ソラリスとラヴァの関係
「…ん?」
「おはようございます、先輩。」
「ラヴァ!」
今にも掴みかかりそうな勢いだが、拘束されているため動けない。
「今の貴女は愛の女神に相応しくない!」
「…そうですね。」
「貴女が今拘束している我が子に愛情を注ぎたいと思っている天使の方がよっぽど相応しいわよ!」
「…!」
その言葉はラヴァの心に深く刻まれた。
「ラヴァ様、そろそろ…。」
ミュウが二人の女神の会話に入って大丈夫なのかソワソワしながら割って入ってきた。ラヴァはミュウのその一言で何が言いたいのかわかった。
「…もうなの?」
「はい…。」
「少し予定が狂ったけど…、仕方ない!」
「どこ行くつもりよ!?」
ルナはラヴァが何をそんなに焦っているのか聞いていない。その説明を求めるように叫んだ。
「これから私はソラリスと戦います。」
「なっ!?勝てるわけないでしょ!」
神には階級が四つ存在する。下級、中級、上級、超級である。ラヴァは上級でソラリスは超級、一見一つしか差がないように感じるが上級と超級では大きな壁がある。万に一つ勝てれば良いぐらいだ。
「そうですね、下手をすると死ぬかもしれません。」
「だったら…どうして?そういえば、ソラリスの監視役に進んでなってたわよね…。」
ソラリスとやりあえる神は数えるほどしかいない。そのため、監視だけといえどほとんどの神はやりたがらない。そんななか、ラヴァは自分から名乗りあげていた。
「だから、こんな強引な方法で…力を…。」
「それが、私の役割だから…。それじゃ、ミュウ。先輩を監視しててね。」
「…生きて帰ってきてください。」
「待ちなさい!くっ!ほどけない!」
ラヴァはそのまま目的地に向かった。
神には生まれ方が三つある。一つは夫婦との間に生まれること。二つ目はシンが新に創造すること。三つ目は神界という力に満ちた世界で何かが作用して突然生まれること。
ラヴァは精霊姫の死後三日後に三つ目の方法で生まれたのだが、この方法で生まれた神は親がおらず、シンが管理するわけでもない。そのため、神々はどう扱ったらわからず戸惑ってしまう。そこで、ラヴァはソラリスに拾われた。
ラヴァは生まれつき見た目年齢は五歳で物心もついていた。そして、ラヴァにとってソラリスは年の離れたお兄さんの認識だった。
ソラリスもまたラヴァを妹のように可愛がった。
『お前は小さな頃の妹に似ているな。』
その一言でラヴァは自分を妹と重ねていることに気づいた。当の妹はどんな方なのだろう?ラヴァは疑問に思っていた。
度々ソラリスはラヴァの前から姿を消していた。妹に会いに行っているのだろうと思ったが、そもそも何故一緒にいないのかわからなかった。
ある日、ラヴァはソラリスの後をつけた。一度会ってみたかったのだ。しかし、ラヴァはとんでもないものを見た。
『ああ、やっと二人の間で子供ができたのね。名前は?』
ソラリスの妹らしき神が誰もいない方向で何か言っていた。
『頼むから、目を覚ましてくれ!なあ!』
ソラリスが妹の肩を揺する。が、強力な魔法で吹き飛ばされ、左腕が千切れる。
『ぐあ!』
『ソラリス!』
金髪ロングの大人の女神がソラリスの腕を治す。ソラリスから話を聞いていたため、すぐに神のトップであるシンだとわかった。
ソラリスは妹に殺意の籠った魔法を放たれる度に心が傷つき瞳も濁っていった。
ラヴァはそんなソラリスの心を癒してあげたい。そう思っていた。
しかし、ある日を境に急にソラリスはラヴァの前に姿を見せなくなった。なんでも、あの世を制圧したらしい。
慌ててあの世に向かうも、その時にはシンがソラリスを追い払った後だった。そして、シンから今のソラリスの状態を聞いた。
それから、ラヴァは杖の修業に励んだ。例え自分が汚れようとも死のうとも、ソラリスを正しい道に戻すために。
(…夢?こんなときに寝るなんて疲れてるかしら?)
その頃、ラヴァはある場所で待機していた。ソラリスは地上を滅茶苦茶にするために何か工作をしており、今ラヴァがいる場所はソラリスが必ず通る場所である。
(…!来た!)
ラヴァはゆっくり杖を構えた。