出会い
翌日アレンは無事犬耳族のギルドマスターになった。この国の住人もヴェイの存在には困っていたようでギルドマスターの座から降ろしたことを感謝していた。
アレンの計画はまず獣族を作ることなのだが、思いの外上手く進んだ。この国の王もアレンの中にある獣族対象の種族の王も、戦争にはもう疲れていたようで、比較的簡単に和平が結ばれていき、半年後には獣族が出来上がった。もちろん、何事もなかったわけではない。当然反対の者もおり、その者達から守るために、和平を結ぶために馬車で移動している他国の王を度々護衛することになり、襲撃を返り討ちしていた。
無事計画の一部は終わり、アレンはギルドマスターの座から姿を消した。それから一ヶ月の間国中が大騒ぎになったとはアレンは夢にも思わなかった。後に獣族の間で英雄として名が残ることになった。
(よーし!次はえ~と…、吸血鬼とかは…、そう!魔族!魔族を作るぞ!ということで『変身』。)
今度は吸血鬼に変身する。向かうのは現在最も力があると言われている九尾が王の国に向かうことにした。
何故九尾を獣族に該当させていないかというと、能力も寿命も桁違いだからである。
現在アレンは森を抜けている最中だ。そこで女性が襲われているのが見えた。相手は鬼三人。
(はあ、面倒な…。『眠霧』。)
鬼三人の顔のまわりにだけ睡眠効果のある霧を漂わせ、眠ったのを確認して女性を保護する。女性が何か言っているが、近くの洞窟に避難させるまで無視した。
(…失敗したなあ。)
アレンは目に手を当てて溜め息を吐く。何故なら、
「ひどいわ…。あれだけ待って、って言ったのに。」
女性が涙ながらに言う。その女性は裸だった。今はマントを渡している。
(裸のまま連れ出すとか、俺は変態か?もっと早く気づけ!)
アレンは自分を責めていた。
「悪かった…。慌てすぎて気づかなかったんだ。すまない。」
「うう。」
「…で?何で襲われていたの?」
「私は…」
「…?」
「私は精霊姫…。精霊の長だから…。」
この時代、精霊の力は神秘的なものとされており、その力を手に入れるためによく研究されていた。ただし、たくさんの精霊が犠牲になっている。
ちなみに精霊は魔法が使える。精霊は元々神の力の残留でできたものとされているからだ。しかし、
(…人間にしか見えない…。)
サイズが違った。本来は手のひらサイズのはずだが、目の前にいるのは成人女性にしか見えなかった。
「貴方も…、私を…!」
精霊姫が敵意を向ける。
「心配しなくても、興味ないから…。はあ…、面倒だが、家まで送ろうか?」
「…。」
じーとアレンを見ている。
「…何?」
「興味ないの?」
「ないぞ。これっぽっちも。」
「バ…」
「バ?」
「バカーーー!!」
魔力が集まり始め、どんどん圧縮されていく。
「なんでだよ!」
そして、森が消し飛んだ。