御用
「さて、…何かいうことは?」
青筋を浮かべ、笑顔のオルティがアレンとシンに詰問していた。二人は千を下らない数の『縛』で縛られ、団子状態になっている。そんな二人を見て、精霊姫はオロオロしている。
((誰か…助けて…。))
時は少し遡る。
三時間前
アレンと精霊姫がもう少しで森を抜けようとしているところでアレンはとんでもないものを見た。
「し、シン様!?」
「や、やあ…。」
シンがいた。『縛』で縛られ、力が漏れないように五十枚重ねの結界に閉じ込められた状態で…。おまけに木に吊るされている。
(あっ、ひょっとして…。)
アレンは全てを理解した。母親にバレたと…。
「ウフフ、フフフフフ…。」
声に気づいたときにはオルティはアレンの背中にもたれていた。アレンは慌てて距離をとる。
「やっと、やっと見つけたわよ!」
「さらば!」
必死の逃亡も虚しく一分弱で捕まった。
「まったく!手間取らせないで!」
「きゅう…。」
「ね、ねぇアレン。この人は…?」
「は、母親…、で…す。き、きつい!ギチギチいってる!」
「アレン?地上にいる間の名前?まあいいわ。で、この子は?」
「仲…」
「妻です!」
その一言にオルティは動揺する。
「へ、へぇ…、嫁…なの?見た目は人間、気配は精霊…ね。精霊姫かしら?とりあえず立ち話もなんだし、神界に案内するわよ。その前に、ケダモノになってる息子に罰を与えないと…。」
オルティの瞳から光が消える。アレンに『縛』が追加される。
「首!首が!首が絞まってる!母様!ストップ!誤解ですから!だから、せめて追加した『縛』だけでも解いてください!せ、精霊姫!助けて!」
(神界?アレンって神なの!?)
精霊姫は別のことに意識がいき、オルティはアレンの必死の説得を無視して、全員を神界に連れて行った。
現在に至る。アレンは旅の理由以外の全てを話した。精霊姫については半分信じてもらえなかったが。
「で、この計画やろうと思った理由は?」
「ひ、」
「秘密と答えれば、命が無いとわかってるわね…?」
「独り立ちできるようにと思いまして…。」
「…かわすわね。話したくないなら良いわ。…話したくなったら、言ってね?」
この後、二時間にわたり二人に説教が続いた。