キメラ
マリアが昼御飯をいただいていると、子供が入ってきた。
「ただい…ってこの人誰!?」
「お帰りなさい、フィオナ。この方は、客人よ。失礼の無いように。マリアさん。この子は、フィオナ。シオンの姉です。本を読むのが好きで図書館にいつもいるのよ。」
「姉さんお帰りー。」
(この子もスピード狂なのかしら?)
「この子も足が速いんですか?」
「そこまでは。シオンは、たまに勝手に私の仕事に付いてきて鍛えられているけど。」
(歴史ハンターって、皆こうなのかしら?)
夜、シオンが月を眺めていると一人の女性が近づいてきた。自称全知全能の女神オルティだ。ちなみに『真実の眼』が通用しないから、それが本当なのかわからない。
シオンが一人の時、度々僕に会いに来る。それも何故だかわからない。
「…何でしょう?」
いつもと表情が違う。ものすごく嬉しそうな顔をしている。
「お願いしたいことがあるの。明日午後3時頃に、今日の午前中に遊んでいたところに行ってほしいの。」
シオンは、自分の行動を知られていたことに寒気がした。
(僕の行動を見ていたのでしょうか?女神じゃなくてストーカー?)
「何故ですか?」
「行けばわかるわよ。」
(『真実の眼』!やっぱりわからない。)
けれど、シオンはなんとなく行かなければならないような気がした。
翌日午後3時
(着いたけど、何もない?)
よく見ると誰かがいる。
(母さん?何でこんなところに?もう一人は、誰?何かを話している。)
「調べてわかったわよ。今までの誘拐犯は、貴方でしょ?」
「ほぉ、よく調べたな。で、どうしてほしいんだ。」
「まずは、大人しく子供たちを解放しなさい!」
「いいぜぇー。そらっ!」
男は、何かの合図をした。そして…、化け物が現れた。まるでたくさんのゾンビが融合したような…。
「まさか…これが…。」
マリアは、顔を真っ青にして絶句している。
「そうだ、これがいなくなったガキ達の成れの果てだ。会えて良かったなぁ。」
「貴方!自分が何をしているのか、わかっているの!」
「ああ、わかっているぜ。『キメラ』の研究だ。偉大な研究の礎になれて、寧ろ感謝してほしいくらいだ。」
『キメラ』というのは、人間と何か別の生き物を融合させてできる強力な人だ。しかし、危険性が高く研究者の間では禁忌とされている研究だ。
(あれが…拐われた人達?そんな…。ん?それにしても、何ですか?あの腕は?あれは…嫌な予感が)
両腕は黒い靄で、覆われている。シオンは、それが何かわからなかったが、直感的に危険だと感じた。
「殺れ!」
シオンは、茂みに隠れているおかげで気づかれていない。しかし、腰を抜かしていて見ていることしかできない。
「『縮地』!」
アリスがスピードで翻弄する。
(い、いけぇ!母さん!)
「『ツバメ返し』!」
母さんが、キメラの左腕を切り落とす。やった!
「いいのか?こいつは、子供達なんだぞ?」
それを聞いてアリスの動きが悪くなる。
「くっ!…ごめんなさい、そんな姿になってしまってまで生きていたくないでしょう?私が終わらせてあげる。」
そう自分に言い聞かせていた。そこに、
「させるかよ!『蜘蛛糸』!」
魔力の糸が周囲に飛んできた。咄嗟にかわそうとするがアリスの足に絡まる。
「しまっ…。」
次の瞬間、キメラの右腕がアリスの胸を貫いた。