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血の海に沈む

くそ、なんで、なんでシティエリアにモンスターが、、、

六時間目の体育の授業が終わり、さて教室に戻ろう、とした所で、体育倉庫の中から怪しげな紫色の光が漏れていた


不審に思った体育の先生に、野次馬をしにいった馬鹿数人が、中から出て来た2mは軽く超えそうな巨大な狼男に、瞬きする間に大きな爪で切り裂かれ、大きな血溜まりが出来上がる

狼男の咆哮にビビり、座り込んでしまう数人の女子生徒

生徒達は自分の命を最優先に、全速力で逃げ出した

どけよ!いや!殺される!逃げなきゃ逃げなきゃ!と、パニックになっている生徒達、

それを率先して逃がそうとする先生は、もう死んだ



、、、どうしよ、この状況

先程までの一連の流れを振り返り

海は、自分がどの行動を取るべきなのか迷っていた

リアル時代の自分なら、全速力で逃げていたかもしれない

だが、数々の敵を倒して来た自信からか、、、知り合いが殺されたことに冷や汗をかきはしたが、なんとか落ち着き、魔法の詠唱を開始した

フィアが気づいてくれてたらいいんだけど、、、校舎の方にも敵がいるのかは解らんが、なるべく持ちこたえなけなきゃな

海が両手に炎を出現させると、海の敵対心に気づいたのか、教師たちを食べていた狼男が海の方を向き、再度咆哮をしながら突撃してきた

海「当たれ!」

正面から突撃してきた相手に対し、右手の炎を飛ばすが、、、やはりと言うべきか、高速で動く相手に簡単に避けられてしまう


炎を避けつつ海の背後に回り込んできた狼男の鋭い爪がギリギリまで迫った所で、左手の炎を地面に叩きつけ、火柱を勢い良く聳え立たせる

突然火が大きくなったことに驚いたのか、寸でのところで狼男は手を引き、大きく後ろに跳び距離を取る


、、、あんまり魔力を無駄遣いするわけにはいかないんだけどなぁ

シティエリアではポーションの類は使えないし、殺傷能力の高い武器はメニューから取り出せなくなっている

要するに、怪我をしたなら病院で、魔法なんつうチートを使うんだから、回数制限くらいさせろ、ってことだ

炎の魔法は割と消費MP量が多い

その分威力も高いのだが

動物型モンスターの様だし、火にはビビる特性があると踏んだのだが、功をそうしたようだった

火柱が止むのを見ると、狼男は再度海に向かう、と思いきや、、、生き残りだろう、先程から腰が抜けてしまったのか動けない女子生徒二人の方へと視線を向けた


んな、、、あいつ、先に雑魚いやつから始末する気か

範囲化、や火柱、水柱、などは出来るようになったが、纏う、とか、指定した、自身から離れた場所を燃やす、とかは未だに海には出来ない


完全に、どうあがいても間に合わなかった

海「くっそ!早く逃げろよ!!」

間に合わない、そう解っていても、海は駆け出せずにはいられなかった

女子生徒a「ひっ、、、あ、あ、、、」

僅かな時間の攻防で、二人が体制を立て直せたはずも無く、生徒aが生徒bを守るようにギュッと抱きしめ目をつぶる


狼男の爪が二人へ突き刺さるその瞬間、上から何かが、狼男と二人の間に落ちる

落下の勢いは凄まじかったようで、かなりの量の砂煙が立ち込める中、狼男の物であろう大きな影が、地面へと崩れ落ちたのだけはなんとか海にも認識出来た


数秒で砂煙がなくなり、海の眼前には、倒れた狼男、死を覚悟していたのだろう、お互いに抱きしめあっている女子生徒二人、その間には

いつもの姿で、立っている、フィアの姿があった


「大丈夫?二人とも」

狼男のことは完全にスルーし、目を瞑る二人の肩をそっと叩く

聞きなれない、落ち着いた声に違和感を感じたのか、二人が目を開け、フィアを視認した

「もうこいつは倒したから、大丈夫だよ」

フィアの言葉を聞き、突然の言葉に驚いたのだろう間抜けに口を開けつつ、倒れた狼男を確認すると、安心したのか、aはbに寄りかかる様に意識を失った

女子生徒b「、、、天使」

何を思いそう呟いたのか、一言だけそう残し、bも意識を失った


海「お前、どうやったんだ今の?」

海がメニューから水の入ったペットボトルを取り出しながらも、フィアにそう尋ねる

「屋上からちょっとずつ風魔法で落ちて行って、真上まで来たら普通に落ちて、針出して刺して着地の瞬間に風魔法を出して着地、、、以上」

スラスラと涼しい顔でフィアは簡単に解説した

「それより、多分残り4体いると思うんだけど、この学校に戦えるのは?」

校舎へと二人は駆け出しながら、お互いに状況を確認し合う為話し合う

海「あんまいないけど、生徒会の三人が結構強いから、まぁなんとかなる、、、なんで4体って知ってるんだ」

「図書室に魔道書があった、それの中にいた狼男と特徴が似てたから多分、、、とりあえずライを叩き起こして」

二人が校舎へと近づくたびに、激しい血の匂いが二人を襲う

、、、人間の血じゃなければいいけど

そう願いつつ、二人は校舎の入り口へ続く角を曲がると


駆け付けたそこには、5、6人分の死体と、あろうことか、五メートルはあったであろう、おとぎ話に出てくるような赤い鬼の死体が転がり、その鬼の首を、サッカーのように笑顔でリフティングしている、よく見ると小さな包丁を持っている赤色の髪に、二本の角が生えた、オーガの少女がいた

