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舞い踊れ新米冒険者達

時刻は少し遡る。

優音は親友である舞奈と共に体育の授業中であった。

無論魔物に襲われたのだが…彼女達は戦う力を持っていた。

優音「当たれぇ!!」

炎の弾がいつぞやの狼男のような魔物に向けて放たれる。しかしそれは、鋭く長い爪で簡単に掻き消されてしまった。

クラスメイトが逃げるまでの時間稼ぎ、悪い言い方をするならば囮として、二人は戦っていた。

全員逃げ終わり、最初は自分達も逃げようと思っていたのだが…とても逃げれそうになかった。

舞奈「っ!」

鋭い水の刃が舞奈によって放たれたが、これもまた爪で掻き消される…が、それは一つではなかった。時間差をかける為、大きく円を描くように遠回りさせた水の刃が、左右から狼男を切り裂いた。

と言っても傷はとても浅く、例えるなら少し大きなカッターナイフで切られたかのような、その程度のものである。

僅かな感触であり、本当に切られたのか…?とでも思ったのか、そっと狼男が切られた部分に触れる。

…分厚い毛を貫通し、確かに傷があった。そこから血が流れていたことに、狼男自身、触れてから初めて気がついた。

舞奈「…効いてない?」

優音「ええ〜っ!?」

手についた血を見て固まった狼男だったが、傷をつけられたことに気がついたのだろう、突然その形相が変貌した。

狼男「ウオオオオオオオオオオッ!!!」

殺意の波動が見えた気がする…いや、確かにそこに、溢れ出た魔力があった。

ただでさえ鋭かった一本一本の毛が、針のように鋭くなり、太陽の光を反射させた気さえする。爪のリーチは2倍近く伸び、全身の筋肉が、魔物の純粋な殺意に共鳴していた。

優音「や、やばくない!?」

まるで瞬間移動の如き速度で、憎らしそうに舞奈の前へと跳んだ。

舞奈「い、嫌!!」

焦りからかただレーザー状の水を放ったが、それが当たるわけもなく、単純な横ステップでよけられてしまった。

舞奈「こ、来ないで!!やめて!」

すぐさま詠唱の必要がない程度の、水の壁が地中からこみあげてきたが…そんなものが何になるのだろうか。

狼男がその壁を爪で一閃した。

それだけで、その壁は呆気なく跡形も無くなる。

優音「舞奈!!」

後ろから飛んできた炎の塊をうっとおしそうに狼男が切り裂き、その隙に身を屈めて舞奈に向けて優音はタックルを繰り出した。


舞奈「駄目!!」

優音に突き飛ばされ、1m程飛ばされながら、行かないで、止めて、と無意識のうちに手を伸ばしていた。

死を直感していた。いや、直感も何もない…。勝敗が決したのを、確信した。認めるしかなかった。

優音の後ろには、今まさに殺さんと狼男が腕を振り上げていた。

優音「ーーーー」

優音が、何かを言っている。

必死に聞こうとしたが、地面に叩きつけられた痛みで聞き逃してしまった。

嫌だ、行かないで…。置いて行かないで。独りに…しないで。

涙が溢れ出る。

彼女の願いなど御構い無しに、鋭い爪が振り下ろされた。


…だがそれは、彼女に触れる直前で止まった。いや、止められた。

氷の剣が狼男の脳天に突き刺さり、あまりの衝撃故か、その瞬間に氷の剣が砕け散る。

狼男の斜め後ろに、砂煙を一切立てることなくふわりと着地した。

蓋をしていたものが不自然に砕け散り、返り血がピンポイントに彼女にかかる。

ただでさえ多量の返り血を浴びていた彼女はもう…えらいことになっていた。

a「きゃっ…。もう……」

狼男は仰向けに倒れ、異変に気付いた優音が此方に振り向き、口を開いてポカンとしていた。

優音「てん…し?」

a「はい。その通りです。…お怪我は、ありませんか?」

未だポカンとしながらも、う、うん。大丈夫。と返事を返す。

瞬間舞奈が駆け出し、優音に飛びつくように抱きしめた。

舞奈「ゆうねぇ…死んじゃうと思った」

その言葉、表情に一瞬驚いたのだろう目を見開くが、ぐずる子供をあやすように優しく、優音は舞奈の頭を撫でだした。

優音「ごめんね。心配かけちゃって」

舞奈「う〜…う〜!」

優音「うんうん、ごめんごめん」

さながら姉妹の様だと微笑ましく思いながら、死した狼男からドロップしたアイテムを手に取り、説明を読み始めた。


インファーナルクロウ

地獄に住む狼の爪を使って作られた通常サイズよりも長い両爪武器

鋭い爪は魔力を込めることでより大きく鋭くなる。又、魔法を切り裂くことも可能となる。


…二人は天使を見つめていた。

NPCでありながらメニューウィンドウを扱い、現在、多量の返り血に染まっているのだが…天使でありながら返り血を全く拭おうとしていない彼女。

その正体は不明で、何処となく警戒してしまう。


そして、あの時…

狼男に対して、脳天からの一撃で倒したこと。

…懐かしい。

二人は、自分たちが闘う力を身につけようと決意した時のことを思い出した。

あの時の人も、長い髪で綺麗な人だったな…。

髪が白か水色か、翼があるかないか、胸が大きいか普通か、服が黒貴重か白貴重か…そんな違い。

でも、それ以外の点で言えば、二人は似ている気がする。

…そういえば、ちゃんとお礼、出来てなかったな。

それに…見てほしい。私達が強くなったこと。あの時あなたが助けてくれたお陰で、楽しく生きていることを。


a「お二方、体育館に皆さん集まって貰っていますので、行きましょう」

壊れた氷の剣の代わりに、両手に先程手に入れた装備を着ける。

通常、武器はシティエリアで装備出来ないが、それはメニューウィンドウから実体化が出来ない、ということである。

それはつまり、メニューにしまう前、つまり、拾ってその場で装備すれば何も問題はないということである。

まさかシティエリアで武器をドロップするとは思っていなかったのか、それとも、もしもモンスターが現れた時の対策として残しておいたのか…真意は解らない。


優音「舞奈」

舞奈「うん。…終わったみたい」

二人が立ち上がったのを確認すると、aは二人に背を向け歩き出した。

二人「…え?」


…彼女の背中に生えた美しく大きな翼、その先端部分が黒く染まっていることを、この場に居る者以外に知る者はいない。


5月25日

aのセリフの前にaと名前が入ってなかったのを訂正しました。

この章の主役は彼女ですので要らないかとも思ったのですが一応。

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