紋章院
個人総局の権限はすごいの一言に尽きる。
私がバッチをかざすと、誰もが敬礼で出迎える。
「閣下、いかがいたしましたか」
衛兵の一人が私に聞いてきた。
「いや、国王陛下の命により、ここに来た」
ここは、旧ロンドンシティ。
いまや、隔離区域の一角になっている。
だが、その内部に入るか入らないかと言う境界線のぎりぎり外側に、今回私が探していた建物がある。
紋章院だ。
衛兵の先導で、扉の前までは簡単に来た。
「失礼する」
「どちらさま」
窓口には、一人だけ座っていた。
「ノーフォーク公に会いたい」
「アポイントは、取ってますか」
「もちろん」
「お名前をうかがっても」
「ルイス・フォン・アルバート・イルネス、ミッデジアン伯爵推定相続人、個人総局」
その名前を聞いて、個人総局と言う役職を聞いて、彼は立ち上がった。
「では、こちらへどうぞ、閣下」
さらに、私は彼によって応接室に案内された。
ノーフォーク公爵は、古から続く、名家の一つだ。
代々紋章院総裁を世襲しており、紋章院の全てを掌っている。
私は現ノーフォーク公爵を直接知らないが、その息子であるアランデル伯爵は、大学の寮の先輩であった。
そのため、息子の方とは面識がある。
「お待たせしました」
応接室に入ると、すぐに私は立ち上がる。
相手は公爵で私は伯爵の、しかもまだ法定相続人の立場だからだ。
「お待ち申しておりました」
「どうぞ、お座りください」
手で指示をされ、同じ席に座る。
「さて、どのような御用ですか」
「国王陛下からの命により、現在調査を行うことになっております。その一環として、どうしても調査しなければならない事案があるのです」
「ふむ、どのような内容の調査ですかな」
「機密ですが、それは、とある人物についての調査です」
私は、そこで初めて国王陛下からの命について説明をした。
当然、伏せるべきところは伏せたが。