海「うっ、、、」

その、あまりにショックな光景からか、近くにあった水道へ海は走って行った

「凄いね、そんなに大きいのを倒すなんて」

フィアは海には目もくれず、素直な気持ちを話しながら少女へと歩み寄る

少女「、、、君は?」

声を掛けられ初めて気づいたのか、少女がリフティングしながらも器用にくるりとフィアへと向く

「自分はフィア、訳あってこの学校に来たんだけど、、、それ、楽しい?」

首の切り口から溢れる血で、少女の足元、脚部は真っ赤に染まっていた

少女「うん、すっごい楽しいよ、君も、、、やる?」

少女が首をフィアへと蹴り飛ばしてくるが、触れないようサッと横にずれる

「いや、遠慮しておくよ、リフティングは苦手なの」

少女はフィアの返答に、ふーん、と対して興味なさそうだったが、

少女「君、私のこと、、、怖くないの?」

ふと思い浮かんだのであろうその疑問を口にした

「ん?別に大丈夫だよ。それよりも、よく倒せたね」

フィアのその言葉を聞くと、少女は嬉しそうに笑みを浮かべ、首を壁に蹴り飛ばし、、、頭の中身が汚い音と共に破裂した

少女「へぇ、、、」


、、、この人、嘘、ついてない

そう、なんの根拠も無いが、確かな確信を得た少女は笑みを浮かべた

フィアが名前を尋ねると、少女はアキ、と名乗った

「そっか、、、アキ、他にも敵がいるみたいなんだけど、一緒に行かない?」

その言葉を聞くと、少女は嬉しそうにいいよ、とさながら遊園地に向かう子供の様な笑みを浮かべた


ようやく収まったのか、海が少女から距離を取りつつ戻ってきた

「海、魔力探知で何処らへんにいるか解らない?」

エルフの種族スキルに、魔力探知、というものがある

効果はまぁ、そのままなのだが

海「あ、ああ、、、えっと、、、二階に一体、、、これは死んでるな、あと、五階にも一体いるな、こっちはまだ生きてる」


ライを起こすために海は保健室、二人は五階へと向かった


アキ「はやく、はやく行かないと取られちゃう」

五階に着くと其処には、もはや見慣れてしまった血の池、それの水を啜っている巨大なカラスがいた

アキ「やった、、、殺せる」

獲物を見つけるや否や、一目散にアキはカラスに向かって駆け出し、ナイフを突き刺そうとするが、アキの接近に気づいたカラスが、死体をアキに向かって投げる

アキは小さく舌打ちし、飛んできた死体に対し、思いっきりアッパーカットをする

「援護しなきゃ」

針を素早く一本取り出し、アキに続くように駆け出す


アキが、飛ばされてくる死体を、避ける、若しくは吹き飛ばしつつ、敵へと順調に近づいて行く

、、、アキが飛ばしてくれるから楽だな

アキが完全に切りつけられる所まで近づいた瞬間、カラスはバッ!と羽を思いっきり広げる

隙が出来た!と喜び飛びかかろうとするアキの腹へと片腕を回し、隣の教室へとアキを抱え、フィアは飛び込む

アキ「フィア、、、邪魔しないで」

「廊下をよく見て」

二人が先程までいた廊下には、無数の黒い羽が刺さっていた

「死んだら殺せないでしょ?」

この子、十中八九殺戮衝動を抱えているだろう

、、、そういえばクロも、最初の頃は病んでたけど、最近は割と治まってるな

なんて、フィアが今の状況に関係のないことを考えていると、アキが教室から出て行った


フィアも慌てて後を追い、廊下へと出ると

巨大なカラスの顔面にアキが既にナイフを思いっきり突き刺していた


先程の首同様、中身が飛び出しグロテスクな光景が廊下に広がる

、、、

常人ならば吐いてしまうのが自然だと言えてしまう様な光景が広がったが、二人は動揺せず、それぞれやるべきことをこなす


刺しては抜き刺しては抜き、を楽しそうに繰り返すアキを余所目に、フィアはあるものを探していた

、、、急に表れることなんて、魔法陣でも無いと出来ないはず


萱野「貴方たちが倒したのね?」

魔法陣をフィアが探していると、萱野とレイラ、それに、例の膝枕してあげた子が姿を現する

「まぁ正確には、アキがやったんだけどね、、、自分はグラウンドにいた一体だけだよ」

レイラ「わお!フィアは強いのね!」

レイラがまたもフィアに飛びつく

少女「、、、私の枕」

萱野「はぁ?」

「ああ、そういえば君の名前を聞いてなかった、、、教えてくれる?」

