方法
2週間は、あっという間だ。
準備だけで過ぎていく。
前日に、私は館を出発する。
その際、執事に館と領地についての一切を任せることにした。
ラグストンシャー伯爵はどのようなことをするか分からないからだ。
「では、頼んだぞ」
「かしこまりました、旦那さま」
執事が私が車に乗り込むまでふかぶかとお辞儀をしていた。
さて、と私は考えてみる。
ラグストンシャー伯爵が、今までの血筋と別人だという証明を、どのようにすればいいのだろうか。
真っ先に思い浮かぶのは、先代の伯爵の遺髪とのDNA検査を行うというやり方だ。
仮に違っていた場合、爵位者を僭称していることになり、重罪だ。
一方で、それができるかどうかわからない。
すでに埋葬されている故人を、再び眠りから覚ますようなことは、できるだけ避けたいところだ。
それ以外の方法がないかと考えてみると、顔写真による判断という方法もある。
親子ならば当然似ているであろうという前提に立って、故人の顔つきと現在の顔つきを見比べるという方法だ。
ただし、これの欠点は、似たような人の場合、血縁関係ありと出る恐れがあるということだ。
全くの無関係であったとしてもだ。
「DNAが一番なんだがなぁ……」
私は、自然と独り言をつぶやいていた。
戸籍を調べるという方法では、それが本人かどうかを同定することは困難だ。
一応調べてみたものの、死んだとか、埋葬されたという報告は全くなかった。
手の者を使い、ラグストンシャー伯爵の身辺を調査してみたものの、きな臭い噂は一切出てこなかった。
こうなってくると、打つ手なしだ。
当たって砕けるのが一番の近道のようにも感じる。
「……もう、それしか手がないかぁ」
私はそう思いつつも、車に揺られ、後に電車に乗り込んで、ラグストンシャー伯爵のところへと向かった。