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仲間


影は言葉に込められた意思を感じ取った。影は自分(こころ)と反響させ、やがてその体は…薄く消え入ろうとしていた。

ティア「…だめ!」

薄れていく影に、いつの間にか近づいていたティアが抱き着く。

それに気付いた影がティアに向き直り、優しく頭を撫でてあげていた。しかし…違和感に気付いたのか、影は撫でるのを止め、自分の手の部分を、その赤い目で見つめる。

a「な……え?」

影の色は再び濃くなっていった。そこから溢れ出すように黒色の衝撃波が飛び出し、aの体を大樹へ叩きつける。

海「お前……やっぱり」

海がティアに、信じたくない物を見るような目を向ける。黒い衝撃波に吹き飛ばされることなく、その場で影を抱きしめ続けている少女は、影と同じく黒色のオーラを纏っていた。

ティア「なんで…なんだろうね」

闇からは一番程遠いと思われた彼女が、何処かでみたことのある、絶望感に満ちた虚色の瞳を宿していた。

ティア「アヴェールに教わって、ちょっとは強くなったけど…何かしらの属性魔力を込められないと、やっぱりあんまりなんだって。だから……ずっと、力が欲しかったの。みんなの…フィアお姉ちゃんの役に立てる力を。なのに…よりによって、【これ】なんてね」あはは、と乾いた笑い声の後、でもね…と目を伏せ言葉を続けた。

ティア「クロお姉ちゃんもそうだったから?一番強い力だから?言い訳はいくらでもあったよ。それでも…私は、ね。クロお姉ちゃんみたいなのじゃないの」

そう言葉を続けている中でも、影は徐々に形を変え、大きく、より凶悪になっていく。ティアが離れた後もそれは続き、最後には…闇の風を体に纏い、長い爪を携えた、全長5m程の巨いなる人狼型の影へと姿を変えた。

海「っ……!お前は!フィアに会いたくないのか!?闇を抱えていたからってだけで…意味わかんねぇよ!!」

ティアの言う意味がわからず、そして突然のこの状況。頭を抱えるのはいつも海の役目のような気がする。

ティア「……会いたいよ…とっても。でも、会ったらきっと…幻滅されちゃう。フィアお姉ちゃんは…信じること、苦手だから…。きっと……元には戻れない」

悲しげに首を横にふり、すぅ、と息を吸い、ゆっくりと吐く。

ティア「でも、お姉ちゃんの影は…覚えていなくても、私が襲われているのを助けてくれた。同じ闇に近いから……それだけかもしれない。っ…それでもいい!私は、お姉ちゃんの影と一緒にいるの!」

叫ぶティアの瞳には、明確な敵意、意思が込められていた。…覚えていなくても、解る。彼女をそうさせてしまったのは《自分》で、《自分》と出会わなければ、そうならなかった筈なのだと。

ティア「闇の、影、だけがお姉ちゃんだったら良かったのに…。光の、貴方も居たなんて。…《フィアお姉ちゃん》は、全部が私と同じなんじゃない。…だったら、影だけでいい」

虚色の瞳は決意を宿し、ティアは背中に携えた弓を手に持った。真っ直ぐと見つめたその先には、もう一人の《フィア》。

海も杖を取り出し、チラリとaを伺う。

a「……」

…苦しさに胸元を押さえ、口でなんとか息をする。ああ、どうして…彼女はあんなにも…と。

a「信じてみせます!だから…」

ティア「嘘つかないで!フィアお姉ちゃんが…私を信じられるわけない!!!」

ティアの叫びに呼応するように、巨いなる人狼へと形を変えた影もまた、悲痛な叫びを森中に轟かせる。

そして、様子を伺っていた影達も、一歩、また一歩と二人に向けて歩みを始めていた。

海「ちっ…最悪だ…!どうするんだよa!」

a「闘うに…きまってます!!!」

光を再び解き放ったaが巨きな影へ一閃を放つが…姿を変えた影はまるで瞬間移動の如き速度でその場から姿を消した。

海「a!上だ!」

海に言われて上を見上げるがーーその時には既に遅かった。

…鋭い爪がaの眼前に迫る。

…反射的に目を閉じてしまった。死の目の前でも閉じず、結果をその目で見ることが出来るのは、幾千もの経験を積んだ武術の達人や、戦人だけだろう。結果を待ち受けるしかできずにいたaに届いたのは…金属同士がぶつかり合ったかのような音、それに次いで、聞き覚えのある女性の声。

??「…大丈夫?主」

ーーいつか見た、ふわふわとした二つの黒い尻尾。獣耳の生えた、巫女装束のような格好をしている妖狐。瞳の色は、いつかよりも希望を感じられた。

女性は手に持った、金色の持ち手に銀色と青色のグラデーションが光る、奇妙だが、美しい剣ーースターシーカーで爪を押し返すと、aに触れて瞬時に後方へと“飛んだ”。


海「おらっ!!」

炎で辺り一帯を燃やし、火で森が燃え尽きないように水も、追撃の意味を込めつつ放つ。…しかし辺り一帯への炎は影達の姿を見えにくくするものでもありーーそれが、不意打ちの原因となった。海の背後からひときわ大きな影が爪を振り下ろすーー!

