働け!
アレンはシンからもらった二つの杖剣に名前をつけた。銀色を始まりの杖剣、黒色を終わりの杖剣である。二つの杖剣は、名前をつけてもらったことを喜んでいるような仕草を見せていた。
そんななか、時期感情の神がまた現れた。
「決闘よ!」
「へっ?」
そして、時期感情の神は精霊姫に指を指していきなりそう言った。
(元々何考えているのかわからないやつだったが、最近もっとわからなくなってきたぞ…。)
アレンは頭痛を感じ、手を額に当てた。時期感情の神は精霊姫に何か言うと一瞬顔が真っ青になり、急にやる気になった。
「受けてたつわ!」
「急にどうした!?」
アレンと同じく困惑していたはずなのに、態度の変化に驚く。
「ちなみに貴女が負けた時はどうなるのかしら?」
精霊姫の声が若干震えている。
(何をそんなに動揺しているんだ?内容気になるなあ。自分が負けた時のことを聞かないということは、さっき耳打ちしたのがそうなのか?)
「今回は帰るわ。」
「そう…、帰るのね。えっ!?今回!?何それ!?せめて、もうそんな目的で顔を出しに来ないで!」
「いくわよ!」
「話を聞いて~!」
結局、時期感情の神は精霊姫をスルーした。そして、審判はアレンがすることになった。
「え~と、ルールは相手を降参させるか、気絶させれば勝ちだよ。」
「ふふん、…絶対勝つ!」
「…驚くほど私にメリットが無いんだけど。でも、負けられない!」
(あいつは、母様より百枚も下手だ。そもそも、能力だって戦闘向きじゃない。それに、地上にいるから力も落ちてる。少なくとも、互角か精霊姫の方が有利のはず…。)
アレンは、冷静に結果を予想していた。
「それでは、開始!」
「「はあ!」」
精霊姫の剣と時期感情の神の昆がぶつかる。
「ていっ!」
時期感情の神が光の弾を放つ。その光が当たる。
「…?」
特に痛みも感じなかったため、精霊姫は困惑していた。が、
「~~~!!」
急に精霊姫の動きが単調になった。時期感情の神に対する怒りを増幅されたせいだ。
(よし!順調、順調♪)
しかし、これは予想していなかった。
「毎晩!毎晩!いい加減にして!何度、アレンの部屋に忍び込めば気が済むの!おまけにアレンの私服を盗んでは匂いを嗅いだり、自分で着て匂いを付けたり!嗅ぐのはもう妥協するけど、貴女の匂いを取るの大変なのよ!」
「えっ!?ちょっ!?止めて!言わないで!評価が!評価が落ちる!」
精霊姫に見つかっては、言わないで!と頼んでいたことを次々とカミングアウトされていく。
(あ、い、つ、は~~~!!そんなことやってたのか!嫌がらせか!)
「さらに…、」
「はい!」
もう一度、光の弾をぶつける。これ以上暴露されないように、怒りから嫉妬に変えたつもりだった。だが、
「…。あっ、何だか落ち着いたわ。」
「あ、あれ?」
精霊姫は元に戻っただけだった。時期感情の神の魔法は、感情を倍増させるもの。それが何も起きないということは、
(…もしかして、私に対して嫉妬は全く湧いていないの?)
0を何倍しても0である。精霊姫のなかで自分は恋のライバルと認識されていない。精霊姫は、女性として自分を全て上回っている。貴女より良いものばかり持っている。だから何も嫉妬は湧かない。そう思っていることを証明された。
「死ね~~~!!」
「ふぇっ!?」
今度は、時期感情の神の動きが単調になった。その隙を逃さず、背後をとり、
「『電撃刃』!」
電気を帯びた剣を当て、気絶させた。
「ま、負けたの?」
「そうよ?だから、帰って…。そういえば、何で急に怒りだしたの?」
「だって…、」
時期感情の神は精霊姫に話した。
「いやいやいや!そこまで、酷い解釈しなくても!」
「ひぐっ!えぐっ!ぐすっ!」
「な、泣かないで!?何だか私が悪者みたいじゃない!」
「…後は任せた。」
アレンは用事を思い出し、出掛けた。決して面倒になったからではない。
「ちょっと~!?」
アレンはあの世に、閻魔に用があった。
「おお、ひさし…」
「働け~!」
アレンが魔法を放ち、閻魔は間一髪で避ける。アレンは小さい頃からの付き合いで閻魔とは親友である。この時代の閻魔は巨人ではなく、二メートルを超えた程度であり、閻魔の喋り方は元々、爺口調である。
「いきなり何するんじゃ!?それに、働いておるわ!何故急にそんな話になったんじゃ!?」
「仲間の中にハーフの子を身籠ったんだが、病弱に虚弱ってどういうことだ!」
「ハーフ!?うっ、すまん…。その辺のシステムを弄っておらなんだわ。後で直しておく。今まで例が無かったから、そのままで良いと思っておったわ。」
「まったく…、頼むよ?その子は病弱だけでも治してあるから、マシなんだが。これからハーフが増えるから早めに直せ。一々治していたら、キリがない。」
そして、アレンは地上に帰った。
翌日、アレンのところに人間の最大の国の王から書状が届いた。