フィオナの癖
シオンにはフィオナに直してほしい癖がある。それは、
ギュッ
(…あつい。)
いつも寝るときにいつの間にかベッドに潜り込み、抱き枕にしてくることだ。
(これ、絶対見られたら勘違いされてしまいます。)
自分の部屋まで運べばいいのでは?と思うかもしれないが、それはできない。理由はマリアと旅に出始めた頃に遡る。
野宿している頃
ギュッ
「ふぇ!?」
「どうしたの?ってあら!仲が良いわね。」
「…zzz」
この頃シオンは全くフィオナを姉と認識できていないので、尚更落ち着くことができず手を振りほどこうとする。しかし、フィオナが急に叫んだ。
「いや!おいていかないで!行かないで、シオン!私は…」
「えっ!」
シオンが慌てて元の位置に戻る。よく見ると、フィオナの目から涙が出ている。シオンが抱き枕に徹したことで、フィオナが落ち着く。
「…ああ、なるほどね。元々ではなさそうね。」
シオンはフィオナの記憶が無くなっているため覚えていないが、以前はこんなことはなかった。
(きっと、抱き枕にすることでシオンの存在を実感して寝ることができるのね。)
シオンの自殺未遂を思い出す。その事をフィオナは気に病んでいる。そのため、こういう状態になっているのだ。
「シオン、これからも抱き枕になってあげて。フィオナのために。」
「うう、はい…。」
シオンは、弱々しく頷いた。
(もう心の傷治ってるんじゃ…。)
けれど絶対の自信が無く、また叫ばれると困るので今夜も結局抱き枕に徹した。