戦闘準備
「た、大変だ!魔族が!魔族が攻めてきた!」
この国はコテナと言い、人族、獣族、魔族の種族の蟠りを良しとしない者達が集まって8年前に形だけできたばかりで、ようやく安定してきた国だ。コテナは、種族など関係なく手を取り合っている姿を見せ、少しずつ争いを無くすためにつくられた国だった。
しかし、この世界は種族間の問題が多い。昔は、自分達とは別の種族の捕虜を散々実験の被検体にしたり、奴隷にし、痛め付けたりしたりと溝も傷も大きい。復讐に人生を懸けている者などの存在は、珍しくない。
それだけではない。魔族というのは、鬼や悪魔といった者達の集まりで特に力が強く、自分の力に溺れる者もなかには居り、戦争を自分の力を試すための舞台と思っている人もいる。
そして、そういった者達はコテナの存在を快く思っていない。コテナに攻めこむということは、魔族のそういった者達に他ならなかった。
「…数は?」
「5万を下らないかと!」
「………。」
ギルド長は、どうすればいいのか必死に考えている。この国は、できてまだ間がないため、世界最小の国とされている。村ではなく国である以上軍隊もいるが5000を越えないだろう。冒険者を入れても5500程度。
「急いで民達をアラスに避難させろ!あの国も我々と同じ平和主義派の国だ!魔族の戦争主義派が攻めてきたと伝えれば、民達を匿ってくれるはずだ!」
国中が慌ただしくなっていく。確かにアラスに逃げ込めば一時的に助かるだろう。しかし、アラスもそれほど大きな国ではない。そして次は、アラスが標的になる確率が高かった。
そういう考えにたどり着いた4人は、戦う決意をした。
(シオン。)
(わかってます。)
(『最強』の弟子の力を見せてやろうぜ!この国を狙ったことと戦争がどれだけ愚かなことか教えてやる!)
(エリシアがいないのが痛いけどね。)
(殺しは無しですよ。)
(わかってるって。)
「ギルド長、私達も戦う準備をしてきます。」
「しかし、君達はまだ18歳。できれば…」
「いえ、ここが私達の居場所です。私がハーフだろうと笑顔で受け入れてくれた国。だから、この国のために戦いたいのです。」
「それに僕達は、あの方の弟子ですよ。追い返すことだってできます。」
「…策でもあるのか?」
「いえ、力ずくですね。見ていてください。『最強』の弟子の力を。まあ、その前に一応説得してみますけどね。」
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ギルド長は、シオン達がマリアの弟子であることは知っていますが、実力は、知りません。