手野グループ欧州総本部
目が覚めると、今度は見知らぬ部屋にいた。
「ここは……」
そこがどこか気づくよりも前に、誰かが入ってくる。
「おや、目が覚めましたか」
50代半ばほどの齢を重ねた男性が、私が寝ているベッドのサイドへとやってくる。
「個人総局、とお見受けします」
「いかにも、そうですが」
「ああ、申し遅れました。当方、日本国手野市所在の手野産業株式会社取締役の木村好之助と申します。以後、お見知りおきを」
「日本ですって」
「ええ、当地は日本ではございません。手野グループが有している欧州総本部の建物の内部です」
彼はキングスイングリッシュで流ちょうに話す。
もしかしたら、貴族、それも公爵ランクに位置するような上流貴族なのかもしれない。
「失礼ですが、爵位をお持ちなのでしょうか」
「ええ、私は伯爵位を持っております。貴方は確か伯爵の推定相続人でしたね」
「その通りです。ミッテジアン伯爵の推定相続人となっております。ただ、すでに当主は意識がなく、私が伯爵としてふるまうことを陛下からご承認をいただいております」
「おお、そうでしたか」
もったいぶった話し方をする。
そう私は思う。
だが、彼が入れてくれている紅茶は、なんとも言えない、明らかに一般のものとは違う香りがした。




