またね
「何やっても吐かないわね…。」
クリスが途方にくれていた。指をへし折ろうと、蹴り飛ばそうと全く口を開かない。
(やりたくありませんが…、)
「これしかないですね。」
そう言って取り出すのは、喋り薬(シオン命名)。この薬を嗅ぐと、何でもいいから喋らずにはいられなくなる。それに、シオンには『真実の眼』という異能があって嘘をついてもわかる。シオンの唯一のスキルである。
「使いますよ?皆吸わないで下さいね。」
効果は、すぐに出た。
「アジトは、どこですか?」
「アジトなんて無い、ここから少し離れたところにある廃墟、ここから東に行ったところにある洞窟、…」
「嘘、嘘、本当。洞窟ですか。それでは姉さん、クリス。明日早朝お願いします。この人達は、僕が警備員に引き渡してきます。」
こうして、ようやく寝ることができた。
早朝
「あいつらからの連絡が途絶えたか…。」
「ここがバレるんじゃ…。」
「大丈夫だ。ここを喋ることはないだろう。喋るくらいなら死を選ぶ奴等だ。それより任務を終わらせた後、どうやってあいつらを奪還するか考えないとな。」
「本当、喋らせるのに苦労したわ。」
クリスの一言に、『闇夜の影』から動揺がはしる。
「誰だ!」
「初めまして、魔王にコテナを案内しているギルドのものです。」
「お前らか!あいつらを捕らえたのは!」
「そうよ、でも今はどうでもいい。大人しく捕まってもらうわよ。いくわよ、フィオナ。」
「…私、夜中に戦ったばかりなんだけど。」
そう言いながら、一人の男の剣をかわす。
「『骨砕き』!」
この技は、相手の骨を砕き戦闘不能にするもの。しかし、それだけではない。相手は盾で防ぐが、
「ぐあ!」
振動が骨に伝わり、結局骨が折れた。
「『撹乱弾』!」
これは精霊魔法で、精霊に魔力を渡し、様々な方向から魔力の弾を放ってもらう。
「ぐう!」
「ぐえ!」
「く、くそ!」
「終わりよ!『流星』!」
『流星』は、右腕、左腕、右足、左足、首と5連続攻撃する技。その技が『闇夜の影』のリーダーに決まった。
そして、『闇夜の影』との戦いに幕を閉じた。
最終日
「私達の国は、どうでしたか?」
「ああ、コテナは本当に良い国だと思う。それに参考になるところもあった。」
「参考?」
「私の国も、魔族と一括りではあるが一人一人違いがある。鬼は魔法は使えないが山を動かす力がある、悪魔は質の悪い悪戯をするのが生き甲斐になっているとかね。そういった価値観や体質の違いによって小さな争いが起こることもある。」
(魔族という括りでも色々あるんだな。)
(なるほど、確かにその中でもコテナは比較的安定していると言えるかも。)
「また、来ていただけますか?」
「もちろん。」
リオの護衛達は、何も言わない。でも、種族とか関係なく楽しそうに話している魔族を見ている。コテナが良いところだと思っているみたいだった。
「またね。」
そう言ってリオは、魔王城へと帰っていった。