再開、決着、想い
轟音が彼らの耳を襲った、、、が、彼の元に痛みが訪れることは無かった
フィアがそっと目を開くと、彼女は絶え間無い、怒涛の雷に打たれていた
その雷が止んだ時、彼女はやっと、意識を手放し動かなくなった
?「、、、久しぶりね」
広場への入り口に、懐かしい友が立っていた
以前よりもしっかりとした装備となっているのだが、、、相変わらず盾を扱うのだろう変わった魔法使い
フィアにとって此方に来てから初の友人、、、リアである
久しぶりの友との再開に喜び歩み寄ろうとしたところで、小さな影がフィアに飛びついた
無論、敵などではなく、、、涙で頬を濡らし、目元が赤くなったティアであった
ティア「フィアお姉ちゃん!大丈夫?怪我してない!?」
先程まで何処へ行っていたのか、息を切らしながらそう不安そうにフィアに尋ねた
ティア「、、、ご、ごめんなさい。フィアお姉ちゃん、、、私、役に立てなくて」
小さく、呂律があやふやでありながらもそう謝るティアの頭を、フィアは優しく撫でた
リア「、、、私もレベル上げに来てたんだけど、その子が急いで私を呼んで来たから間に合ったの。フィア」
つまり、何が言いたいのか、、、リアが言いたいことは100%フィアに伝わった
「解ってるよ。、、ティア、役に立ってない、なんてことはないよ。ティアがリアを呼んでくれなかったら危なかった。だから、ありがと」
そう、慰めからの嘘などでは無く、心からの感謝を述べられたティアはありがとう、と小さく頷いたが、俯いたままだった
リア「、、、それで、どういう状況だったわけ?」
盗賊の大量の死体を一瞥しながらも、リアは腕を組みそう尋ねた
リアに状況を説明し、アンドロイドの状態を確認する
、、、豪炎に包まれ、雷で追い打ちを掛けられた身体はボロボロであり、雷のショックからか、完全にショートしていた
クロ「主、、、つか、れた」
極度の緊張状態が何度も続いていた。それからやっと解放され、フラフラになっていたクロは、フィアの小さな身体に倒れる様に抱きつき、そのまま意識を失った
「、、、クロ、お疲れ」
クロの頭も優しく撫で、カードの中へと戻した
同時に自分のSPを確認すると、、、遂に一桁へと突入していた
海「、、、そういえば、聞きたいことってなんなんだ?」
フィアの発言を思い出し、海がそう尋ねる
「ん?、、、あ〜、まず、あの盗賊達を倒したのがこの人なのか。
次に、なんでこんなところにいたのか、、、まぁ、それだけなんだけど」
なるべく傷つけたくなかったんだが、、、と小さく溜息混じりに言いながら、何かを探す様に大樹の辺りを探し出した
リア「、、、何してるの?」
それを不審に思ったのか、フィアに習う様に隣に移動しながらリアが問う
「ここ、ただの勘なんだけど、何かあるような気がしたからさ、、、それに、仮定だけど、あのアンドロイドが何かを守ってた、って可能性もある、、、さっき探した時には見当たらなかったけど、、、ほら」
樹の根元にしゃがみ、目当ての物を探していると、大樹の、丁度彼女が座り込んでいた所に、黒色の石版のようなものがはめ込まれていた
海「、、、ダンジョンの入り口、か?」
だろうね、と立ち上がり、どうしたものかと口元に手を添え、フィアはいつも考えに耽る時の構えをとった
、、、いますぐ突入したいところだが、、、疲労困憊、満身創痍、とてもじゃないがキツイだろう
だが、ダンジョンだったとして、他の人に気づかれる前に中に行かないと、中に宝があった場合取られてしまう、、、ふむ
「、、、何か、これを隠せるようなものない?」
黒い石版を指し、そう尋ねる
海「ん〜、、、ないな」
各自、自分の持ち物をそれぞれ確認したが、それぞれ首を振った
クロに化けてもらう、、、いや、二日間も此処に置いてくことなんて出来ないし、
何も無いだろう、と思いながらもメニューウィンドウからフィアも自分の所持品を確認した
、、、、、、、、、、あ
うっそだろ、おいまじか、ベストアイテムだろ!
