裁判
次の日
クロをシティエリアにて召喚した所、やはり上手くいった
因みにライは、別段脳に異常は無いとのこと
萱野「それでは、只今より、学園内魔物召喚事件の裁判を開始します」
体育館に来い、との指令だったため海に案内され、三人で移動すると
見事に椅子が並べられ、生徒百人程が両サイドの椅子に腰掛け、真ん中にポツンと椅子、裁判所を意識しているのだろう、裁判長役と思わしき校長、裁判官として四人の先生らしき人物がステージに座っていた
両サイド、弁護士用の場は誰もおらず、検事側には萱野がいた
萱野「では、被疑者フィア=レイは前へ」
体育館に着くなりそう言われ、フィアは一瞬止まったものの、真ん中の席に大人しく座る
成る程、、、クロをしまっておいてよかった
ライ「はぁ!?どういうことだよ!」
ライはイマイチ状況が掴めていないのか、混乱し、キョロキョロとしていた
海「、、、俺も聞いてない」
「、、、自分を疑ってるんだね」
、、、そりゃそうだ、部外者のせいにした方が、学校的には世間体を保てる
海「、、、先生たちは保護者に謝りに行ってる」
何人かの見学らしき保護者は、昨日このことを聞いたのだろう、生徒達とは離れた位置に座っていた
来なかったのは、、、メンタルが持たなかったか、この世界に居ないか
萱野「、、、随分あっさりと座るのね」
「座れって、君が言ったんでしょ?」
二人は弁護士側の席へと座った
ライ「、、、屑共が」
ライの言葉に激しく同感する二人だったが、問題視されると面倒なので黙っておく
裁判開始
萱野「まず、事件は昨日の六時間目の終わり頃、三時に起こりました」
と、萱野が事件の流れをスラスラと進めていく
、、、
萱野「かくして、モンスター共は全て倒しましたが、、、このフィア=レイは、魔物の召喚に使われたと思わしき本を所持していました」
その言葉を聞き、体育館内がザワザワと騒がしくなる
校長「皆さん静粛に!、、、レイさん、それは本当ですか?」
校長が一言言うと、多少は静かになった
「本当です。図書室で拾ったので、萱野さんに渡しました」
本当です、の言葉を聞き、再度ザワザワと煩くなる
、、、多少は学べよ、うるせぇんだよ
そんなことを思っていることを感じさせない様な、、、余りに冷徹な無表情に、萱野がよりイライラしだしているのに、フィアは気付かない
校長「ふむ、、、図書室で拾った時の状況を、説明していただけますか?」
「はい、学食で食事を済ませた後、退屈していたため、図書室へ行きました。其処で本を探していた所、一番角の本棚付近に、熱心に本を読んでいる少女がいました」
萱野「異議あり!授業中は図書室は閉まっているはずです!」
続けようとした所で、萱野がバンッ!!と机を叩き、立ち上がった
「、、、遮らないで下さい。普通はそうだと思いましたが、普通に開いてましたよ?、、、その日鍵を掛けた人は?」
萱野が図書委員に確認を取った所、鍵を掛ける当番だった生徒は、既に死んでいたとのこと
「続けますね、その少女に呼び掛けると、授業中だったことを思い出したのでしょう。やばいと一言言った後、走って図書室を出て行きました。
その時に読んでいた本が魔道書の類でして、、、慌てていたのか落としていたので、落し物として生徒会にでも渡そうと持って行きました」
校長「ふむ、、、その少女の特徴は?」
萱野はまたも机を叩こうとしていたが、校長に先を越された
マヌケに手が変な位置に移動しているのに気づき、ライがざまぁみろ、とゲスい笑みを萱野に向ける
「えっと、、、紫色の長い髪で、眼鏡を掛けていました、背は160ぐらいです」
校長「ふむ、、、萱野さん、その特徴の生徒はいますか?」
萱野は暫く考えた後
萱野「、、、はい、確か2組に一人いましたが、、、今日は来て居ないようです」
死んだ、と言っていないことから、生きてはいるのだろうか?
