結局
「師匠、見ているだけなんて狡いです。」
「これも修業のうちよ。」
「助けていただいて、ありがとうございます。」
「良いのよ。さっ、孤児院に帰りましょ。」
「クリスを助けていただき、ありがとうございます。」
「気にしないで。じゃあね。」
マリアは帰ろうとするが、
「お待ちください!実は、ハーフのクリスがいることがどこからか他国に漏れてまして。」
(嫌な予感…。)
「私達では、守りきれません。ですから、クリスを連れていってくれませんか?」
「院長先生!」
どうやら、クリスにも話していなかったようだ。
「クリス、残念ながら私達は、力が足りない。また、今回の様なことが起こるかもしれない。彼女達に任せるのが一番なんだ。」
先程の恐怖がよみがえる。自分がどこかに連れていかれる、下手をすれば怪しげな場所に売られていたという、そういう恐怖が。
「…わかり…ました。」
クリスが頷く。
(はあ、子守りか。)
クリスが頷いたのに満足したのか、エリシアが笑顔だ。
(コラ!エリシア!嬉しそうな顔をするな!不謹慎よ!)
「わかったわ…。ちなみにこの子の両親が引き取りに来ることはないの?」
もしかしたら、環境が整い次第迎えに来るかもしれない。そう考えたが、
「それはありません。すべて、私に任せるとのことでしたので。」
(よっぽど生活環境が良くないのね。)
「私は、マリア。これからよろしくね。クリスちゃん。」
こうして、新たに一人増えた。