dream world of seiki
「ここが、、、星姫の夢の中」
その日の夜、フィアとメアは、星姫の夢の中へ侵入していた
足元には汚れ一つない黄緑色の草原が、空には曇りのない星空が広がっている
メア「織姫と彦星、だったっけ。そんな伝説がもし実在するのなら、あの子は二人の子供なのかしら」
今日まで結局、星姫を送り返す方法が思いつくことは無かった
その為、記憶を取り戻させれば、自身で帰る魔法等を使えるのではないか、と考え星姫の夢に侵入した
メア「生憎だけど、あんたを連れて来るのでもう精一杯力使ったから、私の方からあんまりアシストはできないわよ?」
解った、と反射的に短く返答しながら、その言葉に一つ疑問が湧き、彼の癖なのだろう、無意識に首を傾げながら尋ねる
「アシストが必要なことがあるの?」
メア「、、、見て、あそこ」
メアが指差した先を見る
遥か遠くからだが大多数の、鎧を装備し剣で武装した兵士達がこちらに向かって来ていた
「、、、どうするの?」
メア「あんたのことを異物だと思ってるわけよ、だからあんたに襲いかかってくる、、、殺すことは、、、やめておきなさい」
殺すことも出来ない、、、剣もない、、、こんな状態でどうやって記憶を呼び覚まさせろというのだろうか
メア「解ってるわ、この夢の世界の中に、あの子の重要人物がいるはずよ、その人を探して」
メアは宙に浮き、夢の住人達から逃げるように飛び、フィアも全速力で走り、それになんとかついていく
「えっと、、、?探して、どうしたら思い出させられるんだ?」
メア「、、、さぁ?」
さぁ?って、、、
メア「仕方ないでしょ!やったことないんだから!」
メアはへそを曲げたのか、フィアを引き離すようにスピードを上げる
「、、、マジか」
なんとか追いつこうと、フィアも風魔法を足に纏い、更にスピードを上げた
メア「、、、あれかしら」
逃げ続けて十分程経ち、なんとか追手をまくことが出来た
前方にいる草原の端にて星空を眺めている、桃色の着物に長い黒髪の女性を指す
あれが、織姫、、、?なのだろうか
二人の気配に気づいたのか、女性が二人の方へ振り向いた
そして、女性が振り向くのと一緒に、少女が女性の後ろからひょっこりと顔を出した
、、、星姫である
メア「夢は記憶を整理する為に見る物って言うの、、、あながち間違いじゃないのよね。運がいいのかしら、丁度この夢をあの子は見ることが出来た。私達がするべきことは、あの子がこの夢から覚めても内容を覚えていられるように、インパクトを与えること」
メアが二人を見ながら、そうフィアに解説する
、、、二人を見るメアが、何処か寂しそうな気がしたのだが、俺の気のせいだろうか
、、、いい手段が思いつかない
「そもそも、誰に対してどうショックを与えたらいいの?」
メア「夢の内容は、夢の中の本人を通して見ているわけじゃないわ、、、ここはあの子の世界なの。自分の世界を三人称視点で見ているわけだから、あの子供に対してどうこうする、って訳じゃなくていいわ。、、、さて、あなたがどうするのか、、、見せてもらうわね」
メアはそうクスッと笑いながら煙と化し、気がつくと二人から離れた位置の崖に腰を下ろした
、、、手伝ってはくれないのね
まぁあまり期待してなかったが
なんてことを考えつつ、フィアはどうするべきか手短に考える
二人の様子を見ると、明らかな異端者を見つけたからか、少なくとも織姫の方は警戒している様だった
、、、そもそも、どういった夢なら記憶に残るだろうか
自身の経験談だが、面白い夢、悲しい夢、とかは、、、余り記憶に残らないと思う
怖い夢、、、は、割と覚えているけど、あまり危害を加えずに済ませたいんだよなぁ、、、ふむ
メア「ちょ、、、本気?」
考えを読んだのか、メアがバッと振り向き、訝しげな目を向ける
「まさか、流石にそこまで酷いことをやる訳、ないよ」
訝しげな目線を自身に送りつけるメアをスルーし、フィアは二人の方へと歩みを進めた
織姫らしき人物は警戒している様で、ただ睨みつけて来る
星姫の方を見ると、初対面の人に対しどうすればいいのか解らないのだろう表情を浮かべていた
何処から取り出したのか、織姫?が金色の持ち手に銀色と青色のグラデーションが光る、奇妙だが、美しい剣をフィアに向け、突然抜刀し、フィアに向けて斬り上げる
フィアは多少目を見開きながらもその剣を横に避け、間髪入れずに剣の柄を掴んだ
両者が何も言わずに膠着状態に陥っていると、諦めたのか、織姫が剣を手放し星姫をの手を引き走り出そうとした
その瞬間、織姫は腕に違和感を感じ取り、反射的に袖をめくり、違和感の正体を確かめる
織姫の腕に、一本の赤い線が走っていた
一瞬、それの正体が解らなかった織姫はその線を左手でなぞる
そして、なぞった左手を見て恐怖に顔を強張らせながらも、心配そうに顔を覗き込んでいた星姫と目が合い、すぐさま星姫と共に走り去った
メア「はぁ、、、どうするつもりよ、警戒させちゃって」
なにやってんだか、、、と現状を正しく理解していないのか、メアは溜息をつきながら立ち上がった
「いや、これでいいと思うよ」
フィアの思わぬ言葉にメアは首を傾げる
「母親が剣を振る、だが、気がついたら恐怖を浮かべながら走り去る夢、十分インパクトあるんじゃない?」
二人が走っていくのを眺めていると、星姫がチラリと二人の方を振り向いた
戸惑っている星姫に対して、フィアは何を思ってか、小さく手を振った
手を振り、笑っているフィアに一瞬驚いた様な表情を見せながらも、母親に引っ張られ、星姫は向き直り再度走り出した
メア「さて、、、じゃあ、帰る?」
「いや、ちょっと待って」
フィアの返答に、また何か変なことをする気か、と溜息を吐きながらも何処か、何が始まるのか期待しているようにも見える顔を浮かべた
「この刀って、持って帰れたり、、、しない?」
落ちていた鞘も拾い、フィアがメアに刀を差し出した
メア「、、、成る程、確かに綺麗だしね、、、ふぅむ、、、貴方、ここでメニューウィンドウは開ける?」
フィアがメニューウィンドウを開こうと試すと、問題なくウィンドウを開けた
続けてポーションを出すと、問題なく出てきた
「、、、どういうこと?夢の中でまでメニューを開けるなんて」
或いは、メニューを開いている、という夢を見ているだけで、ここでポーションを使っても消費されないのだろうか?もし共有されていて、メニューに入れることが出来たなら、、、夢の中で最強の武器を作り出して、持って帰ることも出来るのでは?
グルグルグルグルと思考を繰り返すフィアを他所にメアが剣をふむふむ、と品定めをする
メア「生憎だけど、自分で好きな物を夢見れる程、人間は器用じゃないわよ、、、取り敢えず、メニューにしまえるか、試してみたら?」
メアに言われるがまま、取り敢えずメニューに入れてみたら、メニューに剣が入り、武器の説明文を見ることが出来た
スターシーカー
天の川に祀られている魔法刀
地球に存在し得ない特殊な魔法石で作られている
錆びつくこともなく、魔力を込めることで、短い距離だが任意の場所へと瞬間移動を行うことが出来る
光属性
、、、絶対持って帰ろう
メニューウィンドウを閉じ、今度こそ星姫の夢から脱出した