校長「、、、その生徒には後日聞くとして、レイさん、弁護士さん方、レイさんの無実を証明出来るものはありますか?」
ライの方をチラリと見ると、考えが幾つか浮かんでいるのか、俺に任せろ、という目線をライが送ってきた
、、、まぁ、ライが一番強いかもしれないし、本人の希望だから任せるか
自身の危機的状況だと言うのに、自分から特に何か言うわけでもなく、ライに全てを託すことにフィアは決めた
ライ「、、、まず、フィアが図書室へ入ることは不可能だ。鍵も無いし、そういった魔法を習得しているわけでもない、今日来たばかりの学校の鍵が掛かった部屋に侵入するのは不可能です」
萱野「異議あり!そもそも図書室へ入った、ということが嘘の可能性もあります!」
すかさず萱野が異議を申し立てる
、、、何かあったはず
つか、嘘だとして、だからなんなんだ、何故嘘をついた、という話なんだが、、、
この質問をした狙いは、、、
「、、、ワールドオブソードの7巻だけ、図書室にありました。他の巻は全て貸し出し中の筈です」
ピンチには意外と強いフィアは、ここぞというところで記憶力を開花させた
またも萱野がスラスラと確認を取ると、フィアの証言が証明されたのか、小さく溜息をついた
萱野「確かに、、、7巻だけ残っていますね、しかし、図書室へ入った事実があるだけであって、本を其処で拾ったことは」
ライ「異議あり、其処で拾った、という嘘を付く意味はない」
「もし嘘だとした時に、嘘がばれた時の疑いが強くなるだけだしね」
ライの言葉を掻っ攫うようにフィアが言葉を重ねる
萱野「、、、では、元からその本を持っていた、という可能性は?」
ライ「、、だとしたら本をてめぇに渡す意図が解らない、疑いを深めるだけだ、、、こいつは犯人の手掛かりになると思って本を渡したんだぞ!、、、自分が疑われることを差し置いても、犯人に繋がる手掛かりを渡すことを選んだんだ」
ライの演技がかった、悲劇の主人公の描写をするミュージカル俳優かの様な演技に、海は思わず吹き出してしまった
ライの言葉に、小さく舌打ちをして、萱野は黙った
ライ「、、、次に、魔法陣について、五ヶ所にも渡って魔法陣があったらしいな」
萱野「そうです!他の生徒にばれずに様々な場所へ仕掛けられるのは、授業中に自由に歩き回っていたフィアだけです」
ライ「確か、外の用具入れの中にも魔法陣はあったはずだ、五時間目と六時間目は、どっちも外で体育、、、してたか?」
海「確かにしていた筈だ」
ライが海に確認を取り、ニヤリと笑った
ライ「、、、流石にそんな授業中に魔法陣を書くなんて、人目がありすぎて不可能だ。だったら、元から書いてたとしたら、、、?この学校の生徒か、教師、ぐらいじゃないと出来ないよなぁ」
ライのその言葉に、教師陣からブーイングの嵐が巻き起こった
そんなわけないだろ!だとか色々ぬかしているのだが、、、こっちのセリフなんだよなぁ
なんで関わったことのない人を殺した疑いをかけられなきゃいけないのやら
校長「静粛に!、、、弁護人、そこまで言うということは、、、犯人の目星が着いているのかね」
校長がギロリとライを睨むが、
ライ「あ?知ったことかよ、兎に角、フィアが出来ないことは証明された筈だ、、、犯人捜しなんか、てめぇらで勝手にやってろよ屑共」
、、、俺が言いたいことは全部言ってくれたが、、、口が悪い
下手をすれば海の評判が悪くなるから穏便に行きたかったのだが、、、こいつにその発想はないのだろう
フィアは諦め、取り敢えずフォローを入れる
「、、、まぁ、口は悪いですが、ライが言っていることは自分達の意思であると考えていただいて結構です。、、、こんな三十分掛からない程度の議論で無罪を証明出来る様な人を、無闇に、騙して、こんな所に呼ぶのはどうかと思いますよ」
騙して、の部分を強調するように、ギロリと萱野を睨みつける
萱野「、、、貴方達、失礼じゃないですか?仮にも校長の前で」
その、あまりにも馬鹿げた言葉にライは吹き出し、海とフィアは飽きれた、やれやれ、といった表情を浮かべた
ライ「おまえさぁ、、、何言ってんだ?頭の中身入ってんのか?
そもそも、人に罪をなすりつけようとした、勝手に裁判の真似事を初めた、
そんな馬鹿みてぇなてめえらの土俵に乗った上で、俺たちは論破した、、、お前らが名誉毀損で訴えられることはあっても、俺達が罪になることはねぇんだわ、ちょっとは頭使えよばぁあああああああああか!!!!」
ゲラゲラと笑いながら、ライはフィアの元へ歩み寄り、ライに続き海も移動する
ライ「なぁオイ、誰がこれを計画したんだよ、お前らは、こいつに助けられたってのに、大量殺人犯にしたてあげようとしたんだぞ?なぁ、謝れよ、なぁ!なぁなぁなぁなぁ!」
ライが下衆い笑みを浮かべながら
そう叫ぶ、
友に疑いをかけられたことに怒っている、、、とはどう見ても見えない
明らかに弱者を痛めつける悪魔
、、、だが、正論なので誰も何も返せない
流石に不味いと思ったのか、海がライの肩を叩く
海「流石にやめといてやれ、、、じゃあ俺、この二人を送って来ますね」
結局、誰も謝らぬまま、海に引っ張られるように、三人は体育館を後にした
ライ「ったくよぉ、、、ロクでもねぇ高校だなオイ」
そう愚痴りながらも、楽しかったことが丸分かりな笑みを浮かべていた
海「まぁ、、、あそこまで下衆いとは思わなかったな」
、、、別に、とりあえず怪しい奴に話を聞く、というだけならまだしも、裁判的にするから、三人の反感を買ったのだろう
少なくともフィアは理解していた
裁判的にすることで、相手に緊張感を与えるようにしたこと
厳格そうな連中を裁判官、裁判長にし、生徒、保護者にも見せつけることで、更に緊張感を出させること
緊張感を出させることで、相手を誘導しやすくし、観客達に怪しい、という流れを作らせることで、被疑者に不安感や焦りを煽らせる
、、、意図してその状況へと導かれたのか、三人には解らないが、やられたという事実は変わらない
「しかし、、、あれだけライが暴れまわったけど、、、海、大丈夫?」
海はフィアの言いたいことを察したのか、微妙な笑顔を浮かべながら
海「ん?あ〜、、、まぁ、多分大丈夫だろ、、、正直久し振りにライの盛大ないいくるめが見れてスッキリしたわ」
ライ「だろだろ?、、、まぁ仮に今回のことでお前がボッチになりでもしたら、、、その時は今日みたいになんとかしてやるよ」
自分が負けることなどありえない、そう言いたげなライの笑顔を、2人もまた笑顔で眺めながら廊下をのんびりと歩いて行った
全体的にかなり下衆い回となりました。
三人の性格が少しずつ解ってきたのではないでしょうか
1月22
描写の方を少し細かくしました




