ランドとクリスの前世
「ランド、お前さんの前世は大昔の勇者アランじゃ。」
「勇者ですか?」
「うむ、その昔、人族と魔族の対立が最も激しかった時に活躍した。戦っている内に、魔族の人となりを知り、魔族も人族も手を取り合える可能性に気付き、和平を提案し始めた。残念ながら上手くいかず、最終的には暗殺されたみたいじゃがな。」
(嫌な死に方だな。)
「次はお主じゃな。」
「私ですか?」
「お前さんは、歌姫じゃ。旅をしながら出会った人達に歌を聞かせ、元気を与えた。人族にも獣族にも魔族にも、その歌姫の記録があると思うが。名前は、エリナじゃ。」
(今度、調べてみよう!あっ、そういえば、)
「前世では、歌の才能があったんですよね。」
「そうじゃな。あれが下手だと他のやつは、ゴミじゃな。」
「では、今の私に歌の才能ってありますか?」
シオンが鍛冶と薬、フィオナが料理、クリスも何か一つ欲しかった。
「下手ではないが、上手くもないといったところか。魂を洗った時に記憶や才能、性格はリセットされるのじゃ。そこの精霊姫は、特別じゃがの。」
(そうなんだ。)
「前世の才能が欲しいか?」
「えっ?あるんですか?」
「ワシは、洗い出されたものの管理もしておる。」
「もらってもいいんですか?」
「実はのう。ワシは、あの世でお前さんの歌を聞いておっての。ファンなんじゃよ。また聴きたいと思っておった。ほれ!」
淡い光がクリスを包み込む。
「練習すれば、また前世のように歌えるようになる。また聴かせてくれ。」
「ありがとうございます!」
「お、私には?」
ランドが苦手な敬語で訊ねる。
「お前さんは、才能はなかった。今の方がマシじゃ。ただ、人一倍努力をしておったがの。」
ランドは、マシと言われてショックを受けた。