嫌とは言わない理由
翌朝
クレイが俺のところに顔を出してきた。何か覚悟を決めた顔だ。
「ランド。」
「何だ?」
「君達の師匠に僕を紹介してほしい。」
「はあ!?」
ランドは、正気を疑った。普通あれを見て参加したいとは思わない。
「わ、わかった。案内するぜ。」
戸惑いながら、マリアのもとへ案内した。
「…私の修業内容わかってるの?」
「はい!」
「どうして、強くなりたいか聞いてもいいかしら?」
「僕の両親は、戦争で亡くなっていてね。じいちゃんと妹しかいないんだ。僕は、妹を守れる男になりたいんだ。」
「…なるほど…ね。嘘を言ってるわけでもなさそうだし、理由は合格。でも、あまりについていけてなかったら、すぐに追い出すわよ。それと何か覚えたい武器ある?言っておくけど、教えられるのは剣系統だけよ?エルフだから弓は習ってるんでしょうけど。」
エルフは、基本山から出ずに過ごす。そのため、狩りに最適な弓を覚えることが多い。
ちなみにマリアは、誰かと武器が被るように願った。しかし、
「では双刃の凪刀で。」
「また!?また別の武器!?」
また別の武器に嫌気がさしていた。
「師匠!落ち着いてください!」
「はっ!コホン、わかったわ。じゃあ、今日から参加ね。」
今日の修業が終わり、ランドはクレイとシオンと一緒に帰っている。
「み、見ていて、わかって、いたけど、きついし、痛いね。」
「ああ、だが、ちゃんと、身になってい、るんだぜ。」
「そう、なん、ですよね、不思議、ですよね。」
三人ともヘロヘロだった。三人は、少し息を調える。
「じゃあ、家あっちだから。」
「ん?住み込みじゃないんですか?」
「愛しの妹がいるんだ。仕方ない。」
「そういうことを言うな!恥ずかしい!」
そう言って別れた。
一ヶ月後
キンッ!
カキン!
クレイとシオンが組み手をしている。
ガッ!
ドシャッ!
足払いでクレイは転倒し、シオンは木刀を突きつける。
「…参りました。」
「うう、大分先輩の筈なのに大差ない。」
クレイの成長はすごかった。あっという間にランドを抜いたのだ。
「ここまで強くなれたら、目の前にいる人くらい守れるよね?」
「そうだなー、でも油断するなよ。いつ何が起こるかわからないんだから。」
そう言って、今日のところは終わった。
翌日、クレイが行方不明になった。
「クレイ!どこだ!どこにいる!」
「師匠!」
「駄目ね…。私の気配察知の範囲外だわ。」
三日後、近くの森の中で発見された。