告げる覚悟と流れ星
アワーホーム
ライは防具をギルドに取りに、海はライの付き添い、ということで、クロとティアとフィアの三人が先にアワーホームへと戻った
ティア「たっだいま〜!」
ティアがバーン!と扉を盛大に開け、ドタドタと居間へと駆け出して行く
「ただいま〜」
クロとフィアが遅れつつ、居間へ入る
シア「、、、おかえりなさ」
シアが言いきる前に、ティアがシアに向けて飛び込んだ
倒れそうになるのをなんとか堪えつつ、シアが呆気に取られた様な顔をする
ティア「ねぇねぇシア!寂しくなかった?寂しくなかった?」
シア「、、、別に」
シアのその返答を聞き、ティアがえ〜と言いながらフィアにゆっくりと抱きつく
ティア「シア寂しくなかったって〜酷いよね〜」
よしよしとティアの頭を撫で、シアの方へと歩み寄る
「自分は寂しかったなぁ、シアに会えなくて」
よ〜しよしよし、と、フィアはシアの綺麗な水色の髪を慣れた手つきで撫でる
シア「、、、そうですか」
あいもかわらずクールに応対するシアだが、、、目を閉じて気持ち良さそうに撫でられていることに、自分で気づいていないのだろうか
「ふふっ、、、シアは可愛いな」
目を閉じて大人しく撫でられるシアに向けてフィアがそう言うと、表情を崩さないまま、頬を僅かに赤らめつつ、台所へと逃げて行った
ティア「ねぇフィアお姉ちゃん!お土産食べよ!」
手持ち無沙汰になった手を、ティアの頭に乗せつつも、お土産を取り出した
6月29日
珍しく晴れになり、五人は、ここぞとばかりに狩りに出掛けた
名もない森を歩いて行き、ただひたすらに敵を殲滅していく
いい加減慣れた物だが、フィアは油断しない
、、、しかし、油断せずとも、、、避けれない物は避けれない
順調に狩りをし、そろそろ暗くなって来たから帰ろう、と五人がいつも通り帰宅しようとした所で、とうとつにティアが目を輝かせる
ティア「あ!見て見て!凄い光ってる星があるよ!」
ティアが指差した所を四人が見ると、確かに光の量がおかしい、、、というか、移動している?星があった
フィアは、流れ星が自分に迫って来ている様な、奇妙な感覚に落ちながらも告げる
「、、、流れ星が、、、迫って来てる?」
よく見ると、徐々に光が強くなっている様な、星が大きくなっているような気がする
、、、次第に全員が理解する
星が、明らかに迫って来ていた
ライ「、、、マジで?」
光は高速で迫って来ている
、、、これは避けれないな、隕石だとして、ここら辺一体が吹き飛ぶのではなかろうか
そう悟り、諦めたかのように装い、フィアが会話を続ける
「遺言書いてないね」
、、、何故だろうか、時間の流れをやけに緩やかに感じる
ライ「、、、ああ、、、まぁ、お前らと馬鹿なことやれて、、、楽しかったよ」
、、、この男、ノリノリである
ライが微妙に含んだ笑みを浮かべながら、そう本心を告げた
海「、、、悪くない人生だった」
海も、どこか悟った、2人に習う様な様子で短くそう告げた
ティア「えっ?えっ?し、死んじゃうの!?」
イマイチ状況を掴めていないティアひとりのみが戸惑っている
クロ「、、、主、、、大好き」
クロが勝手にカードから出て、後ろからフィアに抱きつく
「うん、ありがとね、クロ」
ティア「ほ、、、本当に、、、し、死んじゃうの?」
自分以外の全員の雰囲気から、ようやく死ぬことを実感したのか、ティアが涙目になってくる
「、、、ティアも、何か死ぬ前に言っておくことがあるなら、言いな」
そうフィアが言うと、ティアは益々涙を流し
ティア「フィアお姉ち”ゃんのごと、、、好き、、、かっこ良くて、綺麗で、、、好き!」
ティアの一言が発せられた直後、辺りを優しい光が包み込んだ
余りの眩しさに目を開けられなくなり誰しもが目を閉じる
目を閉じて数秒、、、光が収まった様に感じ、フィアは目を開けた
フィアが目を開けると、綺麗な青い、星のデザインが印象的な浴衣に、青とも黒とも言える様な、吸い込まれそうな髪を、綺麗に結んだ少女が、フィアに抱きついていた
「、、、まぁ、隕石で死ぬ、なんてことはないと思ってたよ」
何かしらの大型イベントだろうなぁ、と予想はついていた
ライ「まぁ、、、そうだよなぁ」
イベントかなと思いつつ、多少、死ぬかもと思っていたライは頭を掻いた
海「、、、はぁ、一気に疲れた」
普通に死ぬかと思っていた為、海は大袈裟に溜息を吐いてみせた
クロ「、、、主、、、」
フィアに言われ、普通に信じたのだろうクロがジト目を繰り出す、、、さりげなく抱きついたままで
ティア「う、嘘だったの!?」
ティアは完全に信じ切っていたのだろう、驚き、それと同時に生きているということにホッと胸を撫で下ろした
それぞれが思い思いのリアクションを取りつつ、フィアはこの少女の素性を探っていた
、、、星、流れ星、、、和服、、、七月近いし、、、七夕か?
