途切れた姉弟の絆
フィオナは今、シオンに八つ当たりしている。そうせずにいられなかった。
「現場にいたんでしょ!どうして助けなかったの!」
(助けようとした!現に母さんをここまで運んでいる!わかっているのに!)
「…。」
シオンは、何も言わない。言われるがままだ。フィオナは、一時間も八つ当たりを続けた。
(シオンは、悪くないのに!悪いのは、母さんを殺した奴なのに!えっ?ダメ!これだけは口に出さないで!やめて!)
フィオナは必死にその言葉を飲み込もうとするが、言ってしまった。
「こんなに、役に立たない弟なんていらない!」
それを聞いたシオンは、顔を真っ青にしながら、
「ごめん、なさい…。いらないですよね…、こんな弟…。」
走ってどこかに行ってしまった。フィオナはその後追いかけたが、見失ってしまった。
(どこ行ったの、シオン!違うの!あれは本音じゃないの!)
数時間後、ナイフで首を切り自殺をはかろうとしたシオンが運び込まれた。
シオンは病室で寝ている。
(わた、私のせいで…。もう嫌!シオンまでいなくならないで!)
シオンは、未だに目を覚まさない。命に別状はないみたいだが。その後、ノックが聞こえてきた。
「…どうぞ。」
入ってきたのは、マリアだった。
「驚いたわよ、シオンが自殺をはかろうとしたと聞いたときは。やっぱり、母親が亡くなったのが…、」
「…それだけじゃないんです。」
マリアに自分がシオンにしたことを伝えた。
「目を覚まさないのは、それが原因ね。恐らくこのままだと、一生目を覚まさない。」
「ど、どうしたら!」
「…一つだけ方法がある。けど、それは貴方にとって辛い選択になる。」
「構いません!お願いします!」
翌日シオンは、目を覚ました。
「シオン、なにがあったか覚えてる?」
「母さんが…亡くなったんですよね。そのせいで、僕は、自殺を。」
「私は、お母さんに貴方のことを託されたのよ。だから、気を強くもって母さんの分まで生きなさい。」
「わかり…ました。」
まだ、辛そうね。
「シオン、私の隣にいるのはね、貴方の姉のフィオナよ。」
それを聞いて首を傾げる。
「姉?僕は一人っ子のはずですが?」
「事情があって貴方の記憶から姉の存在が消えてしまったの。でも、彼女は、正真正銘貴方の姉よ。」
そう、マリアが言っていた方法というのがフィオナの八つ当たりの記憶を消すことだった。しかし、そこだけを綺麗に消すことができない。だから、フィオナのことそのものの記憶から消したのだ。
「貴方は、心からフィオナを姉と認識できないかもしれないけど、努力してほしい。」
「嘘…ではないみたいですね。わかりました。努力します。」