怪力女
10日後
「師匠ー、新しい服がほしいです。体も洗いたいです。」
フィオナが文句を言うが、当然だった。服はボロボロ、臭いも少しひどかったのだ。
「はいはい、体洗うのは村か川を見つけたらね。服はいずれ…ね。」
しばらく歩く。すると、3人はとんでないものを見てしまった。
(うわぁー、すごーい。)
シオンとそう年が変わらなさそうな女の子が鹿10匹を担いでいた。
(僕もあの時あれだけの力があれば母さんは…。いや、たらればは、良くないですね。)
「じろじろ見ないで…。それと、あげないわよ。」
「失礼ねぇ!ちょっとビックリしただけじゃない!」
フィオナも見ていたらしい。
(まあ、嫌でも目に入りますよね。)
女の子は、足早に去っていった。
「人がいるってことは、この近くに村があるわね。よーし、後をつけるわよー!」
その提案は、シオンにとって自称女神オルティを連想させて嫌だった。
(後をつけるってストーカーみたいで嫌なんですけどー!)
そんなシオンの心の叫びも虚しく、結局行動に移した。
20分後村に着いた。
(20分も担げるってすごいですね…。)
女の子は一度も休憩せず、担いでいた。
「…また来たの?」
女の子は不機嫌そうに言う。それに腹が立ったのか、
「一泊したら出ていきますぅー!」
フィオナが突っ掛かる。
「機嫌を害してすみません。」
(フィ…姉さん突っかからないで。後をつけたんだから、機嫌が悪くなっても仕方がないです。)
実際は尾行に気付かず、単にまた会ったのが嫌なだけだったがそれには気付かなかった。
(…わかってるわよ。)
「宿ならあっちよ。」
意外にも東に指を指して宿の場所を教えてくれた。
「親切に、ありがとうございます。」
「…じゃあね。」
こうして1日が過ぎた。