駄目!
「おはよー…。」
「おはようございます。」
あの後、クリスの症状が一時的に治まったところをマリアが必死に魔力の抑え方を教えていた。
(師匠、眠そうですね。)
今では、クリスは、外でエリシアと遊ぶ始末。
(エリシアが僕に引っ付いてないなんて珍しい。ありがたいんですけどね。)
エリシア達が帰ってきた。
「師匠。」
「駄目!」
「クリスを…って私まだ何も言ってないわよ!」
(クリスっていうんですね。)
そんなことを思いながら、シオンは二人の様子をぼんやり見ていた。
「大方、この子を一緒に連れていきたいとか言いたいんでしょ?」
「そ、そうだけど…。」
「駄目よ、この子はここで生きていくのに何の不自由も無いわ。現に、院長という親代わりがいる。」
「…。」
理解はしてるけど、納得はしていない感じの顔をしていた。
「で、でも人族の国に行っても、魔族の国に行っても石を投げられていたって聞いたわよ。そして、私達といると不幸になるからって両親によって孤児院へ渡されたって。」
一応、クリスの両親は子供思いだったようだ。
「その為に。院長がいるんじゃない。」
「で、でも。」
「諦めなさい。」
「…。」
返事をしない時点で、諦めてないのがわかる。
「貴方は、どう思っているの?」
マリアが、クリスに自分の意志を聞いてくる。
「できれば、エリシアと一緒にいたい。一応皆、私を村の一員として接してくれるけど、どこか溝があって。そんな時にエリシアが友達になってくれたから。でも、院長先生と一緒の方がいい。」
「…というわけよ。わかった?」
「~~~!」
エリシアがどこかに走っていった。
「師匠~。」
「…慰めてあげて。」
(なんて言葉かければいいんですか!)