後書きと今後と蛇の足
手慣れた様子で、シアがプロかのようにサクサクとキャベツを千切りしていく。料理をしたことのないフィアが、料理をやってみたいとのことで、シアの隣でおぼつかないながらに人参を切っていたその時…
シア「っ…」
「シア?」
どうやら指を切ってしまったらしい。それも少し深かったようで、血がトクトクと流れ出していた。
フィア「っ…!」
ドクン、と心臓が、その紅を見て飛び跳ねた。
ナイフをポトリと落とすように手放すと、フィアはシアの傷ついた左手を強引に掴んだ。
シア「えっ…フィア、さん…?」
突然のことに戸惑いったシアの手から包丁が落ち、床と金属の音が鳴る。
しかしその音さえもフィアの耳には届かず…今あるのは、ただ一つ、逃れられない慾望。血が…彼女の、血が欲しい。
虚ろな目をしたフィアに、突然のことでシアはたじろぐことしかできない。
フィアは立て膝を立て、彼女の指と同じ目線に立つと、彼女の左手、血の流れる人差し指と中指を口に含み、血を吸い出した。
シア「あぅ…ぇ…ふぃあ、さん…っ」
予想だにしなかった行動に嬌声を上げるシアに、そんなことは気にもとめず血を吸い続けるフィア。やがて血が流れなくなったのを認識すると、手から口を離し…未だ足りないのか、未知なる快感に溺れた、トロンとした表情で彼女を見上げた。
シア「〜〜〜っ!」
彼が今まで見せたことのない表情に、シアの心臓もまた、激しくドクンと高鳴った。
そして彼は少しずつ、少しずつ、手を滑らしていき…右手を彼女の腰へ、左手を首元へ運んだ。
そしてその左手で彼女の首を斜めに傾かせるとーー首元へ、その鋭い牙で噛み付いた。
シア「ぁ、ぁ、なっ…ひぅ…」
一瞬の鋭い痛みに顔を歪ませるが、すぐにそれは…快楽へ。
ーー吸血鬼に血を吸われるのは昔から若い女に限られていた。そして吸血鬼は…1度吸わせた女を、吸血の虜にさせる力を持っていた。勿論そのことを、フィアもシアも知らない。
血を啜る音が、より興奮を促す。腰の引けてしまった彼女が地面に崩れ落ちようとしたのを、彼は強引に、腰に回した手で自分に引き寄せることで防ぐ。
シア「だ、め…ふぃぁさ、ん…」
シアが力の入らないながらもなんとか片腕を上げ……彼の頬に手をやり、それから頭へ、小さな手を力無く置いた。
普段感じないその感覚と、彼女の弱った、自分を呼ぶ声が…彼を正気に戻す。
牙を抜き、自分のしでかしたことに全身が強張って、力を抜いてしまった。支えられていた彼女が地面に崩れ落ちる。
「し…あ…?お、俺は…」
抜かれた跡からうっすらと、吸われ続けた彼女の血液がまた滲み出し始めていた。
シア「はぁ……ぁ、ぁ…」
息を荒げながら、虚ろな瞳でフィアを捉える。それは…何か、望んでいるようにも思えた。
ハッと思い出し、メニューウィンドウから回復薬を取り出す。
「シア…これを」
乱れた息を整えようと口で呼吸をしている彼女に回復薬を飲ませる。すると傷はみるみる塞がっていったが…彼女の目はそのまま、元に戻ってはいなかった。
シア「ふぃぁ…さん」
しかしシアは彼の名前を呼びながら少しずつ立ち上がり
シア「わけを…はなしてくれますよね」
一筋、光を再び目に宿すと、彼をしっかりと真っ直ぐ見据え、そう言った。
床に落ちた包丁やらを片付け、場所をシアの部屋に移し、フィアは吸血鬼の血の衝動を語った。
シア「そう…ですか。…先に言ってくれていたら良かったのに」
「ごめん…。痛かったでしょ?傷付けたくなかったんだ、シアなら…差し出してくれそうで」
シア「勿論です。言ってくれたら差し出してました。気遣ってくれたことは解っています、ですが…あなたの衝動を我慢させるなんて、私はしたくありません」
嫌われるのではないか、その気持ちは…本当に少し。信じていた、だからこそ…告げることはできなかった。
「…ありがとう」
シア「…それで、今後はどうするつもりなんですか?」
一瞬、フィアが礼を言った瞬間に、ドクンとシアの肩が揺れた。…それは、血を見たフィアの時とよく似ていた気がする。
