交換?
『フリーズ』以外の二組も一秒足らずで勝利していた。
この結果にコテナの応援団達は疑問に思っていた。
「なあ?何で相手は棒立ちのまま、何の反応もせずに負けるんだ?」
コテナの応援団達は、全員の動きがはっきりと見えていた。彼らも冒険者なのだが、Cランク以下の集まりである。そんな自分達でも見えるのに、国の代表で参加している選手が何故何の抵抗もせずやられるのか不思議でならなかった。
彼らは知らない。マリアのせいで強さの感覚が狂ってしまっていることに。
コテナの兵士や初心者冒険者達は、マリアが導入した特訓方法によって育成されている。特訓内容はシオン達よりかなり優しいのだが、それでも他国から見れば人と思えないほど厳しいものである。この特訓を経て冒険者を名乗れるわけで、既に彼らは他国から見ればAランクの上位以上を名乗れる。
だから、相手が何の反応もできなかったという発想に至らなかった。
そんなコテナ組だけの会話を聞いていた観客達は驚きを隠せない。そこに一人の男が応援団に突っ掛かってきた。
「ふざけるな!反応できるわけないだろ!瞬きしている間に終わってるんだぞ!AランクやBランクというのは詐称なんだろう!」
応援団はこいつ何を言ってるんだ?という目を向ける。
「えっ?戦いに最中に、瞬きなんてするものなんですか?確かに『フリーズ』はAランク相当ではありますけど?」
「Aランク!?Sランクの間違いだろ!?」
「あはは、やだなあ。あの程度でSランク名乗れるわけないだろ?」
コテナ組の認識ではSランクはマリアと一分前後やりあえるだけの実力を持っていないとなれないと思っている。そして、残念ながらコテナにはSランク冒険者はマリアを除いていない。最高記録はシオンとランドの奇跡の十秒である。
応援団の一言が純粋なものであるとわかり、突っ掛かってきた男は度肝を抜かれた。
(Zzz…。)
夜、全員が寝静まった頃、ランドの前に一人の女性が立っていた。サラッとした緑色の長髪に、蒼い瞳、スタイルもフィオナに負けず劣らない、そんな女性が。そして、気配に敏感なシオンもクリスも彼女の存在に気づかず起きない。
彼女が指を鳴らす。すると世界が灰色に包まれた。彼女は自分の右目とランドの右目を抜き取り、交換した。
「似合ってるわよ。」
それだけ言い残し、世界は元の色を取り戻し彼女は姿を消した。
(いたっ!?何か右目が…、気のせいか?)
ランドは違和感を感じたものの、特に何もせず再び寝ることにした。
「目が!?目があああーーー!?」
朝、ランドが鏡を見て悲鳴をあげた。朝起きて顔を洗い目を確認すると蒼と緑のオッドアイになっているのだから驚くのも無理もなかった。
「どうしたの!?って何それ!?ちょっと待ってて!」
クリスが心配そうに様子を見に来て、ランドの目の変化にすぐに気づいた。慌てたクリスは、薬を作っているシオンなら病気のことに詳しいのではないかと呼びにいった。
「シオン!」
階段を降りると眠そうにパンに食べているシオンがいた。シオンは朝に弱く、朝食は基本パン一つで済ませるか食べない。
「えっ?何ですか?さっきのランドの悲鳴と関係があることですか?」
「いいから!早く来て!」
シオンはパンをくわえたまま、クリスの後をついていった。ランドは鏡の前でどうすればいいのかワタワタしていた。
「これなんだけど。」
シオンが眠い目を擦りながら、ランドの目を見る。
「……病気では…ないと思います。ランド、頭痛や吐き気とか何か調子が悪いと思うことってありますか?」
「…特に無い。そういえば、夜中目が痛かったな…。」
「う~ん、何が起こったのかわかりませんが、体調も悪くないみたいですし、一先ず様子見ですね。一応あらゆる種類の薬を作っておきます。エリシアー、これから大量に薬作りますから空間を開いてください。」
それからシオンは薬作りに励んだ。
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ランド
スキル
『???』new !