ソラリスの計画
オルティはショックを受けていた。一番の理由は、息子を取られたこと。もう一つは、
(二人の間で子どもが産まれたら…。お祖母ちゃんは、いやあ…。)
しかし、ショックばかり受けているわけではない。心の奥底では、息子を愛してくれる者がいること、家族が増えることを喜んでいた。
一人黄昏ていると兄のソラリスが帰ってきた。
「帰ったぞ。いやあ、あの邪神結構てこずっ…、どうした?まるで老婆のようだぞ?」
ソラリスの仕事はシンの手伝いと邪神退治である。神は強大な力を持って産まれるが、それ故に精神が不安定になり、暴れてしまうケースがある。そうなると、助ける術がなく、殺すしか無くなる。それを行うのがソラリスである。
今一番気にしていることを言われ、オルティの力が漏れ、神界が震えあがる。
「おい?どうした?」
「死ねー!!」
オルティの蹴りが炸裂する。十キロ程飛ばされるが、すぐに帰ってきた。
「いたたっ…。どうしたんだよ?」
「ううっ…。」
オルティは、心のなかで溜めていたものを吐き出す感覚で、ソラリスに話した。
「別にいいじゃないか。俺なんて既に伯父さんだぞ?」
「今の兄と同じレベルなんていやあ…。」
「失礼だろ!?そうだ、甥に話があるんだが、どこにいるんだ?」
「…シン様のところにいるわ。何の話なの?」
「それは、内緒だ。」
ソラリスはアレンのもとへと向かった。
「伯父さん?話って何ですか?」
「近頃、種族を統合させているだってな?そんなお前に良いものを見せようと思ってな。」
今、ソラリスと一対一だ。ソラリスはとある場所に案内した。後に魔界となるところである。
「最近、魔物という新種族を造っているんだ。」
そこには、ゴブリンやスケルトンがウロウロしていた。
「本気ですか!?」
アレンには理解できなかった。ただでさえ、種族問題に振り回されているのに、何故増やすというのか…。
「ああ、勘違いするな。この種族は謂わば平和のためだ。」
「はあ…。」
アレンにはいまいちピンとこなかった。
「コイツらの立ち位置は全ての種族の敵だ。今は種族間で争いが起こっているが、全ての種族の脅威となり得るコイツらが地上にいると手を取り合って退治しようとするだろう。そして、種族を気にすることが無くなったところで、コイツらを回収する。名案だろ?」
「なるほど…。でも、私の計画が破綻し、シン様に許可をもらってからにしていただいてもいいですか?」
「そのつもりだ。俺が言いたかったのは、失敗しても続きは引き受けると言いたかったんだ。」
「ありがとうございます。」
数十分ほどアレンは魔物を観察し、それから去っていった。しかし、後にこの魔物を地上に降ろす理由が変わり、降ろし方も非道なものになるとはこの時誰も思わなかった。