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最強の魔法剣士の弟子たち  作者: アクト
第14章 ミラ
181/220

二つの杖剣

「…魂を回収してどうするんですか?」

「前世の貴方の体に入れる。厳密には前世の貴方を再現した体に…かな?」

シンが造ったのかな?とシオンは思ったが、殺してでもというのはシンらしくなかった。

(前伯父さんですか…。)

「まだ死にたくないです…。そもそも、そんなことをして何の得があるんですか?」

シオンがそう言うとミラはギリッと歯軋りをたて、少し落ち着いてから口を開いた。

「得なんて無いわ…。ただ以前の関係に戻れるだけよ。以前の貴方は私に対して何の遠慮もなく素で話してくれたのに、今では敬語で距離を感じるわ。それに…、貴方が人でいることに耐えられない!」

その瞬間、シオンはミラの姿を見失った。

「くっ!」

直感的に後ろに下がった方がいいと感じ、咄嗟に後ろにジャンプする。

ドゴンッ!

その直後、シオンがさっきまでいたところの土が抉れた。

「じっとしてて…。苦しませたくないから…。」

シオンは二つの杖剣を引き抜く。シオンには逃げの選択肢は無い。地力が違いすぎる。逃げようと後ろを見せた瞬間、殺されるのは目に見えていた。かといって戦って勝てるとは思っていない。だが、逃げるより生き延びられる可能性は高いとシオンは考えた。

「はあ!」

再びミラの昆がシオンを襲う。シオンには彼女の動きは見えてはいないが、彼女の動きのパターンは前世の記憶が覚えている。そのため、辛うじて避けられている。だが、昆が振られる度に起こる突風に何度も吹き飛ばされていた。

(ぐっ!アレンだったら気にしないレベルの突風なのに…!これが人と神の差…ですか…。)

「『スピリッツⅣ』!」

杖剣以外の装備と髪が黒く染まり、翼を生やす。

「ああ、貴方の心が流れてくる…。なんて暖かくそれでいて鋭い感情なのかしら…。」

シオンは『スピリッツ』を使うと彼女も強化されるのはわかっていたが、少しでも差を縮めるには仕方なかった。シオンの強化と彼女の強化の度合いではシオンの方が僅かに上だからだ。

(少しでも動きが見えれば…!)

しかし、たまに彼女の残像が見えるようになっただけだった。

「そー…れ!」

戦いに相応しくない声音ながら、当たると塵一つ残らない一撃が放たれる。ずっと動きが見えていなかったため、遂にかすってしまった。そして、彼女にとってそれだけで充分だった。急にシオンの動きが悪くなった。

(あ、ぐっ。足が…、すくんで…、動きが…。それに何故か…、理由もないのに恐い…。とにかく恐い…。震えが…止まらない…。あの昆のせいですか…。)

シオンの推測は正しかった。ミラの昆の能力は感情を植え付けること。今回の場合はミラに対する恐怖。それも、直撃だろうとかすっただけであろうと植え付けられる感情の大きさは自由だった。しかも、扱いは心の上書きであって状態異常ではない。そのため、さっきから治癒魔法をかけているのに治せなかった。

「…いつの間にか当たって…いや、かすっていたのね。昆に魔力を流しておいてよかったわ。贅沢を言うなら、もっと魔力を込めれば片がついたのに…。もう一度当たると発狂するかも…ね!」

シオンが頑張って立ち上がろうとしている間にミラが攻撃する。

(チェンジ!)

シーナが強引に人格を切り替え、間一髪かわす。

「聞いてはいたけど、本当に二重人格なのね。ある意味振り出しに戻っちゃったわね。」

(シオンの状態が心配だけど…、シオン!やるわよ!)

(は、はい。)

((『融合(フュージョン)』!『ジェネレーション』!))

シーナから憎悪が抜けた以上、善悪が混ざることで起こる頭痛は起きない。

「これが…。フフ、懐かしいわね。昔はこうやって何度も対決したこともあったっけ…。でも、今回は命を奪いにいってるから少し違うか…。」

どこか悲しげに言う。

その間に未来を見る。が、

(守りに徹してどうやっても五分ではケリがつかない!シン様が喋ったのかなあ。仕方ない!五分とは言わず、もっと先まで見る!)

しかし、それは途中で途切れた。

(どういうことだ?あの先からどうなるんだ?まあいい。やれるところまでやってやる!)

アレンの姿の間なら彼女の動きを捉えられる。

「『全魔放出(オーバー・ドライブ)』!」

全ての魔力を込めて放つ。ミラは昆で防ぐ。

「くっ!うっ!ま、まだまだ…、キャア!」

防ぎきれず吹き飛ばれる。

「『魔力補充(リロード)』。」

『魔力補充』とは、始まりの杖剣で魔力を作り(・・)、体に取り込む魔法。ミラが体勢を立て直し、魔法を放とうとする。

「『魔法破壊(ブレイク・マジック)』!」

『魔法破壊』とは名の通り終わりの杖剣で魔法を破壊する魔法。ミラの魔法が発動する前に砕け散った。

「くっ!」

このままでは勝ち目はないと判断したミラは距離を保つ。どう見ても、『ジェネレーション』の効力が切れるのを待っている。

「『魔力集合(マテリアル)』。」

始まりの杖剣をくるくると回転させ、空気中に漂っている魔力を集める。

魔力は魔法を使う際に必要以上に魔力を込めてしまった場合、その分、空気中に混ざってしまう。それを今集めている。

(時間切れギリギリまで集める。人格が壊れないように一秒余裕をもって…。)

一秒といってもアレンにとって体感一分ではあるが。

魔力が集まり、終わりの杖剣の先に圧縮する。終わりの杖剣で魔法を放つ際に普通に魔法を使うときよりも威力が百倍などというふざけた能力だが、それに頼る。

(あいつ、死なないよな?うん、死なない。)

一応、もう一度未来を見て確認する。終わりの杖剣の先には魔力が集まりすぎて、水色だった魔力が濃くなり黒くなっている。しかも、心なしか空間も少し歪んでいる。

(そして…!)

自身の魔力も込める。

「『破滅閃光(ルインド・ルーメン)』!」

空間をも歪ませる黒い閃光が放たれた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

シオン

ジェネレーション技

『破滅閃光』new !



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