シオンの前世と女神オルティの過去
「エリシアは、恐らく前世はない。新しい魂じゃと思う。」
「そう、ですか。」
残念そうに言う。
「後は、シオンだけじゃが…、聞きたいか?」
言いたくなさそうに言う。フィオナは聞くのを止めることにした。
「本音は、聞きたいですが、無理しなくても。」
「…いや、話そう。だが、まずわからないことがある。何でシオンは魂が半分だけなんじゃ?それに以前はやや男性寄りだったが両性タイプがだったのに、男性タイプになっておる。」
(魂が半分って!)
「いや、心配せずともギリギリ寿命に影響がない。多少疲れやすいとかあるかもしれんが。」
(最悪の事態は、避けているのね。)
「では、話そう。女神オルティを知っておるか?」
フィオナはシオンから聞いたことがあった。
(なぜその女神の名が?)
「魔法も存在せず、人族や魔族といった括りが無い時代、女神オルティと力が比較的弱い神との間に子供ができた。」
(それがシオン?だからシオンの様子を見に来ていたとか?)
「その子が大人になり、精霊姫と一緒に種族を統一をしようとした。そして、魔族と獣族の括りを作ることができた。」
(私の前世と一緒に…。ひょっとして前世の私は生まれ変わったら、シオンと姉弟になりたいって閻魔にお願いしたのかしら。)
(その通りです、姫。)
(それにしても、統一ね。人族はできなかったのね。でも、)
「よくそこまでのことが、できましたね。」
「そう、シオンの前世は、魔法使いの始祖アレンじゃからな。」
「では、魔法使いは、全員シオンの前世の血が混ざっているのですか?」
「ある意味…な。」
歯切れが悪かった。
「次は人族、そして人に統一する、はずじゃった。しかし、魔法の力が欲しいという者が集まり、アレンを裏切ったんじゃ。アレンは殺され、その者達は、その遺体を研究し、自分達の身体に取り込んだ。」
「…。」
「アレンは、死ぬ間際に精霊姫にせめて人族もつくってほしいと遺言を残した。精霊姫は、彼を失った悲しみからか命を削りながら、活動し人族ができた。そして、後を追うように亡くなった。」
(私ってそこまで尽くしていたんだ。)
「それにしても、お主らの魂が行方不明になったときは焦ったぞい。いつの間にか転生しておるし。」
「えっ?貴方がさせたのではないのですか?」
「それは死神の役目なんじゃが、どの死神もやっていないと言うしの。お主らが姉弟で生まれ変わっているを見て、安心したがの。」
(閻魔、いやあの世の住人がやったことではない?じゃあ、誰が?)
「さて、本題じゃがの。シオンの魂が酷く負の感情で汚れておる。魂が半分になったせいで影響を受けやすくなったのもあるが。死神がシオンの魂を洗えば解決じゃ。」
「させないわよ。」