お迎え
駅へたどり着くと、正装して待っている人がいた。
「ようこそおいでいただきました」
私に、その人が深々と頭を下げてくれる。
その胸の紋章から、すぐにどこから派遣されてきたかがわかった。
伯爵の執事が出迎えてくれたのだ。
「ここからは車となりますゆえ、お迎えをするようにと、主人から仰せつかっております」
「そうか。君は……?」
私は、帽子をかぶりつつ、すぐ横に来ていた赤帽へ荷物の運びだいを渡しつつ、彼に尋ねる。
「申し遅れました。わたくしは、リーバラッグ侯爵閣下の執事を務めております、ライス・プロックと申します。どうか、プロックとお呼びください」
「そうかプロック。では、さっそく行くとしよう」
「かしこまりました。それでは」
こちらへどうぞお越しください。とプロックが言うので、私はそれについていくことにした。
案内されたのは、駅の正門脇にある、100台ほどの普通乗用車が止められそうな駐車場だ。
その一角、大型トラック用のスペースに、リムジンが止まっている。
運転席にはプロックではなく、別の男がすでに座っていた。
「さて、こちらへ」
扉を開け、プロックは私を車内へと促した。
荷物は、そのすぐ後ろをついてきている、おそらくは、侯爵側の使用人が運んで来てくれていた。
いくつかの大きな荷物を、トランクに器用に積み上げて、崩れないように確認をすると、使用人は助手席へと乗り込んだ。
「それでは、出発いたします」
そのプロックの言葉を合図にして、車はなめらかに動きだした。