アランの武器
「暑い…。ランドまだなの?」
「もう少し待ってくれ…。後五分くらいで着く。」
現在、『フリーズ』は森のなかを走っていた。その森は湿気が酷く、気温も高かった。
「五分…、そう五分ね。それを過ぎると殺すからね…。」
クリスが殺意を込めた目でランドを睨む。クリスの魔力ならランドを消し飛ばすのも簡単だ。
(あの目マジだよ…。まあ、実際はあと三分だがな。)
三分後
「よし!五分以内に着いたぞ!」
「ここ?」
たどり着いた先にはダンジョンがあった。
「まさか、ここを潜れとか言うんじゃ…。」
「心配すんな。ここの入り口付近に俺の前世、アランの武器を…、…!『守護者』!」
茂みから銀色の狼が現れ、エリシアに飛び掛かろうとしたのをランドが受け止める。
「ぐぐっ!重い!」
「フェンリル!?」
フェンリルとは不死鳥に並ぶ伝説の生き物で不死でこそ無いが、不老で頭も良い。言葉は話せないが、人の言葉を理解し、ある程度なら意志疎通をすることができる。力も強く、一番の脅威は氷の息吹き。その気になれば、森一つを凍らせることができると言われている。
「ちい!どけ!」
ランドが盾で押し返す。
「邪魔よ!『魔弾』!『魔弾』!」
フェンリルはクリスの『魔弾』を軽くジャンプしながらかわす。そして、着地と同時にフェンリルが大きく息を吸い始めた。
「…!『スピリッツⅣ』!」
シオンがランドの横に並ぶ形でフィオナとクリスの前に立つ。ランドは盾を構え、シオンはスピリッツの翼を前に折り畳み氷の息吹きを防ごうとする。吹き飛ばされそうになるのをエリシアが支える。
「「「ぐう!あああーーー!!」」」
息吹きが止み、何とか防いだがシオンは膝をついた。
「おい!フェンリル!俺達は戦いに来たんじゃない!入り口付近にある武器に用があるだけなんだよ!」
ランドが指を指す。そこには半透明な剣が刺さっていた。フェンリルは人の言葉を理解できる生き物。これで戦わなくて済む。そう思っていたが、フェンリルの殺意が膨らんだ。
(なんだよ!このフェンリルは!一体何が気に食わないんだよ!)
「『睡眠矢』!」
フィオナが矢を放つ。その数二十万。しかし、まるで迷路でも抜けるかのようにかわした。
「仕方ねぇ!『ジェネレーション』!」
ランドがアランの姿に変わる。そして、突っ込もうとした。
「はあーーー…あ?」
すると急にフェンリルの殺意が消えた。お座りをして何かを待ってる。
(もしかして…。)
「リン?」
するとフェンリルが頷いた。
「えっ?リンってあのフェンリルの名前?」
「でも、リンって普通の雌の子犬…いや確かに銀色だったけど。」
「それ、フェンリルって気づいてなかっただけなんじゃ…。」
リンというのは弱っていたところを拾い、元気になるまでアランが世話をしていた小さな狼の名前。質問していくとアランの武器を守っていたことがわかった。
「でも何でこんなところに刺さってるんですか?」
「これはな、もう武器を必要とする時代を終わらせるという決意のようなものだったんだよ。だが、王に掛け合って数時間で、殺されたんだよな。だが、今は神だの堕天使だので絶対に必要になってくる。だから、この武器もらっていくぞ?」
フェンリルが頷く。
「正直、数千年も前の話だったからな。あるかどうか不安だったが、お前が守ってくれていたんだな。守ってくれてありがとうな。」
そう言うとフェンリルは満足そうに吠えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ランド
武器
ドラゴンスレイヤー→トランスウエポン