クレイの妹
今、ランドはクレイの妹クレアと二人きりだ。
「この人殺し!兄さんを、兄さんを返してー!」
何も言えない。クレアが咳き込む。身体が弱いようだ。すると、クレイの祖父が、クレアを部屋の外に追いやり、
「事情は、聞いた。ありがとう。」
「…感謝されるようなことはしてません。」
(助けられなかったんだ!畜生!)
思わず泣きそうになる。
「ワシは、もう長くない。クレアは、貴族の養子として、迎えられることになった。」
子供が産まれず、養子を探していた貴族がいたらしい。
(クレイ…、お前の妹は恐らく不自由ない生活をおくることができるだろう。よかったな。…本当は、お前が守りたかっただろうけどさ。)
「これを。」
「これは?」
「クレイの大切にしていた腕輪だ。受け取ってほしい。」
「…いいのか?」
「クレイもその方が喜ぶだろうて。」
「…ありがとうございます。」
クレイの墓参りに行く。墓の前に立った瞬間、ランドはもうクレイがいないことを実感した。そして、思わず泣いた。
「わあああーん!!」
(ごめん、ごめんなあ。)
その後、クレイのお墓の前で別れを告げて皆のところに帰った。
シオンが家の前で待っていた。よく見ると目が真っ赤だ。相当泣いたようだ。
「別れは、済みましたか?」
「…ああ。」
(だが、それを言いたかった訳じゃないんだろう?)
「師匠は、復讐はするなと言っていました。」
「それがどうした!」
(あいつだけは!あいつだけは!!)
「しかし、生かしておいても犠牲者が増えるばかりです。だから、覚悟を決めました。」
それを聞いて、ランドは少し冷静になる。
「それは、以前師匠がお前に言っていた、誰かのためにというやつか?」
「そうです。これ以上同じ被害者を出さないためにも…。だから、ランドも誓ってください。復讐には呑み込まれないと。」
「…ああ!」