奥義と限界突破と魔法暴走
ティア「は、はやく、みんなを起こさなきゃ、、、あれ?」
無事に四人は部屋を脱出したのだが、、、何故か、激しい頭痛がティアを襲った
ふと、無意識に自分のMPを見ると、、、先程まで55あったのだが、、、0になってしまっていた
ティア「だ、、、め、、、まだ、、、」
そしてティアは痛みに耐え切れず、、、そのまま気を失ってしまった
HP MP SP
海 36 0 78
クロ 47 0 75
リア 8 43 37
ティア 60 0 32
「さて、、、行くか」
メニューから素早くウィジーソードを取り出し、三位一刀と共に逆手で構える
メア「で、どうするつもり?、、、私、もう眠いんだけど」
ふわぁ、、、と危機的状況にも関わらず、自分には関係ないことだとメアは欠伸をする
「なんとかするしかない、、、ひとつ、お願いなんだけど」
メア「なによ?言っとくけど、起こすのは面倒だから、もうやらないわよ」
訝しげにそう言いながらも、欠伸を止めてフィアへと向き直る
「なんとかして、【気合】入れさせてくれない?」
飛んでくる木の葉をなんとか横に飛んで避け、メアの返事を聞かずに走り出した
メア「はぁ?、、、ああ、成る程ね、、、う〜ん」
フィアのスキル【気合】の存在を思い出し、どうしたものかと腕を組んだ
、、、HP等はもう見ないようにしよう、、、怖くなってしまうから
斬りつけることよりも先に、何かを思い出したのか、彼はメニューを再度操作する
そうして出現したのは、、、リアル時代に彼が愛用していたイヤホンと、俗に言うウォークマンのような物であった
ウォークマンを操作し、音楽が流れたのを確認するとポケットに入れ、イヤホンを素早く猫耳に付ける
他の人からすれば、そんなことをする暇があるならば一撃でも多く切りつけろ、と思うかもしれないが、、、彼はそれでも、そうすることを選んだ
もしかしたら最期かもしれないから、、、最期は、やりたいことをしたい
普段は連携の為の声掛けや、モンスターの咆哮を聞く為につけていないが、今はそれらを気にしなくていい
そしてそれは、彼のモチベーションを向上させる為の、最重要アイテムなのかもしれない
音楽を聞きながら戦うことで、初めて100%の力を引き出せる、彼はそうイヤホンをつけることを正当化させた
【気合】発動
フィア
HP 75/105 MP 48/100 SP 59/80
気合が発動したのだが、HPを見ないと決めた彼は気付かない
風の魔力を足に纏い、斜めに飛び上がり、一気に魔物へと接近
枝が彼を掴もうと伸びるが、氷の板を作り、それを足場として跳ぶことで、斜めから真上へと向きを変え、枝を掻い潜った
そして更に、氷の小さな壁を作り、先程と同じようにそれを蹴るように跳ぶことで、魔物へと一直線に接近した
勢いそのままに、二振りの剣を目と思わしき所へと突き刺す
魔物が大きく悲鳴を上げ、音楽が遮られる
、、、うるさいな
お気に入りの音楽を遮る程の叫び声に、小さく苛立ちに似た物を覚える
そして魔物は怒りに身を任せ、枝と木の葉を一気に放つが、、、差し込んだ剣を踏み台にして、さらに押し込みつつその場から跳んで離れる
着地までの僅かな間に、手に貯めた氷の魔力を刺した剣に向けて放つ
すると、二本の剣を中心として氷が少しずつ広がり、魔物の目元を完全に覆った
凍れば再生不可能なんじゃないか、、、?
そう考えて取った行動だったのだが、どうやら上手く行ったようで、剣の刺さった目元が再生した様子はない
怒り狂った魔物は叫び、木の葉をばら撒くように飛ばし出した
その為か、最低限の魔力で氷の障壁を作ったのだが、刺さった物は少ない為、暫くの間防げそうだ
メア「フィア」
どう攻め込もうかと悩んでいると、不意に横からメアの声がした
【気合】を発動させる方法を見つけたのだろうか、、、?
