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天より舞い降りた使者

いつもはしっかり授業を聞いている彼女の、非常に珍しい居眠りの姿がクラス中に晒されたのは、その日の最後の授業中であった。

しっかりと聞いている、といってもイヤホンを着けて小さく音楽を聞きながら、なのだが。このことに関しては了承を得ているらしい。

六時限目の授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

海はリュックの中にノートと筆箱のみをしまい、今か今かと帰りのHRが終わるのを待っていた。

季節はまだ冬、二月の始め。

彼がああなってしまってから、五ヶ月程が経っている。

担任が居ないため、副担任が話しているのだが話が異様に長い。


・・・こいつのことについてでも、もう一回振り返ってみるか。

そう思い、自分の前の席の彼女をぼんやりと見つめる。

未だ正体がよく解っていない彼女に、学園の人間は皆、不信感を拭い切れていない。海もその一人だ。

チャイムを目覚まし時計代わりに目覚めた彼女は、四ヶ月程前にこの学校に舞い降りた

『天使』だと自称する彼女には、今は制服の下に隠されているが美しい翼があるのだろう。

入学の手続きが必要だから、と彼女を一人だけ帰らせた後に緊急で会議が開かれた

そして次の日集会にて、再びモンスターが襲ってきた時の為の運営の処置なのではないか、という風に学園は考えていること。

明らかにNPCである彼女と、普通に、仲良く接しろ、との旨が告げられた。

α(アルファ)「、、、?どうかした?武川君」

視線を感じたのか、彼女、αが後ろを振り返った。

海「ん?ああ・・・居眠りしてただろ?珍しいなって、それだけ」

α「ああ、成る程ね。先生、怒ってなかった?」

海「いや、大丈夫だった。・・・ちょっと、びっくりしてたけど」

それを聞くとはぁ・・・と小さく溜息をつき、彼女は苦笑いを浮かべた。

α「昨日はちょっと夜遅くまで掛かっちゃって・・・。失礼なことしちゃったな」

・・・?疲れは感じないらしいのだが、睡眠は必要なのだろうか。

疑問に思ったが、さして重要なことでもないだろう、とわざわざ聞くことはしない。

αは天使として、街中で人助けを自主的に行っている。

海自身も一度見たことがあったが、一人では中々に大変そうだった。

と、教師が丁度入ってきた為、αは前に向き直る。


αは、舞い降りて来た当初、かなりクラスで浮いていた。

普通に、仲良く、そう言われても、何者か解らない者に、進んで声を掛けるような人は少ないだろう。

αもそれを仕方ないと諦めていたのか、一人で小説を読んでいる姿がよく見られた。

・・・その姿が、幼い頃のフィアによく似ていて。

無論、見た目は全く違ったが、纏っている雰囲気というかなんというか・・・。

因みに、こちらの世界に来てからの容姿とは、似ているところがチラホラとあった。

海の席がαの前だったこともあり、なんとかしたいと感じた海は、何かにつけて少しずつαに声をかけ続けた。

それ以来、何かというとαは海と一緒にいることが多い。

席替えをした結果、αが海の前の席になったからか、αから話しかけてくれることも増えていき、海はそれが嬉しかった。

海の彼女はそれをあまりよく思っていないようだが、なんとか上手く誤魔化している。無論、恋愛感情等あるわけはない。・・・フィアはNPCにこそ、積極的に仲良くしようとしているようで、海が同意出来る部分もある。しかし・・・それでもやはりNPCだと、何処かでそう思ってしまう。

教師「んじゃ、終わり!」

クラス委員が挨拶を済ませた後、クラス内が喧騒に包まれる。

部活行こう、やらクレープ食べてかない?などの声が溢れる中、αはゆっくり立ち上がった。

α「じゃあね」

海「おう、おつかれ」

何時ものように別れを告げ、海は自分の彼女のクラスに寄ってから帰ることにした。


ティア「・・・いない、かぁ」

アヴェールによる修行自体は、一ヶ月程前に終わりを告げている。

元より半年の約束であったが、思いの皆成長が速かった為短くなった。

2週間ほど前から、フィアの行方をそれぞれ探すことになった。探しながらも、修行をすることを忘れるな、というアヴェールの言葉に従い、ティアは一人で、ノースタシア、、、日本でいう北海道まで一人で進んでいた。

手掛かりも何もあったわけではないが、見た目、雰囲気で解るのではないか、と考えたティアは、そこかしこのダンジョン、森に突き進み、自分を鍛えながらフィアを探していた。

・・・何かしていないと、不安で仕方が無い。二度と会えないのかもしれない・・・いや、会えないのが普通なんだ。

【心を育てる】は上手く行っていない。シアが呼びかけても言葉を返すことはせず、命令に従うのみ。一度、何を考えたのか、ライが俺を殴れ、と言ったことがある。

…それに対してフィアは首を振り、従わなかった。

・・・やっぱり、フィアお姉ちゃんはフィアお姉ちゃんなんだ。

・・・それでも、それだけ。

元に戻ってほしい。

その為には、、、育てる、では駄目なんだと思う。

育てた結果生まれた心は、今までの過去を無くしてしまった、フィアお姉ちゃんとは違う新しいフィアお姉ちゃんなんだと思うから。


暗く俯く彼女は下を向いたまま、ただ歩く。

そうして少女は無意識の内に、黒い樹木、紫色の葉がどす黒い印象を与える呪われた大地へと、歩を進めてしまっていた。



生存報告

実際、7月後半ぐらいまで書き貯めて置くつもりだったのですが、「完結しないのではないか」と思われてしまっているのではないかと考え、再開致しました。


ある日電流が走った為、休載してから別の作品をちょいちょい書いていました。

その為、三話ぐらいまでしか実はまだだったり・・・。

7月20日から三日〜一週間ペースで完成したものを順々に投稿するか、今すぐ遅いペースで、現在進行形で考えながら書くか迷ったのですが、先の理由からこうさせていただきました。


休載中にブックマークが増えた時には驚きましたが、同時に励みにもなりました。ありがとうございます。

今後とも、当作品をよろしくお願いいたします。


8月4日

誤字を修正しました。

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