案内開始
〈一週間後〉
「久しぶりね、エリシア。」
「お久しぶりです、リオ様」
「貴様!魔王様の名前を…」
「良い、私が名前で言うように頼んだのだ。」
魔王が数人の護衛を連れてコテナにやってきた。
(エリシアから聞いてたけど、本当に女性だったんですね。)
「初めまして、エリシアと同じギルドのシオンです。」
「同じくランドです。」
(ランドが、敬語頑張ってください。ものすごく違和感がありますけど。)
(失礼だな!敬語ぐらい使える!)
(ある程度使えるのは知ってますが、時々俺とか良く言いそうになってるでしょう?)
(…努力する。)
「初めまして、魔王のリオだ。先日この国に、迷惑をかけたばかりだ。魔王と呼ぶと騒ぎになるだろう。この国にいる間は、リオと呼んでほしい。」
魔王が少し嬉しそうに言う。その表情を見てシオンは、
(もともと名前で呼んでほしかったんじゃ…。部下からも魔王様と呼ばれて誰にも名前で呼んでもらえないんですかね。)
そう思わずにはいられなかった。
「わかりました、リオ様。ところで行きたいところとか、ありますか?もしなければ、僕達がオススメのところをご案内いたしますが?」
「そうか、じゃあお願いしようか。」
そして、コテナの案内が始まった。ところがすぐに足が止まった。リオがコテナの魔族が人族や獣族と仲良く話しているのを見て、
「何故この国の者達は、種族に問わず楽しそうに話しているのだ?」
と聞いてきた。護衛の者達もその光景が不思議なようだった。
「コテナの住人は、種族に縛られるのが嫌だという人達ばかりなんですよ。そうですね、魔族で例えるなら、好きな人が人族や獣族でその相手と付き合うことを許されず、駆け落ちをしたものがいたりします。他にも他の種族に興味がある者、文化が好きな者、そういった者達が集まってできたのがコテナなんですよ。確かに種族の違いによる、価値観の違いからトラブルが起こることも多々ありますけどね。ここは、本当に居心地がいいですよ。ハーフだろうとどんな能力があろうと等しく受け入れてくれます。ちなみに、女王もハーフです。」
「そうか、ここでは本当に種族というのは関係ないのだな。」
リオと護衛の者は、感心したように聞いていた。しかし、そんな中怪しげな気配が数人近づいていた。