剣を二つとも使ってしまった為、以前に偶然ドロップしていた大剣を取り出そうとメニューを動かしていると、、、不思議な感触が彼の頬を襲った
メアの唇が、そっと彼の頬に触れた
何をされたのか、、、数秒経ち、漸くそれを認識すると、彼は危険な今の状況を忘れ、ポカンと間抜けに小さく口を開けていた
メア「、、、ふふっ、、、勝てたら、もっと続きもしてあげるわ」
少女には似合わない妖艶な笑みに、、、彼は思わず見惚れてしまっていた
彼の耳元で流れる音楽はただ過ぎて行き、メアのその言葉が、何度も彼の心に反芻される
メア「、、、ちょ、ちょっと、、、何か言いなさいよ」
ボケっとしたまま何も言わない彼に不安を覚えたのか、オロオロとメアが慌て出す
先程の妖艶な笑みは何処へやら、、、先程の言葉の意味をよく理解していないながらに口にしたのだろうか
何か間違えたかしら、、、なんて小さく呟いたメアに、彼はゆっくりと口を開いた
「、、、まじで?」
未だハッキリとしないながらもなんとかそう口を開いた彼に
メア「え?ええっと、、、そういう知識はあんまり無いんだけど、、、何か変なこと言ったかしら?」
そう尋ね返したメアに、彼はまたもポカンとし、、、やがて、屈託のない笑みを浮かべる
「、、、約束だからね!」
メアに有無を言わせず、彼はそのまま氷の障壁から飛び出した
メア「えぇ!?、、、、、まぁ、いいわ、、、頑張りなさいよ」
彼に気づかれないようにそっと、メアは彼の中へと戻って行った
【気合】発動
フィア
HP 105/105 MP 45/100 SP 67/80
明らかに気合に満ちたことを感じる、、、メアのお陰で、心がスッキリしたのかもしれない
氷の障壁から飛び出した彼は大剣を、まるで日本刀の抜刀術の構えの如く持ち、樹の根元へと走り出した
時々葉が体を掠めるが、そんなことを気にしてなどいられない
やっとのことで、魔物は枝で剣を引き抜き目元の氷を取ったが、、、もう遅い
魔物の横を通り抜けざまに、音速の一閃が魔物に放たれた
大剣の長さでは明らかに切れない部分まで、その一撃は届き、
真っ二つにされた樹は、切断された上部分が綺麗に横にずれると、そのまま動かなくなった
、、、こんなに簡単に上手く行く、、、か?
何かしらあるであろうことを予測し、盛大な音を立てて地面に落ちたその樹の目から剣を引き抜く
剣は凍りついていたが、触れることでその氷はパリンと取れた
そして、案の定、、、切られた根元から、また巨大な樹が生える
先程までのサイズより、僅かにだが小さくなって
、、、成る程、そういうことか
よし、なんとかもう一度、、、
と、大剣をしまい、二刀に持ち直した直後、、、樹は木の葉を飛ばした
またか、、、と残鉄閃後の疲労が押し寄せる体に鞭を打ちつつ避けようとするが、、、
余りに予想外な光景に、彼は一瞬自身の目を疑った
木の葉が、黒色の炎を纏っていた
最早意味のわからない光景に彼は唖然とし、反応が遅れてしまった
魔力を込めるのも間に合わない
気が付いた時には既に遅く、二刀で体を僅かに庇うことしか出来ず、闇の炎が体を蝕んだ
フィア
HP 60/105 MP 45/100 SP 47/80
状態異常【炎上】 【侵食】
痛みに小さく叫び声を上げながら、反射的に、風で血の付いた木の葉を吹き飛ばす
体を一瞬魔法で凍らせることで、炎が燃え広がるよりも先に鎮火する
炎が燃え広がるのは防げたが、、、痛みは収まらない
黒色の霧が、何箇所にも渡って纏わり付いていた
炎を消してもDOTは付いたままのようだ
闇によるDOTに、炎、、、あの二人のMPを取ってたのは、それもあるのか、、、?