「ん…?ああ…なんとか探すつもり。人間の血が一番いいけど、聞いた話だと人型の魔物でもなんとかなるらしいし…最悪ダンジョンとかで通りすがりの人型の魔物から取ることになるかも…」
それか…気は進まないが、人型の悪魔系魔物でも仲間モンスターにして血液タンクにでもなってもらう羽目になるのか。
シア「駄目です!!」
「うおっ」
そう告げた途端にシアが声を反射的に張り上げた。先程まではいつも通りの彼女だったのに、気がつくとまた目が虚ろで、頬は赤く…興奮しているのは明らかだった。
シア「貴方が…他の人の血を吸っているところなんて、見たくありません。その役目は、私が…!」
シアは息を荒くしながら、2人で座っていた彼女のベッドから立ち上がる。そしてフィアの正面に立ち、彼の首に手を回し…十数秒に渡る長いキスをした。
「し、あ…?どうして、こんな急に…」
興奮が伝染したのかフィアの息も荒くなる。2人の間に掛けられた唾液の橋はその証か…、そして唇を離した彼女は、フィアの胸元に飛び込み、抱き付いた。
シア「ごめんなさい、フィアさん…。わたし……貴方に噛み付かれて、血を吸われて…興奮してしまっていたんです。わたし…わたし、へんたい、かもしれないです」
シアの告白に、心臓がかつてないほど飛び跳ねる。興奮しながら、虚ろな目ながら、申し訳なさそうに…嫌わないで、と不安の色を見せてそう上目遣いをする彼女の姿に…衝動がまた、帰ってきた。
「シ…ア…。俺、また…」
開いた口から垣間見える鋭い牙と唾液、言葉の続きを信じて、彼女は最後の理性で口を開いた。
シア「ふぃあ、さん…。お願いします、私の、血を…わたしのだけを…すって、ください…っ」
シアを胸に抱き締めながらベッドに倒れこみ、横に下ろしながら転がるようにして、フィアは彼女を押し倒した。
理性は跡形もなく消しとばされ、その日…ベッドのシーツにいくつもの血の跡がついた。
もしシアを選んだなら、というifです。
フィアが血を吸いたい気分になると同時に、シアも吸わせたい気分になる。逆もまた…?
後書き
最初に…
シア⇦純粋な好意、フィアの好みにかなり近しい(賢者好み)。恐らく一番速くフィアを理解した。なんだかんだで多分一番を取りそう。取れなかったら…作り笑いが上手くなりそう。その場合は多分aがなんとかする。一番その場合を想像したく無い。最初は正直こんなに大きな立場になるとは思っていませんでした。
フィア≧a>φ
ティア⇦フィアはどちらかというと静かな性格の方が好みだが、一番最初に、一直線で真っ直ぐな好意をぶつけられたため好きに。闇堕ちしたのは純粋に力不足を嘆いたからであり、ヤンデレ的なのは…多分きっと恐らく無い。頑張れば多分、なる。成れなかったら…姿をくらましそう。φがついていくかもしれない。この中では一番、無防備、初期からの好感度が高い。
フィア≧φ≧a
クロ⇦愛に飢えたフィアにとって、或る意味一番ピッタリかもしれない。しかし、突然過ぎる告白と、離れすぎた常識から、フィアにとってどちらかというと保護欲の方が大きかった。よくも悪くも初期から信頼されすぎた為、逆に少しフィアも驚いていたのかもしれない。最初に出会った時の宣言通り、一番じゃなくても側にさえ居続ければ…とか。そもそもそういった知識が大してなさそう。
フィア>a≧φ
メア⇦この中では一番、フィアに対してが親愛のものに近い。フィアもまた同じだろう、友人、に近くあると思う。4人の中で一番強く、その気になれば夢の中にフィアを閉じ込めてしまえそう。4人の中で、フィアが一番自分のペースを守れると思う。強気だが多分受け。3人とフィアがどうなろうが多分ついていくと思う。寿命で死んだ後とか、何かしら動く…?案外、そういうものだと受け入れそうでもある。或いはフィアの方から会いに行くかもしれない。
フィア≧a=φ
普段後書き等は書かないのですが…書いてみようと思います。よろしければお付き合いください。
