保管庫
「…なるほど」
紅茶を飲みほしたノーフォーク公は、ゆっくりとカップをソーサーに載せた。
「そういうことなので、紋章院の記録を見させていただけないでしょうか」
「いいでしょう、国王陛下の命令とあれば」
それに、とノーフォーク公はソーサーをサイドテーブルに置きながら、私に語る。
「個人総局の権力は、超国家的ですからな」
何はともあれ見せてくれるとなれば、話は早い。
私たちは、ゆっくりと保管庫へと向かうこととなった。
保管庫には、文化財級の書物もある。
古くは、14世紀の頃の書類が残っているからだ。
そのため、私はうかつに触らないように細心の注意を払うこととなった。
もはや古すぎて、近づくだけで崩れ落ち、塵と化すような代物が多いためだ。
「リーバラッグ侯爵とラグストンシャー伯爵について、でしたな」
「その通りです。ありましたか」
ノーフォーク公は、2つのファイルをもってきて、近くにあった机に優しく置く。
「ありましたぞ、まずはどちらから説明をしましょうかな」
「では、リーバラッグ侯爵から、よろしくお願いします」
「分かりました」
そして、片方のファイルをそばのサイドテーブルに置いて、最初に2つファイルを置いた大きな机の上には、ただ一つのファイルだけがあった。