それ以上考えを巡らせる間も無く、続けて木の葉が彼めがけて放たれる
これ以上喰らってなるものか、と彼は全速力で走り、再び根元に向けて斬鉄閃を放った
フィア
HP 55/105 MP 45/100 SP 20/80
状態異常【侵食】
再び綺麗に切り落とされたが、先程よりも遥かに素早く、一秒足らずで又も樹は生え出した
「はぁっ、、、はあっ、、、」
そして新しく生えた物はすぐさま、闇の炎を纏わせた木の葉を飛ばしたのだが、、、彼は、疲労による身体の訴えに勝てなかった
体が、、、重い
彼の足は、腕は、体は、度重なる無理によって、とっくに限界を迎えていた
それでもなんとか、木の葉から避けようと風の魔力を込め、後方へと飛んだが、、、遅い
彼の手足に木の葉が突き刺さった
痛みで思わず剣を手離す
足に激痛が走り、上手く着地出来なかった彼は、バランスを崩して倒れてしまった
「なっ、、、」
やらかした、と彼が敵を確認しようと見上げると、、、闇の炎が、今まさに雨の如く彼に降り注いだ
フィア
HP ??/105 MP ??/100 SP ??/80
状態異常【炎上】 【侵食】
幾つもの木の葉が、彼に突き刺さる
彼の身体を、刃の如く無数の木の葉が突き刺さり、彼の身体は闇の炎に侵される
「うっ、、、ああああああああああああああああああああ!!!」
痛い、痛い、いたい、いたい、、、
痛みに耐え切れず溢れ出した叫び声
そしてそれに呼応するかのように、何か、凍りついたような小さな音が、彼の両手から鳴った
彼の両手に、二振りの水色の剣が出現した
氷によって作られたその剣の力か、炎が自然と鎮火される
何処からともなく強い風が吹き、彼の血によって赤く染まった木の葉が、彼の身体から取り除かれた
その葉は、彼を取り巻く風に巻き込まれ、彼の周りを囲うように回りだし、彼が右手の剣を一振りすると、風に運ばれ木の葉が飛び散り、、、
闇の霧に侵食され、刺さった木の葉が飛び散ったことによって、更に血が溢れる彼の姿がそこにあった
足元には小さな血溜まりが出来ていて、、、明らかに、これ以上戦える状態ではない
だが、、、それでも、動かなくては
死に花、咲かせろよ、、、
何処か諦めている自分に、何故か笑えてしまう
やっぱり、見た目が変わろうが、俺は俺なんだな、、、
瞬間移動かと疑う程の速さで魔物まで接近し、二つの氷の剣で斬鉄閃を振るう
すぐさま再生したが、、、ならば、もう一度
いつのまにか方向転換した彼は、樹を中心に、闇の炎を避けるように再度音速で走りだし、通り抜けざまに斬鉄閃を振るう
敵が再生する度に、何度でも
何度も斬鉄閃を振るう内に、意識が飛びそうになるが、、、その度に、もう一回だけ、と自信を鼓舞する
【気合】は、発動していない
何度も一閃し、、、彼は、敵の終わりを察した
「これで、、、終わりだあああああああああああ!!!」
走り抜け、斬鉄閃を振るい、無意識の内に空中を蹴って魔物へと振り向き、左手の剣を投げる
その剣は、クルクルと回転しながら魔物の横を通り抜け、、、ーーがそれを受け取った
彼とーーが樹の両サイドから斬鉄閃を振るうと、魔物は真っ二つに切れるのではなく、凍りつき、二度と再生することはなかった
ーーの存在を、彼はまだ知らない
ふぅ、、、と一息つき、いつの間にか取れていたイヤホンを、手慣れた動作で再度着ける
彼一人となったその空間は、いつの間にか壁も床も、全てが凍った氷の世界と化していた
そして、彼は、自身もどんどん足元から凍りついていってることに気付く
「まぁ、、、そうだよな」
魔法の暴走、限界突破、、、寧ろ、よくやったと思う
さっきの技は、、、そうだな、
【斬鉄氷影閃】とでも名付けようか
、、、厨二臭いな
、、、最期だというのに、彼はそんなことを考えていた
いや、もしかしたら、、、最期ではない、そう予感したから、そんなことを考えていたのかもしれない
彼はお気に入りの音楽に耳を傾けながら、静かに目を閉じた
フィア
HP 0/105 MP 0/100 SP 0/80




