調査
あれからシオンは落ち着いた。前世の恋愛感情が一割だったのが、九割になったのが原因で感情が爆発していたのだ。
今でもフィオナの顔を見ると顔が赤くなり、抱きしめられると理性が飛びそうになるが、普段は大丈夫になった。
「ああ…、とうとう僕は変態になってしまいました…。あの時の僕の発言撤回したいです…。」
「俺は別に気にしないけどな。アリだと思うぞ?…ぐは!」
そう言うとエリシアの右、クリスの左ストレートがランドの顔面に決まった。その目には本気でその気なったらどうしてくれるの!と書いてあった。
『フリーズ』は現在あることを調査していた。
「ああ、やっぱり。」
エリシアがアンに投げられた際に激突した岩を調べていた。
「何かわかったのか?」
「これ、神界の岩ですよ。神木と同じように破壊不可です。」
(エリシアの防具は神レベルに強い。つまり、アンは神レベルに投げ飛ばしたことになります。本当に彼女は一体…。)
「何でそんなものがあるんだ?」
二人のストレートから復帰したランドがシオンに疑問の声をかける。神界の物が地上にあるとわかると困るのでシンに色々聞くついでに神界まで持っていくことにした。
「…という訳なんですが、何か心当たりありませんか?というよりシン様?なんかゴブリン臭いのですが…。」
「うん、ちょっとゴブリンに囲まれたことがあってね。その時に臭いがついたのかも。」
「あれ?魔物達は大人しくなってきてるはずなんですが。」
実際、最初はシンに見向きもしなかった。だが、オルティが簡単な魅了魔法を使ったせいで涎を垂らしながら集まってきていたのだ。
(危うく…危うく汚れた体になるところだったわ…。息子に適当に名前つけたなんていうのは怒って当然だけど、本当に恐かった…。)
「アンの正体は…、まだわからないわ。ソラリスが今調べてる。」
「前伯父さんが!?」
「まえ…?ああ、前世のって意味ね?地上の者達の暴走はあの女のような者達が原因みたいだったの。彼女なら何か知ってるかも知れないけど…。」
ソラリスが協力してくれているような口振りで話すシンを見てシオンは内心喜んでいた。
(じゃあ、もう人を憎んでいないんですね…。よかった…。)
「彼女?」
ランドは最後に力を貸してくれた人かな?と思った。
「人が住む星には必ずあるものって何かわかる?」
「世界樹ですか?」
「正解!生き物っていうのは呼吸、食事、睡眠ができてようやく生きていけるでしょ?まあ、どれも神には必要ないけどね。その内の二つ、呼吸と食事ができるように酸素と食物を生み出す役割を担っているのが世界樹。他にも世界を守る結界の役割もあるわね。その世界樹を守っている女性のことよ。」
「へぇー。」
自然の力を借りられるのと世界樹は接点があると思ったが、ランドのなかでは彼女を目の泥棒としか認識していない。
「あとあの岩なんですが…。」
シオンが岩に指を指す。
「あ、あれは…、アハハハ…、わからないわ。」
「嘘つかないでください。でも、言いたくないならいいです。」
とりあえず『フリーズ』は近いうちに世界樹を守っている女性に会うと決めた。