表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/74

明日もまた、生きていくために。

ゆっくりと目を開く。夕日は既に沈んでいて、今の格好では少々寒い。氷を溶かし、日傘をしまう。メアの姿は既に無い、恐らく家の中に戻ったのだろう。

見上げた月の光に照らされる。夜になったからか、体の調子はすこぶる良く、夜空を飛び回りたい気分になった。メニューから時間を確認すると、7時より5分程前。

そういえば、結局昼飯食べてない…。

まぁ最悪夜食代わりにしたらいいか、と思いながら、服を少し上にずらし、縮めていた羽を開放する。欠伸をする時に身体を伸ばすように、広げたくなったからだ。索敵してみても周囲に他の人気は感じなかった為、問題ないだろう。

羽でうまく調整しながら、ゆっくりと玄関の前に下降する。

そして扉を開けようとすると…扉がひとりでに開いた。…いや、中からティアが丁度、扉を開けたのだった。

ティア「あ、フィアお姉ちゃん!タイミングピッタリだね!…あ、ちょ、ちょっと待っててね!」

そう言うとドタドタと居間へ行き、フィアお姉ちゃん帰ってきたよ〜!とだけ叫ぶと、すぐに戻ってきた。

「…??えっと…?どうしたの?」

ティア「え、えへへ…さ、入って入って!」

ティアに腕を引かれ、廊下を進む。…なんだかとても、いい匂いがした。

普段なら横を歩くティアが扉を開けるだろうに、今日は何故か、扉を開けるよう促された。違和感を覚えながらもノブに手を掛けーー扉を開いた。


シア「フィアさん!おかえりなさい!!」

「「「「おかえり!」」」」

扉を開けた先に…あの時の最期のメンバー、海、ライ、リア、クロ、メア、そしてシアがいた。それぞれが持ったクラッカーが、パンパンパン!と紙吹雪を飛ばしながら鳴り響く。

部屋の中はリボンやら何やらで綺麗に飾り付けられていて、テーブルの上には凝ったたくさんの料理が並べられ、皿がいくつも積み上げられていた。

…メア、リア、ライの照れくさそうな小さな声も、全てちゃんと聞こえた。

「…これは…どうしたんだ?」

海「みんなで話し合ってたんだ、お前が起きたら何かしらしたいって」

ライ「まぁ、そういうわけだ」

それで…パーティ、か…。その発想の源は恐らく…少女達の幼さからなのだろう。それに付き合って手伝ってくれたらしい友人達の優しさも、空いた胸の穴へと届いた。

リア「三日ぐらい前からずっと準備してたんだから…メアが変なところで拘るから余計疲れた」

メア「う、ぁ…う、るさいわね!やるっていうなら完璧なものにしたいじゃない!」

先程の夢のことを引きずっているのか、赤みを帯びた頬に、何も知らないリアは小さく微笑んだ。

シア「…フィアさん?」

ポツンと立ち尽くし、やがて下を向いたフィアに不安を覚えたのか、シアが覗き込んでくる。後ろにいたティアも雰囲気を感じ取ったのか、後ろから回り込んで来た。


…枯れた筈の涙の存在が、彼の心を表していた。…痛かった。穴を塞がれていく感覚は…居心地の良さを含んでいたが、同時に気持ちが悪くなりそうにもなった。

心に空いた穴は、彼の心の風通しを良くし、彼を生きやすくさせていた。突き刺さる筈の言葉の槍達が、穴から通り抜け刺さりづらくなっていた。

…明日も良いことはないだろう。それでも…そういうもんだろ?人生は、世界は…。

そう言い聞かせていたのに…、そんなことはない、そう今、証明されてしまった。


メア「あ、治ってる」

「ああ、治った」

本に心を渡して弱っていた心が、元の…いや、それ以上のモノへと変わった。

心がそうなった瞬間に、メアがそう呟いた。そしてそれに反射的に、フィアも小さな声で答えた。

誰にも気づかれないように自然に涙を拭う。涙に気づいた2人が心配そうに見上げていたが、フィアは2人の髪の毛をくしゃくしゃにするように撫で、顔を上げた。

「…ありがとう。…今なら…死んでもいい」

心からの、最上の本心をそう告げた。

クロ「…主が言うと、冗談に聞こえない」

思わぬ所からのツッコミに吹き出したのはリアとライで、それにつられて海、フィアも笑みをこぼした。

メア「…あら、残念ね」

メアの言葉に?を浮かべながら彼女の方を向くと、もはや吹っ切れた、とでも言った様子でドヤ顔で語り出す。

メア「この先は、もっとわたしが」

シア・ティア「私が幸せにしてみせます(してみせるんだから)!」

楽しませて…まで聞き取れたが、それを言わせてなるものか、とシアとティアがメアの言葉の間に割り込んだ。割り込まれたことに目を見開くと、メアは拗ねたように溜息をつき、やがて妹の成長を見た姉の様に、小さく微笑んだ。


ライ「モテモテだなぁおい」

遠目からライがそう茶化す。

海「…クロは行かなくていいのか?」

クロ「…クロはもう、伝えたから」

わぁお…と口を開けた海と、やれやれ…と首を振るライ。リアは聞こえない振りに入っていた。


…それは男のセリフなんじゃ…。

プロポーズに近いその言葉を告げられ、言葉を失った。

「信じて」そう自信満々な瞳が語っていた。

ふとメアと目が合う。照れた様子で頬をかく彼女に、口の動きだけで、「聞こえた」と告げる。以心伝心したのか、メアは穏やかで優しい笑みを見せた。

そして更にチラリと目線を動かすと、クロと目が合った。クロは3人の言葉を聞きつつも、何も語らず胸に手を当て、やがて静かに微笑むと、小さく手を振った。


「…約束する。この世界で……俺はまだ、生きていく。だから…ずっといっしょにいてくれ」


満面の笑顔で頷いたティアと、安心した様に笑みを浮かべたシアを抱き締めた。

…今日は、忘れられない1日になる。だから…目一杯楽しもう。

明日もまた、生きていくために。



ここまで読んで下さりありがとうございました。一応今回で最終回となります。(続くとしたら7.8年後)次回作の予定はありますが、もう少し修行してから始めたいと思っているので、一年は少なくとも帰ってこないと思います。

そして、後書き+おまけという形で少し予定があります。しかし、設定やら今後どうしていく予定だったとか、そういう話でして、世界観を著しく崩す恐れがあるため…あまりお勧めしません。


今作を通しての感想等あれば宜しくお願いします。


ここまで読んで下さってありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