四人の勇者
戦争は予想より拮抗していた。魔族の一人一人は人間の約十倍強く、地力は上。だが、あくまで予想よりであり、一億という数の前にたくさんの魔族が殺されていった。
「民間人は避難できたか!」
「魔王様!お逃げください!ここはもうダメです!」
「何を言っているのだ!国民を避難させられていないのに、私だけ逃げられるか!」
「貴女様が殺されて誰が魔族を立て直すのですか!お願いします!お逃げ…ぐあ!」
魔族の幹部が勇者の一人に斬られる。
「へぇー、こいつが魔王か。きれいな女じゃねぇか。おい、ユウト!こいつ、俺のハーレムに入れていいか?」
「…好きにしろ。」
「へっへっへ、じゃあさっさとお持ち帰りするとする…か!」
勇者が剣を振り下ろす。それをリオが剣で受け止める。
「ちい!誰が貴様などに…!はあ!」
勇者の剣を弾き、喉を狙って突きを出す。が、勇者は咄嗟にかわし、頬にかすり傷がつく程度に留まる。
「とっとと…寝てろ!」
「あぐ!」
勇者は柄をリオの首に叩き込み気絶させ、片手で持ち上げる。
「よくも俺の顔に傷を…。絶対に犯し尽くして…」
ドカーン!
帝国の兵士が大きな爆発で吹き飛んだ。
「な、なんだ!?」
「て、敵の援軍です!小国のコテナの軍勢だと思われます!数は五千!」
「ああ、仲良しごっこやってる国か…。後はお前らで何とかしろよ…。俺はこの女を…」
「『空間転移』!」
勇者の手元からリオが消える。
「消えた!?おい!俺の女はどこだ!」
「『限界魔砲』…、いけーーー!!」
勇者二人に極太レーザーが飛ぶ。
「なっ!?くっ!」
「おい!力貸せ!」
「「『防壁』!」」
勇者二人は防御魔法で防いだ。
「おお、防いだぞ。あれが勇者か?」
「誰だてめぇらは!」
「お前らの敵だよ…。異世界から来たって聞いたから騙されているのかと思ったが、どうやら下種な考えをしていたようだな。覚悟しろ!」
ランドが大剣を構える。
「へっ、見た感じ人間だろ?魔族の味方すんのか?あっ?」
「ユウト!トウヤ!大丈夫!?」
「今治癒魔法を…」
「助かる。ユイ、アヤ。」
残り二人の勇者も合流し、傷を治す。
「四人…、報告通りですね。」
「シオン…、あれは」
「あれは」
「「俺(私)達がやる!」」
エリシアとランドにトウヤに剣を向ける。
「さっきから、あれはあれはと物扱いしやがって!ぶっ殺す!」
「こっちの台詞よ!リオに手を出して!生きて帰れると思わないことね!」
「勇者らしからぬことして、歴代の勇者の品位を落とすな!勇者がなんたるものか叩き込んでやる!シオン、いいだろ!」
エリシアはリオのことで、ランドは前世で頑張った自分を貶められているようでトウヤ許せなかった。
「そうですね、じゃあ僕達でこの人達を相手にしますね。丁度互いに男一女二ですし。」
そう言って残り勇者三人に目を向ける。
「…ありがとう。」
「よし…、いくぞ!」
ランドはトウヤを蹴り飛ばした。
「ぐあーーー!?」
バキン、バキン!
トウヤが木々をへし折りながら飛ばされていく。
「俺達はあっちで戦う…。そっちは頼んだぞ。」
「ええ、すぐに追いつきますから。」
そう言って互いに別れた。