目的
扉の方に振り向くと女性が二人いた。片方はシオンにどことなく似ていた。
「オルティ!」
「えっ?彼女が?どうしてここに?」
「それは、当然愛しの息子を連れ帰るためよ。」
オルティは邪悪な笑みを浮かべながら答えた。
「そして、復讐を遂げるのが私の目的。」
一瞬、何の復讐かわからなかったが、閻魔の話を思い出し、人類に対するものだとわかった。
「オルティ、まさかと思うが、人類を滅ぼすつもりか!今は、神が直接人間に干渉するのは、禁止されておるじゃろ!」
「ええ、だから間接的に干渉するのよ。手を下すのは私じゃない。この子誰だかわかる?」
「シオンと同じ魂…。しかし、シオンと違って純粋な悪意に満ちておる。…まさか!」
「息子の魂は、優しさと憎悪にみち溢れていた。そして、私は優しさと憎悪を分け、死神を洗脳し、優しさの部分だけ転生させた。ついでに精霊姫の魂も息子と一緒にいたがっていたから、姉弟として産まれさせた。」
(この人が…。)
「何故ですか?」
「その優しさを憎悪に変えるためよ。そして、人類に手を下すのは私の息子。」
「シオンは、憎しみなんかに負けない!」
「実際負けて寝ているじゃない。それに最初の頃に比べれば充分憎悪に染まっているもの。あの男を転生させた甲斐があったわ。母親を殺され、親友も殺すしか救う道がなかった。もう充分でしょ?後は、この子と魂を融合させて、一人の存在に戻すだけ。」
「あの研究者はお前が…!」
気がつくとシオンは女神オルティに抱き抱えられていた。
(いつの間に!)
「フィオナも来ない?歓迎するわよ?貴方は息子に尽くしてくれたもの。」
「嫌よ!シオンを返しなさい!イフリート!」
「任せよ!」
「「我が呼び声に…」」
「そう、…残念ね。」
女神オルティはシオンと、シオンの憎悪と一緒に消えた。
(嫌!シオンを返して!)
「閻魔様!どこに行ったかわかりませんか!?」
「…すまん。」
「…そんな。」