勝負!
魔族の村や国づくりに励んでいるところに、アレンはシンに手紙で呼び出された。渡したい物があるらしい。翌日、アレンは精霊姫と連れて神界に戻った。
アレンはシンに簡単な挨拶を済ませ、確認したいことを小声で聞いた。
(あの…、シン様。母様は今…)
(未だに『お祖母ちゃんは嫌…、お祖母ちゃんは嫌。』って動物の鳴き声みたいに呟いてるわよ。)
ここでアレンは小声で話すのをやめた。
「渡したい物があるそうですが、何ですか?」
「ほら!貴方って、後数年で神を名乗れるようになるでしょう?しかも、ここ数年で成果も残してきているし、前祝いにプレゼントしようと思ってね。」
何かの合図を送ると柄の部分が杖の形をした銀色の剣が飛んで来た。
「…何ですか?これ?」
「…後ついでにこれも。」
黒バージョンも飛んで来る。
「貴方の新しい相棒よ。受け取りなさい。」
「これ、凄い力が籠ってません?精霊みたいに意思を持ってますよ。」
「あはは…、実はね。」
数日前
(ついに魔族もつくったか。ここ最近戦争も減ってきたし、何か褒美をあげないと…。そうよ!武器よ!武器を渡そう!)
神にとって武器は自分の力を発揮させてくれる最高のパートナーであり、自身の象徴でもある。アレンにはそれがなく、そろそろ渡しても良いと考え始めていた。
(でも何がいいのかしら?槍?斧?剣?杖?弓は女神限定だし…。ソラリスに聞いてみましょうか…。)
「武器か…。甥は基本何でも使いこなすが、使う頻度が高いのは剣と杖だな。」
「どっちが一番?」
「同じだ。あいつは俺とオルティのような神になりたいと思ってるから交互に使うんだ。」
ちなみにソラリスが剣、オルティが杖である。
「む~~~!だったら!」
シンは創造で武器をつくった。
「…変な武器だな。杖なのやら剣なのやらわからんぞ?」
「両方よ!後は魔力を込めて出来上がりね。」
「シン。」
「様!何よ?」
「もう一本作ってくれ。それには俺の魔力を込める。俺も何か渡してやりたいと思っていたんだ。」
「はいはい…。二本も使えるかしら?」
「寧ろあいつはいつも二本使っているから問題ない。」
「そうなの?あっ、そうよ!賭けをしましょ!どっちが多くの魔力を込められるか。」
「おい…。プレゼントだろ?」
「どうせなら、立派な物を渡したいじゃない。競った方が良いのが作れるわよ、きっと。」
「そういうことか。内容は?」
「勝った方が一つだけ命令できる。どう?」
「いいだろう。」
ちなみにソラリスは呼び捨てでも文句を言わない、シンはデートに付き合うと命令するつもりだった。
「「はあ!!」」
二人が魔力を込める。すると、どちらも色が変わり、シンの方が銀、ソラリスの方が黒になった。
後に二人は気がついた。賭けは成立しないと。破壊と創造の魔力では系統が違い過ぎると。
現在に至る。
「まあ、精霊が武器になったみたいな物ね。それ。」
(二人ともくだらないことしてるなあ。)
アレンはこっそり、失礼なことを考えていた。