レイラから離れ、少女の前に歩み寄る

ネア「ネア、、、フィア、座って」

ネア、と名乗った少女に言われるがままに、フィアが正座しようとするが

萱野「ストップ!負傷者の手当て、犯人探し、死体処理、やることは一杯あるわ!まだ寝ないで」

最早いつものことなのであろう、

ネアが膝枕をさせようとしていることに気づいた萱野が二人を止める

ネア「魔法使ったから眠い、、、」

萱野「魔法にそんな効果はない!ああ、それとアキ、、、着替えて来なさい、あんたの格好、見てるだけで気分が悪くなるわ」

針で血がかからないように殺したフィアとは対照的に、全身血塗れのアキに目を合わせないように萱野がそう言うが

アキは目もくれず、ただひたすらに包丁を突き刺していた

萱野「、、、はぁ」

「ちょっといい?」

溜息をついた萱野に対し、フィアは例の魔道書を差し出し、魔道書の内容と化け物の概要が酷似していること、図書室で拾ったこと、魔道書の内容、持っていた少女の特徴、などを説明した

萱野「成る程、、、重要な証言です、、、とりあえず、明日、また当校に来ていただけますか?今日はやることが多数あるので」

「いや、手伝うよ、人手は少しでも欲しいでしょ?、、、あと、敬語じゃなくていいよ」

フィアの提案が意外だったのか、萱野はしばらく考えた後

萱野「、、、ありがとうフィア、それじゃあ、、、とりあえず、アキの着替えを頼んでもいいかしら?」

、、、初っ端からそれか

、、、敢えてこの仕事を依頼した意味は、、、アキを扱えそうだと判断したから?

「解った、アキ、行こう」

、、、それとも、女性の着替えを手伝う、ということへの抵抗感を見たいのか

いい加減飽きたのだろう、包丁を突き刺すのを止め、手に付いた血を舐め取っていたアキにそう声を掛けた

アキ「ん、解った」

アキと共に近くの女子更衣室へと入っていった


イースウェイの宿屋

検査の為に一応入院させられたライをシティエリアに放置し、フィアは宿屋へと戻った

「ただいま〜」

フィアの声を聞き、バタバタと、居間から足音が立つ

靴を脱ぎ、クロとティアの元へ行こうとすると、居間からクロが姿を現し、フィアに向けて飛びかかって来た

クロ「主、、、遅い、心配、、、した」

一日も経ってないってのに、、、

そういえば、クロと会ってからいままで、クロと一日近く別れたことはなかったかもしれない

「ごめんね、クロ、、、ちゃんと大人しくしてた?」

小さい、うん、というクロの返事を聞き、フィアは優しく頭を撫でる

ティア「フィアお姉ちゃん、おかえりなさい!、、、あれ?ライさんは?」

ティアも、フィアが帰って来たことに気がついたのか、居間から出てきた

「あー、その辺も説明しなきゃ駄目か、、、取り敢えず、明日もシティエリアに行かなきゃいけなくなったから、明日もよろしくね、、、明後日からまた忙しくなるかもだから、休暇ってことで」

フィアのその言葉を聞き、クロの締め付けが僅かに強くなったような気がする

クロ「クロも、、、主と行きたい、主と一緒じゃなきゃやだ」

子供の様に駄々をこねるクロ、、、可愛いな、なんてフィアは考えつつ、どうしたものかと悩んでいた

「ん〜、、、仕方ない、一緒に来る?」

シティエリアにNPCは連れて行けない、と言うのはチュートリアルで聞いていたが、魔物が召喚された、ということは、向こうでクロをカードから出すことが出来る可能性は高い


ティア「え〜、フィアお姉ちゃん、私も行きたい〜」

「ごめん、今日向こうに魔物が現れたの、だから、魔物は連れてこれるんじゃないかと思ってさ、、、ティアは人間だから無理だろうけど、、、何かお土産買ってくるからさ、ね?」

お土産、という言葉を聞いて、シュンとしていたティアがパアッと花が開いたような笑顔を向ける

ティア「本当!?じゃあ、、、美味しいお菓子!シアの分もね!」

「はいはい、任せておいて」

すっかり上機嫌になったティアに和みつつ、居間へと入って行った




新作をちょいちょい書いてます


2月11日

描写を軽く修正しました

3月2日

描写を修正しました

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