なんてことを考えつつ、取り敢えずその場を離れ、急いで宿に戻ることにした
、、、イベントを嗅ぎつけて他のプレイヤーが来るかもしれないし
宿に連れていき、取り敢えず緊急用に空いている部屋で寝かせた
シア「あの子は一体なんですか?」
かの少女を今後どうするか、という議論をするため、シアも交えて居間に全員が座る
「、、、さぁ?自分で語って貰わなきゃ解らないけど、、、七夕に関係した何か、だと思うんだよね」
シア「、、、えっと、七夕伝説の、ですか?、、、まさか、実在するんですか?」
この世界がゲームだから、そういった発想にフィア達は至れるが、この世界の住人からしたら、何言ってんだこいつ、となるのは当然だろう
ライ「ん〜、、、まぁ、兎に角そういう感じなんだよ」
これに関しては詳しく説明出来ないので、取り敢えず納得してもらうしかなかった
取り敢えず目覚めないと話が進められないので、今日は取り敢えず解散となった
その日の夜、ライが風呂に入っている間、ティア、シアと共に居間にてのんびりとしながらも、フィアは思い悩んでいた
、、、性別のこと、話すべきか?
先程ティアが告げた思いは、友人、仲間としての好きなのだろう、が、それでも、ティアが自分のことを好いてくれているのだろう
正直、別に話さなくてもいいのでないか、とも思ったが、、、隠し事をしたまま親密になるっていうのは、、、いやだ
「二人とも、、、ちょっといいかな?」
本を読んでいるシアと、何をするわけでもなくのんびりボケ〜っとしていたティアが、フィアの方を向く
シア「どうかしましたか?」
ティア「なになに〜?」
と、ティアがフィアの膝の上に座る
、、、この行動を、果たして性別を明かしてもしてくれるだろうか
、、、いまならまだ引き返せる
もしこれで、引かれて見ろ、お前、、、メンタルブレイクどころの話じゃないぞ
そもそも、調子乗り過ぎなんだよ
ティアに好きって言ってもらえて浮かれてるだけじゃないか?
お前が男だと知って、悲しむんじゃないか?知らない方が幸せなことだってあるんじゃないか?
、、、そんな考えがフィアの脳内に浮かぶ
だが、、、嫌われたらその時はその時だろう?
嫌われたら、、、この二人は自分とは相容れない運命だった、所詮、、、所詮って言い方はどうかと思うが、その程度の仲だったってだけだろ?何をそんなにビビっているんだ
自己の正当化
無意識に自分は正しい、と納得させてしまうのは人間として仕方のないことだ
、、、迷っていたってしょうがないだろ
「実は自分、男なんだ」
その言葉を聞き、、、二人が呆然と口を開け、ポカーンとした表情を浮かべる、、、あのシアもだ
ティア「えっ、えっと、、、フィア、、、お兄ちゃんだったってこと?」
ティアが混乱した表情を浮かべながらもなんとかそう尋ねる
「まぁ、そういうことだね」
シア「、、、そんなことが出来るんですか?」
イマイチ信じ切れてない、という表情のまま、そう尋ねる
「出来るよ、自分達の世界からこの世界に移動して来る時に、見た目を変えられるの、、、まぁ、性別の判断基準的には性別は変えられないんだけど」
フィアの後半の一言の意味が解ってないのか、二人は首を捻る
、、、さて、言ったはいいけど、どうしたものか
シアがいくつか質問していいですか?とのことなので頷いた
シア「、、、なんで、今言ったんですか?」
率直な疑問、特に何かがあったわけでもないのに急に話し出したことに疑問を抱いたのだろう
「、、、二人には話してもいいかな、と思ってさ、
人にいいふらしたりしないっていうのは解ってるし、、、嘘ついたまんま、仲良くなりたくないっていうか、、、」
言いたいことを察してくれたのか、ティアが膝の上で器用に回り、フィアの目を見つめる
ティア「、、、フィアお兄ちゃんは、やっぱり優しいね」
ティアが立ち上がりフィアを思いっきり抱き締める
ティア「えっとね、、、言ってくれてありがとう!」
ティアのその言葉に思わずフィアホッと息を吐き、先程までの緊張感がかなり軽減された
シア「、、、まぁ、気にしてません、、、話してくれた、ということは信用してくれた、ということですし、、、それともう一つ、、、、、
何で、女の子の格好になったんですか?」
シアの前半の言葉にホッとしつつ、後半の一言になんて答えるべきか、少し悩んだ
、、、が、もう正直に話そう、そう決心した
自分が、、、俺が、フィアになった理由を
2月16日 描写を軽くですが修正しました