普段後書きをしないのは、
「この作品は良いんだけど、この作者はなぁ…」となるのを防ぐためです。作者の顔を見てからだと、作品の見方も変わってしまうかもしれないので。この先はさらにその度合いが酷いのでご注意を。
まず、もしかしたらこの回は消すかもしれません。この回は雰囲気がアダルトになってしまいましたので…。
ーーそもそもこの作品自体も消そうか迷っています。描写がまだまだなのは勿論、知人が見たら自分作だと気づかれてしまうような箇所がいくつか見られるからです。
さて…無事完結?しましたこちらの作品、いかがでしたでしょうか。第三者視点での評価がどのようなものか全然わからないので、なんとも言い難いですが…。(文章評価、ストーリー評価を最後に頂いたのは恐らく半年近く前、感想に至ってはお一人でしたので…)
幾つか連絡を。当作品…やるべきこと、まだまだ沢山あります。フィアが一度死ぬ前に自分でまとめていましたが、もう一度、付け加えて。
・チームとして何もしていない。⇦チーム単位での作戦、他チームとの何かしら、オンラインゲームらしいイベント、等を考えていましたが、どうにも入れるタイミングが無く断念。
・個人個人とのイベントが少ない⇦例えば、リア、ライとは全然絡めていませんでしたよね。また、この話は読まなくても問題ない、というようなサブ、外伝的なのがあまり無かったなと思います。…いや、これは無くていいんでしょうか?
・触れられていないイベント、フラグ達が多くある⇦覚えている範囲では、
リアが初期から家を持っている。
スキル本、ジョブの設定を使う要素。
他の種族との絡み。
海の通う学校での登場キャラ達。
初ボスのドロップ品の歴史と、それから派生したイベント。
忍者。
クロについて。
大天使。
等ですかね。
もし当作品の続きを書くとしたら、6.7年後ぐらいになると思うので、この際語ってしまおうかと思います。
リアが初期から家⇦彼女はテストプレイヤーであり、親族に運営上層部がいる、或いは彼女もNPCか…のどちらかにする予定でした。
スキル本、ジョブ⇦こちらはなんとなく、どういうゲームなのかを知ってもらうために、また、自分のイメージを固めるために書いていました。また、後で語りますが、忍者等関連です。
他の種族との絡み。シアの家に家事手伝い用のアンドロイドが来る、若しくは木の門番のアンドロイドが仲間になるか、でした。シアの家に来たなら、彼女も或いはフィア達に着いて行く可能性がありました。種族は、性格や、偏見、種族歴史等の指針にしようかと思っていましたが、それらを活用するほどの人数を纏めることが困難だと判断しました。
学校のキャラ達⇦a編でかなり絡む予定だったのですが、そうなるとどうしてもシア、ティア、クロ達が本編に出なくなってしまいますし、a編の収集がつかなくなりそうだったので。
初ボスのドロップ⇦当初、ここから、仲間かフィアかが魔物化する予定でした。あとは大規模な街防衛等…これらは続編があるとしたら起こるかもしれません。
忍者⇦当初の流れ、この後本編が続くなら、こうなったであろうものをここに置いておきます。(置いても問題ないぐらい、続きが出るのは先…。或いは続かないので)
落ちた能力と、吸血鬼の特性から、昼間は仲間達に着いて行くのがやっとなフィア。そんな時偶然にも忍者の里へ1人足を踏み入れる。忍者の少女、恋と再会し、隠れる布を返す。また、何故か忍者の里に弟子入りすることに。里の人たちと絆を深めながら成長していく。夜にステータスが上がることも生き、仕事も任せられるようになった頃、忍者達が追っていた、木島との関係がバレ、里の者、果てには恋からも尋問を受ける。最後には殺されそうになるが恋に助けられ、ともに脱出。仲間達と再会、全忍者と全面的に戦い、最後には説得。木島、フィア、恋は自由の身となり、恋はフィアについてくることになった。
といった感じです。…ロリコン?
