万能
「はあ!」
パシィ!
クリスが、エリシアの拳を片手で受け止める。それは、あり得ない光景だった。
(おかしい!クリスが私の拳を止めるなんて、両手でも不可能な筈なのに!)
「どうして!」
エリシアは、思わず叫んだ。
「エリシア。」
「何よ!」
「シオンから聞いた話なんだが、吸血鬼って三種類いるらしい。」
「知ってるわよ!物理特化、魔力特化、万能でしょう!クリスは、生粋の魔力特化の筈よ!」
しかし、ランドは首を横に振る。
「いや、多分万能だ。恐らく今まで人間の血が邪魔していたんだ、きっと。でないとお前の拳を受け止めるなんてありえない。」
「確かに…。じゃあ、フィオナの次に力が弱かったという弱点が無くなったってこと?」
「そうなるな。厄介なことになった…。」
「いつまでも、私の傍にいて。『スピリッツⅢ』!」
クリスの目が真っ赤だ。本能で行動している。
「本気出してきたぞ!」
「なら、こっちも。」
「「『スピリッツⅢ』!」」
「ガー…」
「『骨砕き』!」
ランドの『守護者』より先にクリスの技が発動した。
(速い!)
クリスの攻撃がエリシアの左肩に当たる。
メキッ!
エリシアの肩から嫌な音がした。
「くう!」
カリッ!
クリスは、唇を噛んで血を流し、エリシアに飲ませようと接近してくる。
「まずは、エリシアからね。」
「させるか!『盾突進』!」
ランドがクリスを弾く。
(助かった…。)
「味方に癒しの加護を…。『治癒』!」
「ありがとう。」
(けど、しばらく動かせないわね。)
依頼を達成したばかりだったため、『全治癒』を使う魔力が残っていなかった。
(エリシアは、もう厳しい。こうなったら、俺一人で!イメージしろ、『スピリッツⅣ』を!そうしないと勝てない!これも違う、これでもない。いったい何が…。 )
ドンッ!
クリスの魔法が飛んでくる。ランドは、間一髪でかわした。
(あぶねぇ!おっ!これじゃねえか?)
「『スピリッツⅣ』!」
ランドの防具が聖騎士のようなものに変わった。その姿は、シオンの仮説を否定していた。
(人を半ばやめるのが、『スピリッツⅣ』なんじゃないの?)
エリシアが、そうこう思っているとランドが仕掛けた。
(これで、終わりだ!)
「白き閃光よ、我が剣に纏い敵を切り裂け!『聖剣』!」
(成功した!シオンが『スピリッツⅣ』の技は、失敗しやすいと言っていたけど。)
クリスに巨大な白い斬撃が飛んでいく。
「『スピリッツⅣ』!」
(クリスまで!)
クリスの防具がドレスに変わる。
(俺からヒントを得たな!)
「辺りに散らばる銀箔の景色、それは破滅の前触れ!痛みを代償に…『銀世界』!…ぐっ!」
しかし、クリスが使用したのは『スピリッツⅡ』の技だった。本能的に『Ⅳ』の技が失敗するのを知り、『Ⅱ』にしたのだ。
(『スピリッツⅡ』の技だ。いける!)
地面がどんどん凍っていき、やがてランドをも凍らせようとするが、『聖剣』がそれごと消し去りクリスに直撃する。
(勝った!)
「そん、な。私は、ただ、皆と、一緒に、いたい、だけ、なのに。」
こうして戦いは、終わった。
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ランド
『スピリッツⅣ』new !
スピリッツ技
『聖剣』new !
クリス
『スピリッツⅣ』new !
スピリッツ技
『銀世界』new !
体力D→B
攻撃力C→A
敏捷B→A