オルティの願い
「いつつ…。はあ、ここまでやられたら合格と言わざるおえないわね…。」
創造神は右肩に刺さった終わりの杖剣を引き抜き、傷を治しながらそう言った(フィオナの剣は刺さるに至らなかった。)。その言葉と同時にシオンの『ジェネレーション』と『人格融合』が解け、バランスを崩し倒れそうになったシオンをフィオナが支える。
「あらら、安心して倒れちゃった?」
「シオン!大丈夫!?」
「…わからないわ。」
エリシアがシオンの元へ駆け寄る。シオンの声がシーナになったり、未知の能力を使ったりで相当無理をしたのではと心配した。
「ああ、大丈夫よ。特に変な作用はないから。エリシア、皆を連れて帰っていいわよ。」
「…!ありがとうございます!」
エリシアが指を鳴らし帰ろうとするが創造神が止める。
「えっ?」
「ちょっと待ってね…。」
エリシアの手を握り、何かを念じた。
「これでよし!じゃあ私が帰してあげる。」
創造神が指を鳴らし、五人を帰した。
「オルティ?いるんでしょ?」
「…はい。」
創造神が振り返るとオルティが立っていた。
「ふふ、本当に親バカね。私が力加減を誤ってシオンとフィオナを殺してしまわないように陰からずっと見てたものね。」
「気づいていらっしゃいましたか…。」
そう言いながら全く驚いていなかった。
「シン様、一つ質問してもよろしいでしょうか?」
「あら、何かしら?」
「エリシアが死んでも力は削がれないでしょう?何故そんな嘘を?」
オルティは知っていた。エリシアを造り、魂の欠片をエリシアの体に入れた際に落ちた分の力はもう戻っていることを。シオンも力が削がれるという答えに首を傾げていたのだ。
「も、黙秘しましゅ!します!」
創造神ことシンは噛み噛みで答えた。良く見ると顔が真っ赤だった。
「そ、それよりも今までと同じように神々は人を陰から助けることに決定したから。」
「わかりました。」
「…意外ね。不満はないの?」
「ありません。もう人と関わりたくないというのが本音ですが、反発するつもりはありません。ただ一つお願いが…」
「何?」
「シオンとフィオナが人生を全うした際にアレンと精霊姫の体を造っていただけませんか?」
「…いいわ。その代わり仕事手伝ってよ。あっ、そうだ。貴方の兄を説得してくれない?」
「またですか?私が人と関わりたくないという気持ちを突かれると説得は成功しません。全知で確認済みです。」
「私の決定を伝えるだけでもいいから。貴方の能力の制限を一時的に解くわね。」
制限を解いた後、オルティは瞬間移動でソラリスの元へと向かった。
「何故…か。」
シンはオルティの質問を思い出していた。何故嘘をついたのかというものだ。
(命を懸けて守ってくれる仲間がいるエリシアに嫉妬していたからなんて言えないわよね…。)
そう思いながら溜め息を吐いた。