否定はできません。フィアは度合いこそ多少収まりましたが、未だ人間不信なままです。(これもあまり本編に絡められなかった…?)そのため、まだ裏表が無い、闇を抱えていない(抱えていても、所謂汚くない)少女や、例外的な、世間を知らないクロにしか、恋愛感情は向けないと思います。
クロについて⇦当初、それぞれの修行編を描くはずでして…その中で、クロが1人でいた理由が語られる予定でした。クロのいた妖狐の里では毛並みの黒いクロの家族は蔑まれていた、その為山奥に逃げてきた。修行として、復讐として、里に1人で帰る。そこで数百匹の妖狐達と戦い、スキル本、術書を奪う、というものでしたが…クロが実際にそうしたのか
、不明です。或いは復活したフィアに協力してもらうかもしれません。その過程で、里の幸福の証、白い妖狐と出会ったりとか、捕まって里に監禁されたりとか…考えるだけならタダですのでいくらでも可能性は語れますが…明言はしないでおきます。
大天使⇦aの同僚的な天使が本編に出てくる可能性もありましたが断念。そして大天使に消滅を引き止められる展開も断念。しかし、aが存在を語っていましたから、何かしらストーリーと関わりを今後持つかもしれません。
また、裁判の犯人は結局誰だったのでしょうか?木島?…いいと思うんですよね、巻き込まれただけなら犯人を探す道理も無いわけですし、そもそも推理物は、細かな情景描写に加えて、関係無い物達の中に重要な物を忍ばせたりハードでしたし、後で証拠品が見つかったりとか、後付情報のあの感じが少し苦手なので、当初から犯人は、不明、でいいのでは無いかと考えていました。
また、自分の至らないところもここに明言?しておきたいと思います。(こういうことを書くと作品そのものの価値が落ちる…そうかもしれませんが、このままでは自分が成長しませんので。)いや、ここも駄目だよ。や、いや、ここは別に悪くなかったよ?や、ここをもう少しこうすると…、こういうやり方で描写勉強したらいいんじゃない?等を教えていただきたいです。よければお願いします。
・描写力⇦しつこいようですが、当初は本当に目も当てられませんでした。今も大して成長してはいません。…皆さんどうやって仕方を学んでいるのか…。
・誰が話しているのか⇦実は…初めて読んだ小説は、二次創作の携帯小説でして、あ、セリフの前にキャラ名置くんだ…。と当たり前のことだと思っていました。(無論、その後名前の書いていない色々な小説を読みましたが…自分が描くときは何故か名前を入れていました。)その結果、…やらーーやらの使い方を知らないまま(現在もよく知らない)で始めてしまいました。一度は名前を消そうとも迷ったのですが、ゲームのチャットはキャラ名が付いてますし、何より…「…あれ?ここ、キャラ名差し替えても違和感無い…?」となる所がちょろちょろと…。(例えば、フィア、海、ライが話しているところとか)こういうのの特徴付けと言いますか、区別はどうしたらいいのやら…。以前友人と、ラノベって、誰が話しているのかよくわからなくなることがある…と言われ、逆にどうしたら解るようになるんだ…と悩み苦しんだことがあります。今生中には解決しなさそうな問題です。そういったものもあって、他チームを出すこと、学校キャラの出番を出すことを控えました。
あまり書いてもあれですので、これぐらいにしておこうと思います。
他にも本編で気になるところがあれば感想等に書いていただければお答えしたいと思います。
次回作は…かなり案もできていて、自分的にはこれ以上無いものが浮かんでいます。しかしそれ故、今の自分の力で作りたくないのです。それに、リアルもこれから多忙になるので…1年は、少なくとも投稿できないと思います。
変わらなければテーマは「ifのifのif」ですので、こちらの作品とも多少絡ませることがあるかもしれません。
それでは…一年と数ヶ月、お世話になりました
感想お待ちしております。
2016/01/26
ブックマーク数が200に達しました!てっきり減るものだと思っていたので驚いています。本当にありがとうございました。
2016/01/31
次回作を、タイトル含めて大幅に変更した為URLを削除しました。
新規
http://ncode.syosetu.com/n4964dc/




