天使
アリスの魂はこの世で漂っていた。二人の我が子のことが気になり、なかなかあの世に行こうとしなかった。そんななか、
「ゲーーット!」
一人の天使がアリスの魂を回収した。
「う、ううん?」
アリスは気がつくと天使になっていた。
「あれ?私って死んで…、えっ!?翼生えてる!何これ!?」
「落ち着いて。」
一人の天使がアリスを宥める。
「えーと、失礼ですが貴方は天使ですか?」
「ええ、そうよ。私の名前はリン。こっちはミュウ。今の状況を説明するとね、彼女が貴女の魂を見つけてラヴァ様が力を与えて貴女を天使した。ってところよ。わかる?」
「ラヴァ様?」
「愛の女神様なんだよ!すごいんだから!」
「は、はあ…。」
そもそも、アリスに天使になったという実感がない。そのせいか二人を天使だと俄に信じられなかった。リンはその表情を読みとってこう言った。
「まあ、信じなくてもいいわよ。それより、ラヴァ様のところに行きなさい。貴女を連れてくるように言われているから。」
リンはラヴァのもとへと案内した。
髪はピンクのポニーテール、白い衣に片手には杖。顔はどこか清純そうな印象を受ける女性。彼女がラヴァである。
「初めまして、愛の女神ラヴァよ。」
「は、初めまして!歴史ハンターのアリスです!」
アリスは彼女から圧倒的な存在感を感じ、声が上ずってしまった。そして、ようやくアリスは天使になったと自覚し始めた。
「緊張しなくてもいいのよ。私が貴女を天使にしたのはね、お願いがあるからなの。貴女って二人の子供がいるでしょ?」
「は、はい。」
「その二人の子供を守護してほしいの。」
「えっ?」
アリスは、天使は人々を守護する者だと知っていた。何の用件かは知らなかったが、その条件をのむ代わりに私の子供を守護させてください、もしくは守ってくれませんかとお願いするつもりだったアリスにとって非常に都合のいいことだった。
「ただし、姿を見せちゃダメよ?あくまで陰から守るのよ。」
アリスは堂々と姿を現して守護するのは混乱の種にしかならないのは何となく想像がついた。
「は、はい!しかし、何故それを頼むのですか?」
アリスは言外に言わなくてもしますよ?と言う。
「そうね。二人の前世って知ってる?」
「前世…ですか?」
アリスは前世云々の諸説は耳にしていたが、信じていなかった。
「息子の方は神、娘の方は精霊姫なのよ。」
「えっ?えええーーー!!」
アリスは思わず卒倒しそうになった。精霊姫といえば、世の中を大きく変えた者として有名である。そして、息子の前世が神と言われれば当然の反応である。
しばらくして落ち着いてから、どのように守護をするのか簡単に打ち合わせをしてアリスは地上に降りた。
「…半分嘘をついてごめんなさい。」
ラヴァは聞こえないと知りつつもそっとアリスに謝った。