油断
二人が解放された頃、今度は精霊姫とオルティが言い争いをしていた。
「だーかーら、息子は誤って告白したって言ってるでしょ?」
「告白なんて、どっちでもいいんです!私は一生アレンの隣にいたいんです!」
誤解は解けたようだが、精霊姫のなかではアレンをどうしても伴侶にしたいらしい。それを聞いていたアレンは顔が赤くなる。
(は、恥ずかしい!)
結婚したらどうなるのだろうと考えていると精霊姫の裸を思い出してしまった。
(はう…。)
その様子を見ていたシンが楽しそうに言った。
「アレンは満更でも無いみたいよ?」
「むっ!…くっ!」
オルティはそんなことない!と言いたかったが、アレンの様子を見て言葉に詰まった。
「私は認めないわよ!」
「だったらどうしたら認めてもらえますか!」
「弱いやつは絶対認めない!…そうだ。だったら試合をしましょう。ルールは簡単。二時間以内に私に攻撃らしい攻撃を当てたら貴女の勝ち。二時間経過、もしくは貴女が気絶したら私の勝ち。これでどう?」
能力が制限されているとはいえ、オルティは神だ。気を抜きさえしなければ、精霊の頂点程度どうにでもなると考えたのだ。二時間というのは誤魔化しで、開始数分で終わらせるつもりだった。
「…いいわよ。」
実力の違いを知らない精霊姫はその条件を呑んだ。
「じゃあ審判は私、シンが務めまーす。」
「…楽しそうですね。」
「それでは、試合…開始!」
「ヴォルト!精霊剣!」
(…あれ?あの精霊どこから出た?)
精霊姫の剣が雷を型どった形に変わる。当てさえすれば勝ち。誘電を利用し、防げない攻撃をするつもりだったが…
スパパパパパン!
光よりも速い手刀が精霊姫の首に五百回決まる。精霊姫はそのまま崩れ落ちた。オルティは背を向ける。
「あーあ、終わちゃった。勝者…、」
しかし、そこで精霊姫は立ち上がった。
「絶対…結ばれる…んだから!」
(うわ!すっごい執念ね。)
「はあ!」
精霊姫は雷の斬撃を飛ばす。
「…えっ?」
完全に油断していたオルティに直撃する。
「くっ!まだまだ!」
まだ続けそうなオルティをシンは止める。
「勝者、精霊姫。」
非情にも告げられる。オルティの敗けだと。
「えっ?」
「えっ?じゃないわよ?当てられたら敗け…なんでしょ?」
オルティは自分の言葉を思い出し、しばらく放心状態になった。意識が戻った頃、オルティの悲鳴が響き渡った。