??「余所見してんじゃねぇよ馬鹿!」

誰かの声が聞こえたかと思うと、声の主は大きな影に、魔力を帯びた機械仕掛けのブーツで飛び蹴りを食らわせ、追撃に二丁の魔法銃による3発の魔法弾を浴びせた。

そして海と背中合わせになるようにその場に着地しーー懐かしい、気取ったような声を聞かせる。

ライ「やれやれ…感謝しろよ?」

海「ライ!クロも!どうしてここに!?」

海の問いと同時にクロとaが二人の元に瞬間移動をした。

四人は互いに背中を預けるようにすると、影達の動きを伺う。

クロ「シアに言われて。…ライの発信機で海が何処にいるか解ったし」

海「うおい!いつの間にんなもんを…」

ライ「いいだろ結果オーライなんだから!んで、これがフィアなのか?あとあの影は?あのくそガキはどうなってやがる」

まくし立てるように質問しながら、二丁の銃に魔力を込めてチャージしなおすことを忘れない。

a「そうです。といっても記憶も残ってないのであなたたちが誰なのか、は伝え聞いたことしかしりませんが。…あの巨きな影もまた、【フィア】です。彼女が闇魔力を与えたことで暴走しています」

クロ「…ティアも、闇を…?」

はぁ?と思いっきり顔に書いた後、ライはため息をついたかと思うと、小さく、よし、と気合を入れ直した。

ライ「まぁそれは後だ。こいつらに弱点は?何か策はあるのか?」

a「ありません。…ですが、あの子をなんとか説得しないと…。周りの敵は任せても?」

海「…ああ!?」

返事かと思ったら、何かに気付いたのか海が大きく声を上げる。

ライ「あんだよ急に!うっせぇ!!」

海「…前やってた魔力譲渡の奴、今出来るか?」

武器に魔力付与は、魔力の扱いに慣れた者なら誰でもできるが、人間(生物)に魔力譲渡は通常出来ない仕様のようだった。(天使が生物かどうかはともかくとして)

だが以前、氷魔法がどんな感じか使ってみたいと適当なことをライに言ってみたところ、何やら怪しげな魔弾で撃ち抜かれ、回数制限付きで使えるようにしてくれていたことを海は思い出した。なんでも、魔力を“魔法”にせずに生物に与えることが出来るとかなんとか。

ライ「ああ?出来るが…何属性?闇とか光はまだ作れてねぇぞ」

a「氷でお願いします。…急いで」

ジリジリと近付き間合いを測っている影達に、威圧感を明らかにすると共に、魔力を貯める。

ライ「あ?え?何、こいつにやりゃいいの?どんぐらい?」

海「あるだけ全部だ!」

魔力の増大を確認し、影達が一歩後退する。様子を伺っていた巨いなる影は、対して一歩前に出た。ティアは今の所、射ってくる気はないようだ。

…aは右手を胸の前に、あるだけの重力魔力を一点に集め始めた。

a「こ、れは…ちょっと危ないかな」

ーー創ろうと思ったけど、人工の魔力だからか、扱いが難しい。

自分のことは、自分が一番よくわかる。…それがそうなのか違うのかはともかく、今回はそうなのだろう。巨いなる影は、aが手間取っていることを確信したのか、赤い目をギラリと光らせると、音を置き去りにする程の速さでaの目の前に“跳んだ”

??「させないっ!」

眼前に迫った影に対して、真上から、豪雷とでも言うべき巨大な雷が降り落ちた。

??「初手から飛ばしすぎよ…全く」

豪雷は巨いなる影には避けられてしまったが…地を這うように拡散した雷によって、辺りにいた影達は痺れて動けないようだ。…何故か彼らは痺れていないが。

海「リア!メアまで!」

メア「フィアのは私が手伝う!あんた達は雑魚掃討とでかいのをなんとか引きつけて!あの子供も!もう来るわよ!」

メアの怒涛の指示に、aを除く全員は視線を合わせる。

「「「「了解!!」」」」

それぞれ四方へと跳び、aを守るように四人は戦闘を開始した。



2019/4/19 誤字修正

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