1対1
「くそ!こんなはずでは!こうなったら貴様だけでも殺してやる!」
残っていたのは、全く説得に応じなかったあの魔族だった。
(元気ですねぇ。というより1人になっても戦うとか、その熱意を平和に向けて欲しい。)
「あのー、もう降参しては?」
「ふざけるな!50000の軍率いて負けました、では一生の恥なんだよ!」
(だったら最初からやらなきゃよかったのに。
その魔族は吸血鬼の男だった。この世界の吸血鬼は、最初こそ太陽の光に浴びるとすぐ死んでしまっていたが、数十年の内に免疫力ができて光を浴びても死ぬことは、なくなった。ただきついものはきついらしい。
閑話休題。その吸血鬼の男は、槍でシオンに襲いかかる。
「『五月雨』!」
『五月雨』は、槍の秘技。でもマリアの攻撃を見慣れているシオンにとっては止まって見える。シオンは、軽々かわす。
「くそ!『時雨』!」
『時雨』、溜めが大きい代わりに鋭い突きを放つ特技。本来なら避けるか、放つ前に攻撃するかが普通の対処方法だが。
(ここはあえて、戦意を削ぐために…。)
キンッ!
「なんだと!」
相手の特技の突きを右手の剣の普通の突きと受け止めた。
「もう一度言います、降参してください。」
「う、ウオオオー!」
あまりのショックに会話にすらなっていない。
(うわー、すごく面倒くさいです。)
吸血鬼の男は、戦意を削がれ過ぎて、闇雲に槍を振っている。
「仕方がありません、これで眠ってください。」
マリアがシオンに最初に教えてくれた特技『桜』、隙のない舞で相手の攻撃を避け、隙ができたところで首を切る技だが、
「グフ!」
手刀で気絶させる。
(はあ、やっと終わりました。)
こうして、戦いは終結した。