感情を普段表に出さない彼らしくなく、吃驚し目を見開いていた
海「な、なんだよ、、、何があったんだ?」
海がフィアの様子に気づきそう尋ねると、フィアはふっふっふ、、、と笑いながらメニューから白い布を広げて取り出した
リア「、、、何それ?流石にその色じゃ隠せないと思うけど」
なんだ、と溜息混じりにそう告げたリアに笑みを返し、フィアは大樹の一部分に布を貼り付け、すぐにそれを外し、そしてそれを石版を中心に、綺麗に貼り付けた
リア「、、、えっ?」
ティア「すごい!何これ!」
全員がその被せられた布を見ようとするが、、、その布を見ることは叶わなかった
いや、正確には、布を見てはいるのだろうが、布が何処にあるのか解らなかった
フィアが取り出した物は、いつぞやの忍者、恋が使っていた物である
表の部分で色、見た目を完全にコピーし、自身の堆積をある程度無視し、壁と布の間に姿を消せる、という物である
風などで飛ばされることもなく、ぴったりと貼り付けてある為、まず誰も気づくことは出来ないだろう
、、、そういえば、これを剥がした時、返すの忘れてたな、、、
貴重な物だろうし、なんとか返してあげたいんだけど、、、どうやって連絡を取ればいいのか
、、、まぁ、借り物だが使ってしまおう
「これで万事解決だね、、、取り敢えず、自分達は帰るけど、リアはどうする?」
リア「ん〜、、、私も帰る、疲れたし、、、ダンジョン行く時、私も誘いなさいよ」
「無論だ、、、そうだな、なるべく早く行きたいし、明々後日でどう?」
明々後日では少し長いかもしれないが、、、あれだけの敵が門番だということは、、、中はかなりの難易度だろう
万全の状態で挑まなければ、最悪の事態もあり得る
そのことを理解しているのか、リアは二つ返事で了承した
シア「おかえりなさい、、、大丈夫ですか?」
居間に入るなり、エプロンを着けて何かを作っていたらしいシアが駆け寄って来た
「ん?、、、見て、解るぐらいになってる?」
疲れを表情に、なるべく出さないようにと思っていたのだが、、、どうやら、それさえも出来ない程のようだった
シア「はい。明らかに解ります、、、無理は、しないでくださいね」
心配そうに自分の顔を覗き込むシアを、、、何故か、妙に可愛らしく感じた
「、、、心配してくれるんだ」
シア「!、、当たり前です、、、大事な、、、、、お客様ですから」
やけに長い間が有ったが、、、自分のことを気に掛けてくれている人がいる、ということが、彼には無性に嬉しかった
、、、死体の山を見てか、それとも単に疲れたからか、自分では気づいていないが、彼の精神はかなり疲弊していた
そんな疲弊した彼の心に、その小さな優しさは大きく響き、彼は自然と、安心しきった、普段とは何処か異なる笑みを浮かべていた
それを見たシアはバッと顔をフィアから逸らし、そしてそそくさと台所へと戻った
シア「つ、疲れた時には甘い物がいいですから、、、クッキー、作っているので、、、お風呂、沸かしてありますから、先に入って来てください」
フィアから見えないように顔を背けながらそう言うシアに疑問を感じながらも、解った、とフィアは居間から出て行った
シア「、、、ズルい、あんな顔」
オーブントースターにクッキーを入れ、はぁ、と小さく息をつく
母親がまだ居た時に、時折客が見せてくれたあの表情
あの顔は、完全に安心してくれている時の顔だ
宿屋を母親と共に経営して数年、母親から受け継ぎ一人で経営し出してからまだ半年経たない
まだまだ他の宿からしたら至らない所も見られる自分の宿
自分が宿の主となってから、あの表情を見たことは無かった
普段から気を張っている彼が始めて見せてくれた心からの安心の表情に、未だ顔に集まった熱は収まることを知らない
配膳用の銀のトレーを取り出すと、自然と口元をそれで隠す
シア「、、、フィア、さん」
トレーで口元を隠し、誰にも、自分にさえも聞こえないぐらいに小さくその名を呟く
その名前を呼ぶだけで、自然と鼓動が速くなって行く
ぶんぶんと首を振り、なんとか意識を逸らそうと試みる、が、それが上手くいくことは無かった
、、、そうしてから、どのぐらい経ったのだろうか
何かのコゲた匂いによって、漸く少女は意識を覚醒させた




