衝動
「クリスー。クリスー。」
「…え!何!」
「最近どうしたんですか?心ここにあらず、でしたよ。」
「そ、そう?」
最近クリスは、どこかボーッとしている。まるで、何かを悩んでいるようだった。しかし、シオンは別のことと受け取った。
(体調が悪いんでしょうか?後で風邪薬でも作っておきましょう。)
「そうよ、クリス。さっきだって壁にぶつかってたじゃない。」
そのため、クリスの額が少し腫れている。
「…。」
その時、クリスの目が紅く輝いた。
(ん?今、クリスの目が一瞬紅くなったような?気のせいですかね。)
しかし、一瞬だったためシオンは気のせいだと思った。
「姉さん、ランドとエリシアが依頼達成報告してくるので、クリスをお願いします。僕は、用事を思い出しました。」
シオンは風邪薬を作るために素材を集めようと考えた。
「わかったわ。」
そして、二人だけで帰ってもらった。しかし、この選択がこの騒動の始まりだった。
「家に着いたわね。クリス、料理ができるまで寝ていなさい。」
フィオナが家にある食材を漁る。
(何か消化に良いものを…。)
そこで、フィオナはクリスの様子がおかしいことに気付いた。
「…。」
「クリス?」
「はぁはぁ!」
「ちょっと、だいじょ…」
「来ちゃダメ!フィオナ!」
すると、フィオナはクリスに床に押し倒された。
(どうしたの!?)
「ちょっと、やめ…」
カリッ!
クリスが唇を噛んで血を流す。それは、以前シオンにしようとしたことと同じだった。
「止めなさい、クリス!それは、洒落にならないわよ!」
「わかってるのに、止まらない!ああ、フィオナ、いつまでも私の傍にいて。」
よく見るとクリスの目が紅くなっている。
「くっ!シルフィ…むぐ!」
「させない…。」
大精霊を呼ぼうとするが、クリスに口を塞がれる。
「ん~!」
必死に暴れるけど、足を絡め片手でフィオナの両手を押さえつけられる。
(いや!動けない!)
「飲んで、フィオナ。」
「んー!!」
クリスの唇とフィオナの唇が重なる。フィオナの口の中にクリスの血が流れ込む。
ゴクッ!
フィオナはその血を飲んでしまう。
(シオン、私…。)
「私の指示通りに動いてね。」
「はい、ご主人様。」