいつらの思い通りにはさせないって、さっき思ったばかりだ。

 誰に表明したわけではない、だが自分の思いを自分で裏切りたくはなかった。


 と、そんな風に決起している俺たちを、ロウ=ツィルは覚めた目で見ていた。


「……ところであんた、この戦いに勝つための手とか思いつきます?」

「私は考えることには向いていないからな。ただ戦い、そして倒すだけだ」


 吹雪でも吹いて来そうなほどクールな口ぶりだった。

 いっそこちらとのコミュニケーションを否定していると思えるほどに。

 いや、実際しているのかもしれないが。


「倒したいなら、あんたが出来ることを教えてくれ。

 手が思いつくかもしれないからな」


 ロウ=ツィルは目を伏せ、そして俺たちに近付いて来た。

 微妙な緊張感が漂う。


「私は隠れ、奇襲を行うのが得意だ。これまではずっとそうして来た」


 それは実技テストを見たので知っている。

 気配さえ感じさせないのは先ほど見ての通り。

 いままで出会ってこなかったタイプの戦士だ。


「その力は役に立つかもな。舞台となるのは死角の多い街だから」


 改めて、俺はフィールドを見た。

 廃墟と化して久しい、雑草や蔓草が繁茂した街が見えた。

 建造物自体はしっかりしており、原形をとどめているものがほとんどだ。


 上から見た限りでは左右対称な街づくりが印象的だ。

 中心には広場があり、空位の台座と噴水跡が見て取れた。

 そこから十字路が広がっている。


 街は縦に100m、横に40mほど。

 等間隔に建物が置かれているので、隠れる場所には事欠かない。


「こっから戦うなら……そうだな。マイト、一対一でウルザを押さえろ」

「任せろクレイン。押さえるだけじゃなくて、倒しても構わねえんだろ?」

「無理だから押さえるだけにしとけ。絶対に無理だ。勝とうとは思うなよ」



 俺はマイトを説得するふりをして煽った。

 こいつは人の言うことと逆のことがしたくなる性質なのだ。

 やれと言われればやらない、やるなと言われればやる。

 特に戦うなと言われるのが大嫌いだ。

 案の定、マイトはブチ切れた。


「っんなワケねーだろうが! 楽勝だし!?

 後で吠え面かくんじゃねえぞ!?」


 カンカンになり、マイトは大股で村の中央に向けて歩いて行った。

 試合の開始地点は中央広場。

 最初の一撃を凌げるか、凌げないかで話が変わって来る。


「だ、大丈夫なんでしょうかマイトさん? お、怒ってますけど」

「大丈夫、大丈夫。キレてるくらいがうまく行く。

 それよりこっから先が大事だ」


 真正面から戦ってダルクに競り勝てるヴィジョンが浮かばない。

 だが、最強の駒にして最強の将を一人で押さえてくれるなら。


「あいつが押さえている間の話だ。色々やってもらうことになるぜ」




 銅鑼の音が高らかに鳴り響き、集合が命じられた。

 広場にはキレたマイトがすでに立っていた。

 大股で立ち相手を睨んでいる。


 俺たちはその横に並んだ。

 右端に俺、その次にマイト、ロウ。ミンクとフェリックが続いた。

 この布陣こそがベストだ。


 続けて、相手チームが出て来た。

 大柄なウルザは既に剣を抜いており、鞘に赤い旗が差されている。

 赤毛の男は剣と盾を持ち、金髪の女は杖を持つ。

 ガキは短剣を二本弄び、アナンは俺たちを睨み剣の柄に手を掛けている。

 やる気満々、って感じだ。


「そう言えば、ロウ。あんたは武器を持たないのか?」

「……この五体こそが武器だ。得物など不要」


 相変わらずクールな受け答えだ。

 腕にはアームガードを巻いている、あれに魔力を込めるのか?

 もう少し話したかったが、老人の咳払いが聞こえた。


「それでは、この角笛の音が聞こえた時より戦いは始まる。

 制限時間は……なしじゃ」


 どちらかが負けるまで続くってことか。

 分かりやすくていいな、反吐が出るほど。


 老人はゆっくりと歩き、白線の外まで出て行った。

 そして角笛を口元に当てる。


 その瞬間、ウルザの魔力が爆発的に膨れ上がった。

 彼の姿が陽炎めいて揺らめいて見えた。

 錯覚ではない、実際に陽炎が発生しているのだ。

 どこから? ウルザの体から。


 彼の体表を、赤々とした炎が包み込んだ。

 緑色の瞳が赤く輝き、燃えた。

 どういう魔力、どういう魔法の使い方をしているんだ?

 考えても分からない力……!


 角笛の音が鳴り響いた。

 それと同時に、ウルザは剣を振り上げた。


 脇に控えていた仲間たちはバラバラな位置に飛んだ。

 自分たちも危ない、ということだろう。


 避けろ、と叫びシールドを展開。

 ミンクが防御を固め、フェリックが避けるまでは見た。


 それから先はダメだった。

 赤い炎が俺の視界をすべて覆い尽くし、舐め取った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